父の代からの30年間儲かっていないN社の復活の話。いまは、ホームページから月に60件の受注があります。
「ホームページが出来ました。見ていただけますか。」
個人向けの住宅サービスを展開するN社長は、神妙な顔つきをしています。
私は、そのサイトを確認します。
N社長が、先に口を開きました。私から言われることを解っていたのです。
「作り直しを考えています。」
私もその言葉に賛同します。「はい、デザインが良すぎますね。」
『広告で成果を出せること』、これが年商10億円ビジネスの条件の一つです。
広告によりどんどん見込客を集めることができます。
そして、その範囲および金額を調整することで、展開の規模とスピードをコントロールすることができます。
広告で成果を出せるので、新しい営業所をつくることができます。その営業所は早くに軌道に乗せることができます。また、営業担当者を増員することもできます。その営業担当者にすぐに客付けすることができます。
まずは、『広告で成果を出せるようになること』これが、一つの目標であるわけです。
そのために、次が前提となります。
『その提案が、誰かに刺さること』となります。
その広告の売り込みの内容である「商品またはサービスの提案」を、想定する「ある課題を持った人」に見せれば、興味を示すという状態です。
刺さることが確認できているからこそ、広告を打つことができるのです。残るは、「目にとまるかどうか」だけが問題になります。多くの人の目に留まれば、ある率で手を挙げる人が出てきます。
まずは「刺さる商品をつくること」です。
そして、それを「ガンガン売る仕組み」をつくるのです。
この順番です。これが、年商10億円に進むための条件です。
当時のN社は、「刺さるサービス」を持っていませんでした。正確には、それに気づけてはいませんでした。
そのため、次のような状態にありました。
- 広告に確信を持てません。そして、一貫性がありません。チラシ、ポスティング、そして、ホームページと検索対策、その施策はちぐはぐです。
- 営業担当を採用しても、戦力化できません。雑多なお客様と多くの取扱商品、その組み合わせで「提案型」になっています。その結果、N社長が案件の多くを担うことになっていました。
- 広告費の費用対効果が悪く、営業担当者の人件費が重い状態です。会社を維持するために、社長自らが案件を追っかけているような状態です。
事業モデルの検討を進めると、N社の理想とする顧客像が見えてきました。また、主とするサービスが出来上がりました。
その構想書を手にして、N社長は言いました。
「こんな普通のことで、いいのでしょうか。特色があるようで、無いような。」
私は、お答えしました。
「これで、いいのです。以前ご説明した通り、御社のこの事業は、マイナス型です。」
事業には、プラス型とマイナス型があります。それをしっかり理解したうえで、自社の販売促進(広告、営業)を行っていく必要があります。
プラス型とは、顧客が「大儲けしたい」、「大きく変化したい」、「大喜びしたい」という『今よりも上げる』、プラスを求めるビジネスを指します。
マイナス型では、顧客が「しっかり確実」、「直したい」、「やらざるを得ない」という『今を保つ』、マイナス回避を求めて買うビジネスになります。
其々の例を見るとその違いが良く分かります。
プラス型 :短期集中型ジム、高級自動車、10億コンサル、多くの広告業
マイナス型:総合ジム施設、商業用自動車、税理士、多くの建設業
N社のこの事業は、完全に後者でした。お客様の欲求は、「確実性(今後の故障を回避したい)」、「安心(だまされたくない)」というものです。
実際に、N社を長く使っている顧客に確認すると、その通りの答えが返ってきました。そして、その顧客は比較的裕福な家庭であり、相見積もりや値引きを要求してくる方はほとんどいません。
N社長は、初めて『自社のお客様像』を掴んだのです。(当たり前のようですが、掴めていない社長は非常に多いのです。)
N社長は、改めて、自社のサービス(顧客、内容、価値)をホームページの原稿としてまとめました。ここまでできれば、ホームページの製作に移れます。ホームページから集客できることが、この事業の成功の要所と考えました。
製作業者からホームページの初稿が出来上がってきました。そして、矢田に意見を求めたのです。
N社長は、「このホームページは、違う」と感じていました。矢田の表情で、自分の考えが正しいことを確認したのです。
私は、答えました。「はい、デザインが良すぎますね。」
N社長も、「はい、カッコ良すぎですよね。」と賛同します。
N社長は、ホームページの製作業者に再度、「もっと、ダサく作ってください。」と依頼をしました。
N社のお客様は、「確実」と「安心」を求める個人、それも、50代60代の方です。その方々に選ばれるためには、「カッコよさ」は必要ないのです。
業者は、何度か修正をしてくれました。しかし、「一度固まったデザインから直す」には限界があります。また、その業者は、「デザイン力」を売りにしていたこともあり、「ダサく」が苦手なようでした。
N社長は、その業者に全額を支払い、すぐに別の業者に発注することを決めたのです。
「私の考え方がまだ固まっていなかったのです。反省です。」
(こういうところに、名経営者の片鱗が見えるのです。)
我々には、業者を使う力が必要になります。彼らは、広告製作のプロです。良いデザインや使いやすい機能を提案してくれます。
しかし、事業については、『素人』なのです。
顧客は誰か、メインの商品は何か、価格やその料金体系は。そして、導線は。
これらは、我々の『範疇』であり、我々の『責任』なのです。
事業モデルの設計があるからこそ、彼らもよい提案をしてくれます。そして、その事業モデルが「刺さっている」からこそ、その成果物は、結果を出せるのです。
事業モデルの設計が悪ければ、すなわち、「刺さっていなければ」彼らが見栄えの良いものを作ったとしても、成果は出ないことになります。そして、しっかり「企画書(ホームページの狙いやイメージを伝えたもの)」で伝えないと、ダメなのです。
事業モデルは刺さっていない、そして、企画書も出していない。そのくせ、ホームページ製作会社に、成果を期待する。そんな無茶苦茶な会社が多いのです。
その2か月後に、ホームページが出来上がりました。
それを拝見して、矢田は言いました。「みごとなダサさですね」
N社長、「はい、ありがとうございます。」
それから、ネット広告を開始しました。
年末という本来の繁忙期も重なり、12月と1月の受注は月60件を超えることになりました。その結果、社内は、てんやわんやの状態になったのです。
N社長、満開の笑顔で言われました。
「うれしいです。当社のサービスがお客様から選ばれること、そして、当社が地域から必要とされる状態が、本当にうれしいです。」
父が創業してから、今日までの30年間、ずーっと商売は低空飛行を続けていました。会社は火の車、N家はずーっと貧乏でした。
それは、イコール、お客様から「ひどい扱いを受けている」状態を意味します。また、地域からは「無くても良い会社」となっていたのです。
この結果は、N社長の本質を追求する姿勢から得られたものです。みごとにN社、そして、N家を復活させたのです。そして、当然、この状況に社内は活気づきます。社員は、口では「忙しい」と文句を言いながらも、業務改善をどんどん進めるようになりました。
翌月のコンサルティングで、N社長は、矢田に訊きました。
「広告の範囲を広げようと考えています。いかがでしょうか。」
今の商圏に15万世帯があります。隣街に広げれば、プラス10万で、25万世帯が対象となります。単純に計算すれば、月60件が90件に増えることになります。「内部の仕組化も急ぎます。」と付け加えるN社長です。
見事に、会社も御自身も変貌を遂げたN社長です。天晴。
ひとつ、強い事業モデルに作り変える。
ふたつ、ガンガン広告費を使い、どんどん案件を取っていく。
みっつ、追われるように仕組みをつくる。
このステップで、すべての会社は変貌を遂げるのです。必ず上手くいきます。必ずです。
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