VOL7. 経営理念と10年顧客戦略
10年顧客が増える企業は「経営理念の実現度・浸透度がアップしていく」、
たどり着けない企業は「経営理念が実現度・浸透度が一定レベルで留まる」
前回のVOL6では「10年顧客戦略」が、経営戦略のどの部分に位置づけられるのかお伝えしましたが、VOL7では、10年顧客化が経営戦略の上位概念である「経営理念」とどんな関わりがあるのか、お話したいと思います。
経営理念は、企業・事業を先頭に立って導いていく経営者・事業責任者にとって、最も大事なことでしょう。その企業(事業)が何のためにあるのか、社会・地域にどんな貢献をするのか、明らかにしたものだからです。企業・事業の存在価値・理由が書いてあるからです。
経営理念は大きく2つのことが大事です。「経営理念を創ること」と「経営理念を実現・浸透させる」ことです。 経営理念を創ることは大変なのですが(机の上で作れる)ので、経営理念を実現・浸透させることに比べるとそれ程大変ではありません。実践する方がはるかに大変です。
よくあるのが経営理念を朝礼・ミーティング等で唱和して全社員、覚えてはいるけれど、実際の企業活動で殆ど意識することがないという現実です。
実際にそういうお悩みを持った企業のお仕事をしたことがあります。「お客様の気持ちになって…」という部分が経営理念にあるのですが、現場ではそれ程意識されていなかったのです。それを浸透させるために、コンサルティングに入り、1年かかりましたが、それを一定レベルで実現できました。 その時に感じたのが「10年顧客戦略」は、「売上・顧客数のアップの手段になる」のはもちろん、「経営理念の現場での実現度・浸透度をアップする手段にもなる」という確信でした。
■経営理念の構成要素
経営理念には、どんな内容が書かれているのでしょうか? 経営理念は、大きく3つの内容が中心になっています。まず1つ目は「お客様に向けた理念」、2つ目は「従業員に向けた理念」、3つ目は「地域・社会に向けた理念」です。 この3つは大きく角度が違うので、そのそれぞれについて、10年顧客化との関わりについて、お伝えしたいと思います。
※留意事項
企業の中には、経営理念という表現を使わないこともあります。「ミッション」と言ったり、「企業の目的」「企業理念」「社是」「社訓」「経営フィロソフィー」いう表現もあります。経営理念とは別に「行動規範」がある企業もあります。今回のコラムでは、本質をシンプルに捉えていくために、それらを大くくりで「経営理念」と表現します。
■1つ目「お客様に向けた理念」と「10年顧客戦略」の関わり
具体的に「お客様に向けた理念」とは、どんなイメージかというと…、 ・ディズニーランドを運営しているオリエンタルランドの経営理念には「すばらしい夢と感動、ひととしての喜び、そしてやすらぎを提供します。」というお客様向けの部分があります。 ・ゴルフ場運営で日本最大級のアコーディア・ゴルフの経営理念には「お客様の視点に立ち、すべてのプレイヤーにご満足いただけるサービスを追求します。」 というお客様向けの部分があります。
そんな「お客様に向けた理念」と「10年顧客戦略」は、どんな関わりがあるのでしょうか?
お店の現場の日々の活動は、「お客様に向けた理念」が実現する場面を今よりも増やすために行われますが、特に10年顧客戦略は「一人の同じお客様に、お客様に向けた理念が実現する場面を長期間に渡ってお届けする」ことを意識します。それによって10年間ずっと通い続けてもらうことができるからです。10年顧客戦略を進めることは「お客様に向けた理念」の実現をお客様一人ひとりに対して、今よりも長くお届けすることに繋がります。
10年顧客戦略は「お客様に向けた理念」の実現度・浸透度をアップさせる手段になるのです。
■2つ目「従業員に向けた理念」と「10年顧客戦略」の関わり
具体的に「従業員に向けた理念」とは、どんなイメージかというと…、 ・キングジムの経営理念の一部には「社員の個性を尊重した能力開発とともに、自由闊達な提案や意見具申ができるなど、能力を生かせる職場環境を保たなければならない。」という従業員向けの部分があります。 ・高級ホテル・旅館専用予約サイトを運営する㈱一休の経営理念には「社員が安心して、伸び伸びと仕事にチャレンジ出来る空間を提供します。社員が仕事を通し、会社とともに成長出来るような環境の整備に努めます。」 という従業員向けの部分があります。
「従業員に向けた理念」には、「従業員の能力開発」「従業員が成長できる環境づくり」について、書かれていることが多いです。 10年顧客化を進めることは、従業員にとって新しい取り組みになるでしょう。同じお客様に10年間通ってもらうには、本当の意味でのお客様視点が必要になりますし、今までの活動にたくさんの一工夫を加える必要があるからです。 10年顧客化は、自然と「従業員の能力開発」「従業員が成長できる環境づくり」をお届けすることができます。
10年顧客戦略は「従業員に向けた理念」の実現度・浸透度をアップする手段になります。
■3つ目「地域・社会に向けた理念」と「10年顧客戦略」の関わり
具体的に「地域・社会に向けた理念」とは、どんなイメージかというと…、 ・会員制リゾートホテルで日本NO.1のリゾートトラストの経営理念には「企業行動が、地球環境に様々な影響を与えていることを認識し、環境との調和を図り、社会との共生に努めながら、社会や地球環境に貢献します。」という地域・社会向けの部分があります。
・ハウスクリーニング、ミスタードーナツを運営するダスキンの経営理念には「世の中の人に喜ばれる喜びのタネまきを実践し、地域の人々と喜びを分かち合い、物も心も豊かな暮らしに貢献する」という地域・社会向けの部分があります。
同じお客様に10年間ずっと通ってもらうためには、そのお客様にとってお店が「仕事場でも家庭でもない第3の場所」(スターバックスコーヒーが掲げていますね)になっている必要があるでしょう。そうでなければ、中々10年間通ってくれないからです。
そんなお客様にとって、このお店が存在することが、人生を豊かに過ごす重要なピースになっているでしょう。定期的にお店に通うことが、より仕事がはかどり、より笑顔で家庭サービスを届けることに繋がっているかも知れません。 そんな人生を豊かに生きている人(=お客様=10年顧客)が増えることは、社会にとって、地域にとって、素晴らしいことではないでしょうか? 地味でありますが、お店が社会・地域に貢献していると言っても過言ではないでしょう。
10年顧客戦略は、結果として「地域・社会に向けた理念」の実現度・浸透度をアップさせます。
■「経営理念」と「10年顧客戦略」の相性
顧客・販売戦略である「10年顧客戦略」は、一見、経営理念とは関係がないように思いますが、今よりも「経営理念」の実現度・浸透度をアップする手段になります。実は「10年顧客戦略」と「経営理念」は、理想を追い求めるという意味で親和性があります。相性が良いのです。
「経営理念」の実現度・浸透度をアップしたいが、理想的すぎて企業活動の現場と距離がある…と感じている経営者の皆さん、「経営理念」と「現場」を繋ぐ接着剤として、「10年顧客戦略」は使えます。
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