コスパ思考からの脱出が企業の運命を決める―意図的に高付加価値を目指す時代―
今の世の中、「コスパ」という言葉がよく使われます。
いうまでもなく、コストパフォーマンスのことで、価格の割に付加価値が高い、と判断された場合によく使われる言葉です。
価格の割には丁寧な作りの商品とか、飲食では値段の割においしかったとか、量が多かったとかいった場合によく使われています。「あそこの店はコスパがいい。」と評判が立てば、売上アップにもつながりますし、商売も繁盛することでしょう。
日本では長い間、この「コスパ」即ち「安くていいものを・・」を追及してきました。
その努力は実って、「メイドインジャパンは、品質の割に値段が安い。」との評価を受けることになりました。
その結果、一時日本の工業製品は世界の市場を席巻することになるのです。
また流通においてもスーパー大手のダイエーが、流通業界の雄としてそれまでのデパートなどをしのぐ勢いになってきたころ、創業者の中内功は「よい品を どんどん 安く より豊かな 社會を」をスローガンに価格破壊を試み、現実に流通業界トップに上り詰めたのです。
つまり、ある時期から日本は「安く」もの或いはサービスを提供することで、経済の発展を図ってきたことになります。
そしてそれは、かなりの成功を収めたといえましょう。
ところが、そういった経済の発展に寄与してきた前向きの低価格路線とは別に、バブル崩壊後、デフレ圧力によって日本の物価は上がらなくなりました。
バブル崩壊後は、背に腹代えられない事情によって、価格を上げることがほとんどタブーとされたのです。「コスパ」という言葉が、頻繁に使われるようになったのはこの頃からだったのではないでしょうか。
しかし、今ではこの「コスパ」がありがたがられる風潮が長く続いたことによって、今では日本経済の進展を大きく引き下げています。
日本の商品やサービスが然るべき価格を市場に訴求できないことが、経済全体の下降圧力となっているのです。
しかも、その期間があまりに長かったために、もはや日本の経営者は「安く」しないことを極端に恐れるようになっています。よそよりちょっとでも高いと支持されないのではないか、ちょっとでも安い方が買ってくれるのではないか、といった思い込みの呪縛は、日本の経営者の意識をグルグルと強く縛り上げているのです。
とはいえ今後、そういった考え方、方向性では経済が立ちいかないことは明らかです。しばらく前に始まった人口減少社会において、「量」を追及することは難しくなってきました。
現在の日本において「量」の経済を追及することはそもそも理にかなっていないことになってきたのです。
この点については、今回の新型コロナウイルス禍によってよりはっきりとしました。
これからは「質」を追求し、ものやサービス単価を上げていくことを実現していかなければなりません。
そうやって「量」の担保がなくても、「質」と単価の高さによって経済全体の規模が落ちないような世界を目指すべきなのです。
また消費者目線からいっても、アフターコロナにおいて、人々はより「質」を求めるようになっているのではないでしょうか。
個人的な話でいえば、私は、年齢もある程度いっており、生活スタイルもシンプルになってきているために、安いものを大量に所有したり、消費する必要はありません。それなりの品質のものが最低限身の回りにあれば済むことになります。その「それなりの品質のもの」は、普通の場合低価格では手に入りません。ただ、今の日本においては私のような選択をする人は増えているのではないでしょうか。それは年齢によるものだけではないと思います。
そういう意味では、例えば着るものでは、ファストファッション全盛時代の現代ではありますが、安いものを次々と買い替えさせる手法に批判が集まり始めています。
こういった手法によるビジネスもやがて、衰退していくのではないかと考えられます。
やはり「質」をきちんと追求し、長く愛され使われるものをという流れになっていくのではないでしょうか。
ただし、私たちのビジネスの世界においては「質」の問題を克服したならば、それでOKというわけではありません。
「質」において、もともとレベルの高い日本国内の競争の中では、さらに踏み込んだプレゼンテーション能力が必要とされるのです。
他に抜きんでた商品であればあるほど、的確なプレゼンテーションを行わなければ、市場に伝わらず、売れるものも売れないことになるためにもったいない話になります。
私はこのプレゼンテーションにおける、最も効率的な手法が「情報発信(アウトプット)」と考えます。
何故なら、それなりの「質」のものをそれなりの「価格」で販売するとすれば、それは前述のファストファッションの衣服のように大衆路線の商材ではなくなるからです。「質」と「価格」が一致していることを理解し受け入れてくれる相手に買ってもらう必要があります。
そういった相手に出会うためには、どうしても広く強めの「情報発信(アウトプット)」を行なうことによって、大きな分母を作る必要性があるからです。
今後、日本経済を大きく飛躍させるためには、デフレからの脱却がどうしても必要になってきます。
そのためには、健全なレベルのインフレ率を確保しなければなりません。
そこへ向かうための具体的な方法論が「安さ」からの脱却であり、「質」の確保であり、新たな「市場」の獲得なのです。
「市場」を獲得するための具体的な手法が、私のお勧めする「情報発信(アウトプット)」ということになります。
いずれにしてもこれまでの発想を変えて、新たな領域に踏み出す決断をしなければなりません。
デフレ脱却は日本の経営者の使命ではないでしょうか。勇気を持って一歩踏み出されることを希望します。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。