第9話 ”自分には会社を変える力がある”と気づかせる大切さ
「ソノダさん、私の部下のA君は、チームメンバーの仕事もフォローできるようになりました。もう少し専門能力を高める必要がありますが、将来は専門職としてではなく、A君のマネジメント職としての素質を伸ばしてあげようと思っています。」
ー社員100名ほどの顧問先で、導入予定の人事評価制度について論議していた時の、若手管理職の発言です。
初めての制度導入で、経営層も他の管理職も、右も左も分からない状況です。にもかかわらず、当該管理職は、人材育成の”ツボ”を正確に理解し、部下の育成方針について的確に受け答えしました。私は、正直、感心させられました。
なぜなら、新しい制度について理解できない点があれば独学し、日頃から部下の仕事ぶりを継続的に、かつ注意深く観察することで発言できるレベルだったからです。この管理職がいれば、制度導入・運用の推進力となり得ると確信できたからです。
そして、感心した理由がもう一つありました。
実は、当該管理職はこれまで、経営層から、”ブラック社員ではないか?”との疑いをかけられていました。日頃から臆することなく、経営層に対して、現場のマネジメントの改善策を具申していたために、経営層から疎まれて、”反抗的で、早晩、ノウハウだけ持逃げされる”との噂を流布されていたのです。
後の社内ヒアリングで、経営層が、自身のマネジメント力不足の責任を転嫁するために、当該管理職を、知らず知らずの内にスケープゴードにしていた実態が見えてきました。そんな逆境の中でも、当該管理職は、マネジメントの改善を切望し、諦めることなく、地道に努力し続けてきた姿が、私の胸を打ったのです。
余談ですが、万が一、当該管理職がノウハウだけ会得して退職したとしても、経営者の本懐ではないでしょうか。そういう優秀な人材を育成し輩出する仕組みを持つ、卓越した会社の経営者に成り得たということの証だと思うのです。強がりではありません。仕組みさえあれば、次の人材はその中で育つのです。
さて、本題に戻りましょう。
私は、この管理職と同じように、社員は本来、”会社を変えていく力”を内に秘めていると信じています。
そして、経営者の無関心な態度(意見を言う社員を疎ましいと感じる、アイディアを出しても、取り合わずフィードバックしない)や、侮辱的な態度(相手を貶めるためだけに完璧を求める、アラばかりを探す、スケーブゴードにする)によって、その力が封印され、発揮されることを許されず、最終的には、”会社を潰す力”に変容していく現場をいくつも見てきました。
”人の七難より我が十難と思え”という古の言葉があります。経営者は、社員の不甲斐なさを非難するばかりではなく、まず自身の社員に接する態度(マネジメントの方向性)を省みてください。社員や現場に対して、上述のような無関心で侮辱的な態度を取り続けていないでしょうか。
そして、経営者のマネジメントの方向性を、「自分には会社を変える力がある」と社員に気付かせる方向に、軌道修正してください。そうすれば、見る見るその力が発揮されて、社長の夢の実現のために、社員が自律的に課題解決をしていく組織風土を手に入れることができるでしょう。
社長の中にも「会社を変える力」があります。共に一歩を踏み出しましょう。
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