成長企業は、事業を入れ替える。そして、顧客を入れ替える。どんどん入れ替えて大きくなる。
「やっと経営というものが、掴めた気がします。」
お手伝いをさせていただいた身として、これほどうれしい言葉はありません。
販促支援業H社は、3つの事業を行っています。
一つ目の事業は、旧来からの販促物制作です。年商2億5千円。
二つ目の事業は、ある業界向けの販促支援サービスです。年商1億4千万円。立ち上げて1年半でここまで育っています。H社長は、この事業を早期に年商5億円までもっていく算段をつけています。
そして、三つ目の事業は、年商6千万円です。この事業は、今期が最後と決めています。
社長には、『事業の入れ替えの意思決定をする』という役割があります。
何の事業を伸ばし、何の事業をやめるのか。
その一方で、何の事業を起こすのか。
その社長の意思決定で、会社の未来が決定されます。
その速さには差はあるものの、どんな事業も、時代の変化と共に、衰退に向かうことになります。競合とのサービスでの戦いがあります。技術の進歩により、価格は下がります。他の国のサービスが、この地域まで入ってきます。
時代の変化を読み、意思決定をします。
「Aの事業は、まだまだいける。どんどん伸ばそう。」
「Bの事業は、販促費を押さえ、下がるのに任せよう。そして、時期を見て撤退。」
「我社のステージを上げるために、新たにCの事業を起こす。」
事業の入れ替えを進め、会社としての『成長発展のバランス』を取ります。
また、次のようなバランスの取り方もします。
「夏が繁忙期であるAの事業と、冬が繁忙期であるBの事業を行う。」
「単価の小さい案件は、子会社をつくり、すべて移管する。」
組織の構想を組み込みます。
当然、資源は限られています。多くのことをやれば、それだけ分散することになります。成長のスピードも遅くなります。
「会社をどのように成長発展させるのか」の全体構想を持って進めます。
事業を再構築し、資源を再配備します。
社長の正しき意思決定により、会社は存続することができます。また、発展することができるのです。
この意思決定が遅すぎたり間違ったりすれば、窮地に陥ることになります。
一つの事業が、毎月赤字を生むようになります。他の事業の利益を、食いつぶすことになります。その状態を長く続ければ、新しい事業を起こす力も無くなります。
実際に、その様な会社は、世に多くあります。
昔からの事業を続けています。売上げが下がるのに任せています。
それに対し、何か思い切った手を打つわけでもなく、新規事業を起こすわけでもありません。社長もそこで働く従業員も齢を重ねていきます。この瞬間も、廃業に向けた途中にあり、確実に近づいて行っています。
一つの事業の中でも、入れ替えを行います。それは、『顧客の入れ替え』です。
どんどん新規の顧客を獲得していきます。その事業が当たっているからこそ、それができます。そして、その一方で既存の顧客にも継続して取引をしてもらう努力をします。これが、成長している企業の姿です。
「一人の顧客から、どれだけの単価を頂戴するか」
それを、きちんと設計して事業を展開します。その単価の取り方や大きさは、事業モデルの特性によります。単価の取り方こそが、事業モデルだとも言えます。
ある事業は、一回ドカンとお金を取ります。ハウスメーカー、ライザップ。
また、ある事業は、コツコツと継続してお金を取ります。メンテナンス業、総合スポーツジム。
既存顧客へのフォローの力の入れ具合は、フォローの手間とリターンの関係次第となります。多くの場合、一回ドカン型のビジネスでは、フォローの費用対効果は非常に悪いものになります。
フォローを重視するかどうかは、その事業特性やその会社の戦略によります。
しかし、『新規顧客の開拓』は、すべての事業、すべての会社で必要になります。
その事業特性や戦略とは関係はありません。リピート率の高いビジネスでも、必要なのです。
会社を大きくしていくためには、絶対に必要になるのです。
新規開拓ができるからこそ、営業担当も店舗も増やすことができます。その結果、売上げを増やし続けることができるのです。
『新規顧客の開拓の力』こそが、成長企業の絶対の条件となります。
見込客に刺さる商品が有ること。そして、新規顧客を開拓できるマーケティングの流れを構築すること。これこそが、最初に取り組むこととなります。
この開発に、全力で取り組むことになります。
冒頭のH社長は、15年前に事業を起こしました。その時は、20代後半でした。創業当時は、顧客もなければ、実績もコネもありません。飛び込みや知り合いを訪ね、何とか仕事を得てきました。
そして、10年が経過した時には、年商2億3千万円、社員数10名ほどの会社になっていました。
H社長、当時を振り返り言います。
「10年過ぎた頃からです。既存顧客のフォローに重点を入れだしたのは。」
営業担当には、既存顧客の定期訪問を徹底しました。その当時のスローガンは、『顧客企業の販促部門になる!』でした。
その効果もあり、その後の2年ほどは、増加しました。H社長は、その方針が間違えではなかったと確信しました。更に、既存顧客を手厚くフォローすることに力を入れました。
そして、3年目が経ったころから、問題が出てきました。
・社長と一人の優秀な社員に、仕事が集中します。この二人だけが毎日遅くまで残業し、他の社員は定時で帰る状態です。
・採用した社員の戦力化に時間がかかります。採用してもすぐに「やらせられること」がありません。そして、一年ほどで退職をしていきます。
いつのまにか、サービスの種類は驚くほど多くなっていました。カタログやチラシの作成、動画撮影、ホームページ製作、SEO対策、全てがメニューです。
そのため、並みの社員では、到底太刀打ちできない状態になっていたのです。
その原因は、『既存顧客重視』に取り組んだことにあります。売上げを伸ばすため、維持するために、一人の既存顧客から沢山の売上げを得ようと頑張りました。その結果、要望される物はすべて受けることになっていたのです。それどころか、顧客を繋ぎとめるためにどんどん提案をします。顧客の雑務もやります。
その一方で『新規顧客の開拓』が完全に忘れられていたのです。一年間の新規の顧客は、ほんの数件になっていました。
H社長は気づきました。
「当社には、自信を持って売れる商品が何も無い。」
そして、
「当社には、新規顧客を開拓する仕組みが全くない。」
ここ数年の既存顧客重視の方針の裏で、新規開拓の力は完全に衰えていました。
正確に言えば、新規開拓する力などそもそも会社には、無かったのです。
創業当時から今日まで、「社長繋がり」で仕事を取ってきていたのです。それが、営業担当を増やしたこともあり、社長自身が動くことも減っていたのです。経営者の会合にも、足が遠のくようになっていました。たまに参加しても、昔のような「仕事に繋げる」という意識はありません。たちまち、H社は新規顧客が増えなくなりました。
「私の会社には、何もありません」。それに気づいた時、H社長は非常に大きなショックを受けたのです。
そして、すぐに変革に動いたのです。あれから2年半が経ちます。
創業当時からの販促物制作事業は、「現状維持」の方針を出しました。メニューを絞り、内部の仕組化を進めました。
その一方で、強い商品開発に取り組みました。四苦八苦を一年間続けた結果、ある業界向けの販促支援のサービスを完成することが出来ました。知ってもらえれば、ある確率で売れていきます。マーケティングの仕組みもでき、新規契約が取れます。一年後には、月商が1千万円を超えるようになりました。
その一方で、作業代行に近い事業は、撤退を決めました。細々と続けることはできます。しかし、この先伸びることは期待できません。
その事業の中心となっている社員とスタッフに、新規事業に移ることをお願いしました。神妙に話すH社長に向かって彼らは、返しました。「よかったです。このサービスは、お客様に喜んでもらっている実感がなく、楽しくなかったのです。」
彼らにそんな思いをさせていたことを反省するH社長でした。
企業が成長発展するための絶対条件が、『新規開拓ができるかどうか』にあります。
当たり前のことを言っているように、聞こえるかもしれません。
しかし、多くの年商数億企業が出来ていないのです。
見込客に刺さるような商品がありません。新規顧客を開拓するマーケティングの仕組みがありません。
そのくせ、その構築に必死に取り組んでいないように見受けられるのです。
企業の存続の要所も、ここにあります。『新規顧客の開拓』に真摯に取り組む会社は、会社を変え続けることになります。
『新規の顧客を開拓する』ためには、市場に敏感であり続ける必要があります。
広告を打てば、その結果を確認します。反応が悪くなれば、時代に何か変化が起きたのかを考えます。競合の動き、世のサービス、それらが気になります。
そこから、新たな知恵が生まれます。商品やマーケティングの仕組みを良くしようとし続けます。会社は、どんどん変わることになるのです。
新規顧客の開拓に取り組まない会社は、これらが自然に失われていくのです。
顧客の変化や、外の世界の変化に、気づけなくなります。その結果、変化することに逼迫感が無くなり、改善のスピードも遅くなるのです。必然の衰退です。
まとめです。
成長企業は、
知恵とコストを使って、新規の顧客を獲得します。その取組みの結果、顧客と事業を入れ替え、大きくなっていきます。
衰退企業は、
手を尽くして、既存の顧客を繋ぎとめようとします。その取組みの結果、すべての事業の強みを失います。
新規開拓できる商品、マーケティングの仕組みをつくりましょう。
それなしには、次のステージは無いのです。
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