企業の独自の強みを実現する仕組み化
前回のコラムでは、『経営とは結局なにをすることか?』と題して、経営の2つの要諦の一つである「自社独自の強みをつくること」についてお伝えしました。
ビジネスの本質が差別化である以上、他社と同じことをいくらがんばってやっても埋もれるだけ。当たり前の話ですが、なぜ御社を選ぶ必要があるのか、この点が買い手にとって明確でない限り儲かる経営を実現することは難しいということになります。
では、経営の要諦のもうひとつは何でしょうか。
それは、『仕事を仕組みでまわすこと』です。
仕事を仕組みでまわすとは、最適な仕事の進め方(工程、判断基準、責任の所在など)を事前に練り、言語化・文書化し、それを組織としてこなすことを指します。
自社独自の強みを打ち出すことは「戦略優位性」を築くことと言い換えるならば、仕事を仕組みでまわすことは「オペレーション優位性」を築くことといえます。これはどちらか一方ではダメで、両方備えてはじめて企業の強みが構築されることになります。
いくらオペレーションが仕組みでまわせていても、そもそもその事業コンセプトがありきたりなものであれば他社と差別化できずに埋もれてしまう。
一方で、いくらユニークな事業であっても、それを実現するオペレーションが仕組み化されておらず場当たり的な仕事の進め方や社員によってバラバラのやり方をしていたのでは、結果の再現性を確保することは難しくなります。
「戦略優位性」と「オペレーション優位性」、これは企業を成長させる両輪となるもので、そのどちらをも継続的に高めていく必要があります。
特に、当社が構築をご支援している「特注ビジネス」では、この2つの優位性ががっちりかみ合っていないと成功することはありません。他社がやっていないユニークな特注サービスのコンセプトを固め、そのオペレーションを仕組み化し、組織力でこなしてはじめて他社と差別化された独自のポジションを築くことが可能となります。
外から見れば「イレギュラー」な対応でも、中から見れば「レギュラー」になっていないとダメということです。
これが、実際には逆になっている会社が非常に多いです。つまり、他社と同じようなこと(レギュラー)を毎回バラバラ、バタバタの仕事のやり方(イレギュラー)でなんとかまわしているという会社が中小企業には圧倒的に多い。
大企業と中小企業の違いというと、売上規模、資金力、社員数などが挙げられますが、実は「仕事の仕組み化」ができているできていないの違いが非常に大きいのです。
よく中小企業の経営者から「うちのような中小にはいい人材は入ってこない」との嘆きを聞くことがありますが、実はそんな中小企業ほど仕事が仕組み化されておらず、個々の社員の頑張りに頼ってしまっているというのが実態です。
確かに中小企業であれば豊富な応募者の中から採用する社員を決めることは難しいですし、社員の数も余裕をもつことはできません。であればなおさら仕事は仕組み化し、個々の社員の能力ではなく組織の力で仕事を進める必要があるのです。
会社の規模が小さいうちは、仕組み化ができていなくても社長や一部の優秀な社員のがんばりでなんとか事業はまわります。しかし、年商4、5億円を超えたあたりから無理が生じます。なんでも社長がやるわけにはいきませんし、優秀な社員にも負荷がかかりすぎます。そんな頼りになる社員も耐えきれなくて辞めてしまい、事業の縮小を余儀なくされるということもよくあります。
人材に余裕をもてない中小企業こそ「仕事の仕組み化」をすすめ、社員全員が力を発揮できるようにもっていかなければなりません。
中小企業の経営者の一番の悩みは「人」の問題だといわれています。しかし、人の問題で悩んでいる会社は間違いなく仕事を仕組みでまわせていないわけです。仕組みがまわっていないから、社員によってボロボロと仕事の抜け落ちやミスがでてしまうのです。
つまり、社員教育を考えるよりも仕事の仕組み化に取り組むことが先だということです。まず仕組みを構築し、仕事のやり方、進め方を言語化する。これが社員を訓練する教科書となります。社員は教育するのではなく訓練することが必要ということです。
この教科書をつくらず、社員の訓練もせず、「仕事のやり方は見て盗め」とか「背中を見て育て」などと言っていてはいつまでたっても組織力は上がりません。
社員5人で5の力、10人で10の力というような足し算ではなく、掛け算で組織全体の力を上げていくことです。仕事のやり方をリーダーが中心になってチームで検討する。全員で知恵を絞って、やり方、工程を工夫することで、今までできなかったことができるようになる。この快感は癖になります。
社員の能力が低いとあきらめてはいけません。しっかり仕事の仕組み化をすすめて訓練すれば、社員の能力も生かされます。掛け算で組織力は上がっていきます。そしてその力が企業の独自性を支えるという好循環が生まれるのです。
戦略優位性とオペレーション優位性、この2つを両立させて、埋もれない経営を実践していきましょう。
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