メンバの幸せを考えているか
プロジェクトマネージャ(PM)は、プロジェクトを遂行するとき、何をゴールにするべきでしょうか。もちろんプロジェクトの成功であるのですが、何を持って成功とするのかは組織や人によって違いますし、通常は明確に意識していないことかも知れません。
PMとしての経験が浅く、実績を積み上げてアピールする必要がある方は、プロジェクトを所定の品質で、約束の期限までに、計画したコスト内で終わらせることを成功と考えることでしょう。それは決して間違いではないのですが、プロジェクトは無事完了したもののなぜか顧客が満足していない、プロジェクトのメンバが消耗し切ったという様な状況に至ると、成功と云っていいのかという疑問が湧いてきます。
品質、納期とコストが計画通りに仕上がっても、メンバの中にメンタルに不調をきたした者が発生した、長時間勤務で疲弊し次の仕事を始められない、プロジェクト終盤のゴタゴタでメンバの関係にギクシャクが生じてしまった、というのではむしろ失敗に見えかねません。
それならば、納期を顧客の許容できる範囲で若干遅らせてしまったものの、またはコストを計画よりオーバーさせてしまったものの、メンバ全員が健康を害することなく充実感と達成感に溢れて終わることができたプロジェクトの方が成功と云えそうです。
やはり、PMあるいは組織の長としては、配下のメンバ一人一人が幸福感を持つ範囲でプロジェクトを完了させるのがその責任ではないかと考えるのです。当然生きる糧としてその仕事を選択しプロジェクトに参画しているわけですから、プロジェクトを客観的に見て成功と評価できる状態で完了することを通し、それが一人一人の評価、報酬、充実感、達成感に繋がって、結果的に幸福感に至ることになるわけですが。
そしてメンバの幸福感は、プロジェクトが完了した瞬間に得られるものではないので、PMはプロジェクトの過程において常に意識しなければならないことだと考えます。云い方を変えれば、PMや組織の長はメンバの人生のことも考える人間であって欲しいのです。
プロジェクトを進めていれば、問題が発生し、問題の解決のために一部のメンバに負担を強いるような事態もあるでしょう。一部のメンバの進捗が芳しくなく、一見怠けている様に感じたが実は私生活に問題や心配事を抱えているということもあるでしょう。メンバの能力の差によって成果も異なり、公正に評価しないと不平・不満も生じてしまうことでしょう。PMにはそれら全てを包摂して、一人一人が最大限の成果を獲得できる様、差配していく俯瞰性と胆力が求められます。
一方で、根性論を振りかざしメンバに過度な作業を強要して力づくでプロジェクトの実績を積み上げ、組織の階層を上がっていく人も存在します。そういった人の通った道には、怨念にも近い不平・不満の記憶だけが残され、殺伐としたダークな空気感が充満します。その様な組織を見ると、個人の幸せを追求し、他者の幸せのことは考えなかったのだなあと想像がつきます。どちらの道を選択するのかは、PMや組織の長の人生観によるところでしょう。
さて、皆さんはメンバの幸せを考えていますか?
最新の提言を、メールマガジン(無料)で配信しています。是非ご登録ください。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。