最低賃金+40円の衝撃を吸収するためのマインドポジション経営の考え方
先日来、メディアにちょくちょく現れる「最低賃金+40円」のお話し。2022年の全国の最低賃金は平均961円でしたが、この10月からは各都道府県で39~47円引き上げられ、全国平均は初の1000円超えと話題になっています。
背景には日本のサラリーマンの給料が欧米各国と比べて伸びていないという現実があります。働く方にしてみれば嬉しい限りの施策ですが、経営者の立場になってみると一概に喜んでばかりいられない状況です。といいますか、困ったなと思われている方も多いのではないでしょうか。
前回のコラムで「働く時間が短くなっている」という話を書きましたが、今回は「人件費を上げざるを得ない」というお話し。いずれも指し示しているのは、「付加価値の高い事業へのシフト」と、「社員の生産性の向上」が必須になっているということです。同じネタを使って、同じ時間働くにしても、より利益が残る道を選ぶ必要があります。
一つずつ見ていきましょう。まず「付加価値の高い事業」とはどういう事業なのでしょうか。
すぐに思い浮かぶのは、すごいハイテクを使って、誰にもまねされないような機能を実現する画期的製品。たとえばテスラの電気自動車のようなもの、思い浮かびませんか? でも、テスラの電気自動車、そうそう普通の人は買えません。だから市場はそんなに大きくない。しかも、私たちのような中小企業があんなすごい製品を開発するなんてちょっと考えられません。
そもそも「付加価値」とは何か?ですよね。今までになかった技術やサービスであれば「付加価値が高い」と言えるのか?これ、ちょっと違います。考えなければいけないのはお客さんの視点です。
お客さんにとって価値あるもので、御社しか持っていないもの、これが「付加価値」です。とすると、別にものすごい技術やテクニックじゃなくてもいいわけです。今ないものを外に求めなくてもいい。むしろやるべきは内側の深堀り。今あるものの価値をもう一度見直して、どういうお客さんなら高く買ってくれそうかを考えた方が得策です。
よく出てくる事例(ちょっと古いですが)に、ワークマンさんの作業着があります。ワークマンの空調服いいですよね。この夏は工事現場や庭木をいじる職人さんたちが愛用しているのをよく見かけました。そこはかとなくモーターの音がしてジャケットが空気で膨らんでいるのが見えるので、それとわかります。で、夏の暑いときに熱中症と紙一重の状況で作業をしなければいけない皆さんにとっては、ものすごい付加価値、いや福音です。でも、クーラーの効いた部屋で外の暑さとは関係なく仕事をしている人にとってみては、何の役にも立たない。むしろ寒い。
ワークマンさんはスポーツ用品のブランドも立ち上げていますが、スポーツ用品は趣味の領域なので、お客さんはある程度の価格を覚悟して買いに行きます。でも、ワークマンさんは安い。しかも作業着で鍛えた機能性を備えているわけですから品質も悪くない。だから売れます。お休みの日のワークマンのお店の駐車場はいっぱいで入れません。
こんな風に既にあるものを別の用途や別の市場に展開してみることで、同じものなのに付加価値を生むということがあり得るわけです。新しいものを外に求めなくてもいい。中にあるものを深堀すればいい。
で、こういう発想がどういう風に出てくるかを考えてみると、「みんなで考えている」という状況が目に浮かんできます。これが2つ目の「社員の生産性を上げる」という話し。
商品企画室の数少ないメンバーが部屋の中にこもってウンウン唸って考えているのではなく、お客さんをよく知る最前線の社員や、もしかしたら間接部門の社員も自分の生活に照らして「こんなのあったら買います」的に考えているのではと想像しています。これが、社員の生産性を上げるということの一端です。
経理を担当している社員が将来のヒットにつながる商品アイデアを考え出したらすごいと思いませんか。製造現場を担当している社員が、品質を落とさずにコストを落とす策を毎日考えているとしたら、すごいと思いませんか。
こういうこと、もうすでにやっている会社もあります。そういう仕掛けが周到に施されていて、一つの策が次の策を生み、どんどんブラッシュアップされています。
時短と賃金アップの波が押し寄せてくるなかで、お客さんの心をつかみ、社員の心に火をつける戦略はますます求められてきています。マインドポジション経営研究所はそこを担っていきます。株式会社アトリオンから独立し、9月から新会社でスタートします。よろしくお願いします!
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