強く大きく飛躍する、柔らかな「型」の作り方
日本映画の父・牧野省三氏が伝える、良い映画の条件に「一 すじ、二 ぬけ、三 役者」という言葉があります。“すじ”とはストーリーを指します。“ぬけ”とは美しいカメラワーク、三つ目が演者である“役者”です。この三つが当たる映画の条件となりヒットの「型」であることを示唆しています。時代がどんなに変化しても、変わることのない基本の型であり「考え方」です。ひるがえって、ビジネスもまた、こうした「型」を自社に定着させることでブレることなく、枝葉をスパッと切り捨てる潔さが生まれます。
季節の変わり目は自律神経が乱れて体調のすぐれない人が増加するものです。同じく、“時代の変わり目”もまた、企業体において「不調」や「不安」が強く出、調子の狂いやすい時です。更に今年も残すところあと2ヶ月。元号改変、消費増税のバタバタ、自然災害に苦しめられながら、いよいよ来年の東京オリンピックイヤーが迫っています。無意識のうちにストレスがたまり、ブレやすい時です。
わたくしどもの面談においても、「先生のコラムにも書いてありましたが、たしかに今の時代、“モノ”や“サービス”であふれていますよね。新商品といっても、他社がやっていたりして・・・、ヒトマネなんて自分たちの存在意味がないでしょう・・・、笑われるかもしれませんがもうニッチもサッチもいかない」。お疲れの表情が滲み出て、深刻な面持ちの経営者さまがご相談にいらっしゃいます。
事実、時代は革命的変化のプロセスにあります。直近のビッグニュースでは、グーグルによる量子コンピュータ実用化への躍進が話題になっています。身近な暮らしにおいては「キャッシュレス化」「産業ロボットの広がり」「5Gや自動運転の実用加速」「AIの活用」など、商品サービスの端境期を迎えています。一方、地球環境の変化、SDGsの実践、人材不足を補う高齢者と女性の活躍など、旧来商品サービスの考え方と在り方のリニューアルが求められています。
ここ数日のキーワードがあります。
・学校内のトラブル解決助言に「弁護士」活用、名称「#スクールロイヤー」
・「ワークマン」、業務用アイテムを女性向け商品に変換で大ヒット
・減災型ビジネス、自治体避難指示対応改善と環境対応策需要
・近視遺伝子検査、アジアの子供、2020年には近視割合半数越え
上記には商品リニューアルのヒントとなるエッセンスがつまっています。時代の変わり目に、不調で鬱々する会社もあれば、反対に淡々と目の前の課題をクリアしてゆく会社があります。何より目の前の商品が売れなければ、飯は食えないし、売れなければむろん次の商品サービスにつなげることができません。目の前に立ちふさがる壁の高さを測っていたら飛躍することができません。心の眼をひらき、自社ビジネスに引き寄せて素直に考えてゆくことで、壁を飛ぶきっかけとなります。そして、こうしたヒントが収益向上につながる「泉」となることが多いのです。
冒頭の言葉に戻りましょう。まずは、自社にヒットを導く原則である「型」を定着させましょう。新しい時代に向かっているかどうか、既存の「型」を点検をしましょう。どんな時代に生きても、人は明日のことを思い煩い、不安になる生きものです。人間の「心」のスピードは、そうそう簡単に変わることがありません。一方、デジタルの処理速度はわたしたちの想像を超える進化に向かっています。
ひとの心と現実世界との「溝」が深く大きくなればなるほど、そこに自社のビジネスチャンスがあります。商品リニューアルの核となる「種」は、この天地とともにあり無尽蔵です。どんな眼で商品サービスを見るか。いかなる眼で商品サービスをとらえるか。枝葉をとりのぞいてシンプルに思考してゆきましょう。
大革命的変化の混沌とした時代、過去のノウハウ、過去のテクニック、過去の成功事例などがそのままの状態で役に立つことはありません。自社にぴったりとフィットした商品リニューアルの「型」を定着させましょう。繰り返し活用できて、やわらかく変化させることができる「基本」の型を作ってあげることから着手しましょう。竹のようにしなり、タフな仕組みづくりを目指しましょう。混沌上等、炎が立ち上るがごとく情熱をたぎらせ、真摯に自社の「商品」に打ち込んでゆくことです。挑戦するものだけに、道が開かれます。
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