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社内からの信頼を築く経営者の姿勢

SPECIAL

トラスタライズ=信頼を対価に変えるコンサルタント

トラスタライズ総研株式会社

代表取締役 

企業の「信頼を対価に変える」専門コンサルタント。独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、「信頼」を切り口に、顧客企業が売上・利益を向上させられる手法の研究・提言を行っている。


失敗や課題を正直かつ率直に認め、共有する姿勢は、経営者が社内からの信頼を築くうえで重要な要素となります。


「未達成の目標について、どのように社員に伝えるべきか悩んでいるんです」

N社のN社長からこのような相談を受けたのは、3年前に筆者が策定をご支援した中期経営計画の振り返りの場でした。9年後のタイミングで達成したい経営目標をいくつか設定し、まずは3年目のタイミングで進捗状況を確認することになっていました。計画以上の成果を上げた項目もある一方で、一部の目標では未達成のものもありました。

N社長と議論を重ねた結果、未達成部分については理屈をつけて正当化するよりも、「未達成は未達成として正直に共有し、次の3年間で挽回したい」とのメッセージを伝える方針にしました。変に包み隠さない、誠実な姿勢こそが、社員や取引先からの信頼を築き、組織全体をより強固にするための重要な一歩であると考えたからです。


■誠実さ・透明性が生み出す信頼

経営者に対する信頼を日々育んでいく上で、誠実・真摯であると認められることは大切なことです。信頼を構成する上では、ただ単に高い能力を有しているだけではなく、他社に接するときの考え方や姿勢も問われるためです。

特に現代では、失敗や課題をまずは率直に共有し、次のステップを明確にすることが、社員や取引先からの支持を得るための鍵となります。今年に入ってもいくつかの企業で謝罪会見が行われていますが、何かを隠して煙に巻くような物言いは、多くの場合受け入れられず、さらなる悪評を呼んでしまいます。

そして経営者の信頼は、今後も重要な要素であり続けるでしょう。PwCが実施した「グローバル従業員意識/職場環境調査」の結果によると、日本の労働者は上司や会社に対して透明性や誠実さを求める傾向が強いことが示されています。

具体的には以下のような結果が報告されています:

  • 上司が「正直かつ誠実に行動する」という質問に対して「強く」または「中程度」に同意する回答者は、グローバル全体では約50%に達しているのに対し、日本では約30%にとどまる
  • 「上司が反対意見や議論を奨励する」と答えた人は日本ではわずか23%で、グローバル全体(33%)よりも10ポイントほど低い

これらの結果は、日本の労働者が、上司や経営層に対しより高い透明性や誠実さを求めている(少なくとも現状に対し不満を抱いていることが多い)ことを示しています。誠実さ・真摯さ・率直さ・透明性といった要素が、若い世代を巻き込み、組織を強化するための重要な要素であることがわかります。


■経営者が自身の信頼構築のために意識すべき3つのポイント

企業の経営において「全てが順風満帆でうまくいく」という状態が続けば、経営者に対する信頼は、特にその能力の高さを理由として高まっていきます。しかしそれだけでは長期的にはうまくいきません。苦境に陥ったときにも周囲の協力を得るための、経営者の姿勢・人間性に対する信頼も必要になるためです。

ここでは、物事がうまくいかなかった際にこそ経営者が留意すべき姿勢について、3つのポイントをご紹介します。

1.失敗を隠さず正直に共有する

失敗を共有する際、重要なのは「隠さない」という姿勢です。不正確な説明や責任回避の言動は、組織内外での信頼を著しく損ねる要因となります。むしろ、「私たちはこれを達成できなかった」と正直に伝え、その理由や背景を明確にすることで、共感と協力を得られる可能性が高まります。

2.前向きなメッセージで終える

単に未達成を伝えるだけでは不十分です。その後に「次にどうするのか」を明確に示すことで、組織全体が未来に向けたモチベーションを持つことができます。N社長が選んだ「次の3年間で挽回する」という前向きなメッセージは、社員に期待感を持たせ、積極的な行動を促す力がありました。もちろん、次の3年の計画のなかではその具体策が織り込まれています。

3.自分の役割を見直し、必要な支援を求める

いかに優秀な経営者といえども、1人で全ての課題を解決できるわけではありません。むしろ、組織全体で課題解決に向き合う姿勢を示し、自分が必要とする支援を明確に伝えることが、信頼構築を支える重要な要素です。例えば、従業員との対話の中で、「どのようにすればこの目標を達成できるか」を一緒に考える場を設けることが効果的です。

これにより、従業員側も必要とされていることを実感でき、さらに協力・貢献したいという人も出てくるでしょう。全員ではないとしても、経営への共感や協力を示す従業員の存在を知ることは、将来に向けた布石になります。


■誠実さが育む信頼と成長

誠実・率直であるということは、簡単なようで難しいものです。当たり前のことに見えても、いざという時に率直に課題を共有し、協力を呼びかけられる経営者は決して多くありません。しかし、この姿勢は経営者個人だけでなく、企業全体の信頼を高めるうえでも大切なものです。

もちろん、姿勢による信頼を育む上で、日々の言動が大切なのは言うまでもありません。冒頭でご紹介したN社長に対し、最終的に透明性を重視したメッセージを発することをご提言したのも、N社長が日々飾らない姿勢で従業員の方々と接しておられる、という前提があったためです。

これが日々、自分勝手かつ傍若無人な言動をとるような経営者だったとしたら、苦境に陥った際には人は離れていくでしょう。これからの経営者には、信頼を単なる結果として待つのではなく、日々積極的に築き、育む覚悟が求められます。

信頼の基盤である誠実さ・真摯さ・透明性といった要素を、日々の経営活動にどれだけ取り入れられるか。それが中小企業の持続的な成長を支える柱になるのです。

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