VOL6. 経営戦略と10年顧客戦略
10年顧客が増える企業は「顧客・販売戦略として10年顧客戦略を進めている」
たどり着けない企業は「顧客・販売戦略=販促になっている」
VOL1~VOL5までは「10年顧客戦略=半年・1年・3年・5年・10年にわたってお客様にずっと通い続けてもらい、お客様の数を安定的に増やす仕組み・基盤」の内容をお話してきましたが、今回のVOL6では「10年顧客戦略」が経営戦略のどの部分に位置づけられるのか、他の戦略との違いについてお伝えします。
「10年顧客戦略」はとても重要ですが、「10年顧客戦略=経営」「10年顧客戦略=企業理念」でもなければ、「10年顧客戦略=経営戦略」でもありません。「10年顧客戦略」は経営・企業理念の下位概念であり、経営戦略の中の1つとして位置づけられるものです。
そもそも店舗ビジネスの経営戦略は、どんな戦略から構成されているのでしょうか? 以下、5つの戦略を中心に展開されています。
■店舗ビジネスの5つの経営戦略
- 店舗戦略 … 将来的にどんな店舗展開、店舗リニューアルをしていくのか。
- 商品・品揃え(MD)戦略 … どんな商品・サービスを品揃えるのか。
- 顧客・販売戦略 … 顧客接点でどんな活動をして、お客様の数を増やして、売上を獲得していくか。
- 人事・組織戦略 … 教育体系、モチベーション施策、人材採用、組織体制をどのように構築していくか。
- 財務戦略 … 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー表を将来的にどうしていくか。
■市場拡大時代に大事な「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」
市場が拡大していく時代では、5つの経営戦略の内、「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」が特に重要です。店舗出店のスピードが早ければ早いほどに、市場シェアを獲得することができ、商品そのものに関心が高い時代では品質の良い新商品を品揃えれば売れるからです。
■これからの市場縮小時代に大事な「3.顧客・販売戦略」
市場が拡大していく時代が過ぎ去って、これから市場縮小時代が見えてきた今、同じお客様にずっと通い続けてもらうことが大事な時代を前提に、「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」「4.人事・組織戦略」を見てみると…
- 「1.店舗戦略」を進めて、新店オープン、店舗リニューアルをしていくと、新しいお客様は増えますが、同じお客様がずっと通い続けてくれる土台が甘ければ、数回来てくれるだけで終わってしまう。各社が店舗戦略を進めて店舗が飽和状態なので(ネットショップも拡大)、近くに同業店があることが多いので、浮気される可能性が高まっている。
- 「2.商品・品揃え戦略」を進めて、新商品・新カテゴリ−商品を導入してお客様を獲得できても、競合他店でも同等の商品をすぐに取り扱う可能性もあり(商品開発のスピードアップ)、商品・品揃えを同じお客様にずっと通い続けてもらう中心戦略に添えることは荷が重い。
- 「4.人事・組織戦略」は、クレームが出ない基本的な教育、顧客接点での活用が難しい知識習得メインの教育、売上に対するインセンティブ等の一過性のモチベーションアップ策が中心になっていることが多く、同じお客様にずっと続けてもらうこととは少し距離がある。
同じお客様にずっと通い続けてもらうことが大事な市場縮小時代では「3.顧客・販売戦略」を経営戦略の中心に添えて、ビジネスを進めていくことが大事になっています。5つの戦略の中でその重要性が高まっています。
■「3.顧客・販売戦略」に対する、経営者の認識違い
「3.顧客・販売戦略」は、「マスマーケティング、データベースマーティング、ダイレクトレスポンスマーケティング、CRM、10年顧客化等の戦略」がその本質で、その戦略を進めるために「販促プロモーション、販促DM、販促ツール等の戦術」があるのですが、経営者(事業責任者)の皆さんの中には、「3.顧客・販売戦略」を「販促プロモーション、販促DM、ポイントカード、販促ツール等の戦術」とイコールで考えていることがあります。
そうなると「3.顧客・販売戦略」戦略が存在しない状況に陥ります。さらに「戦術」なので経営者である自分の仕事ではないと考えます。確かに「販促プロモーション、販促DM、販促ツール等の戦術」は、部下に任せてもいい部分です。 ただ「3.顧客・販売戦略」は、経営者の皆さんが自ら考えるべきテーマです。
■「3.顧客・販売戦略」が大事だと分かっていても熱心にやらない経営者も…。
実は、経営者の中には「3.顧客・販売戦略」が大事だと分かっていても他の戦略と比べて、あまり熱心にやりたがらない経営者もいます。 なぜなのか?その理由を考えて見ると、1つの理由が浮かんできます。
他の戦略と比べて、経営者の思い通りにならないからです。 例えば「1.店舗戦略」「2.商品・品揃え戦略」「4.人事・組織戦略」は、経営者の思い通りになる社内(&外部の協力会社)で取り組みをはじめることができ、進めることができます。 一方、「3.顧客・販売戦略」は、「社内にいない、一つも命令できない外部者である顧客」が相手なので、経営者の思い通りにならないことが多いのです。
「3.顧客・販売戦略」を熱心にやらない経営者の元では、「3.顧客・販売戦略」は、社内でいつのまにか「販促プロモーション、販促DM、ポイントカード、販促ツール等の戦術」にすり替わります。戦略が存在しない状況に陥ります。大手企業でさえも、この状況になっている企業は実に多いです。 市場縮小時代では「3.顧客・販売戦略」が最重要課題です。より意識する必要があります。
■「3.顧客・販売戦略」の王道は?
そんな市場縮小時代の「3.顧客・販売戦略」の王道になるのが、「10年顧客化」です。なぜそう考えているのかとあらためて、お話します。
「3.顧客・販売戦略」の一番の理想的な姿はどんな姿なのでしょうか?
それは「継続的な顧客数アップと売上・利益のアップ」でしょう。
そのためには「はじめてのお客様が半年・1年・3年・5年・10年にわたってお客様にずっと通い続けてもらい、お客様の数を安定的に増やす仕組み・基盤=10年顧客化」が不可欠だからです。
これからの日本市場は、どんな時代になろうと、お客様にずっと通い続けてもらうことが大事なことは変わらない事実ですし、新しいマーケティング・ツール・手法が開発されようと、はじめてのお客様が半年・1年・3年・5年・10年にわたってお客様にずっと通い続けてもらう道具であることに変わりはないでしょう。結局は「10年顧客戦略」の傘の中に入るでしょう。 時代を超えて動かない価値、それは王道でしょう。
これからの店舗ビジネスの最重要戦略である「顧客・販売戦略」における王道、それが「10年顧客戦略」です。「企業を新しい成長に連れていく経営者」と、「10年顧客戦略」は切っても切れない関係です。
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