「強みの見つけ方」
経営の神様と呼ばれるP・Fドラッカー氏は、「強み」を知る方法は一つしかないと、著書「プロフェッショナルの条件」に記されました。
強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。
何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちに書き留めておく。
9か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。
私自身、これを50年続けている。そのたびに驚かされている。
大御所の方に、異説を唱えるようで恐縮ですが、個人的には、このフィードバック分析で本当に強みが明らかになるか甚だ疑問です。
ドラッカー氏のように、外部環境と同じくらい自己を鋭く洞察できる心眼があればともかく、普通は不可能です。
その理由を3つほどあげてみましょう。
1.自己防衛本能が邪魔をする。
「強み」は、大抵の場合は欠点と同居しているものです。
従って、強みを見つけようとすると、必ず「弱さ」や「欠点」も視界に入ってきます。すると、自己防衛本能が作動し始め、思考回路は中断されてしまいます。
本来の「強み」に鋭くアプローチする前段階で…です。これは心理学的みれば、しごく当然の結果なのです。
2.仮説そのものを作る事が困難を極める。
フィードバック分析は「仮説」と「結果」の検証によって、導き出されます。
仮説を作るには、類似の成功モデルや、原理原則がどう成果とつながっているか…など「さまざまなケースの法則性」を知っている必要があります。
知っていても、その仮説が当たるかどうかは別な話です。
そのような極めて先行不透明な未来に対して、明確な仮説を作り、それを検証し、9ヶ月後、1年後に検証を試みるなんて、時間がいくらあっても足りません。
ドラッカー氏ほど鋭い「仮説」をバシッと立てられれば別でしょうが…
3.成功は当初の仮説以外のところからやってくることが多いためです。
「海苔の細切り用ハサミ」を作ったつもりが売れずに悩んでいたら「シュレッターハサミ」として売れ出した…
このように当初の仮説とはズレたところで成功するケースは、枚挙にいとまがないです。
築地の中卸市場の販売ルートに強みがあるから、海苔の…とこだわっていたら、活路は見いだせなったかも知れません。このように当初想定していた強みではない「別の強み」によって成果があがることは、往々にしてあります。
こうやってみると、私はこの3つの理由からフィードバック分析で「強み」を見つけ出す限界を感じているわけです。
では、どうやって「強み」を見つけるのか…私は、自己分析ではなく、他者による分析の方が正しいアプローチが可能だと信じています。
なぜなら、すべての評価は自分ではなく、他者が行うためです。いくら「強み」があると自分(自社)では思い込んでいても、他者が受け入れてくれなければ、売上にはつながりません。
「強み」とは、お客様が当社を選んでくれる「理由」だからです。
ただ、ダイレクトにお客様に「強み」を聞いたところで、その情報自体は使えません。それは単なる結果だからです。
お客様から聞いた「強み」をさらに深く洞察して、強みの源泉である「結果を導き出した自社の何気ない行動習慣・文化や商品に組み込まれた機能・性能をつくり出した思考回路」を導き出す事が大切です。
この強みの源泉を抽出しないことで、「新商品の市場投入」や「新規事業推進」などへの横展開が可能になります。
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