見える化、数値化できない「成功例」が社内で共有されない組織の脆弱性
以前、個別でお受けしたご相談内容です。
「社内のある担当部署は、いつも明るい雰囲気で社員が和気あいあいと仕事をしているんです。でも、その理由がよくわからないのです。リーダーは大変優秀で、そもそも、とても出来る奴なのでリーダーに抜擢したのですが、他にも同時期にリーダーになった社員の中ではずば抜けて結果を出しているんです。ただ、それを他のリーダーとも共有したいと考えているのですが、上手くいっている理由がよくわからないので、共有のしようがないのです。」とのこと。
せっかくの成功事例が社内にあるというのに、その理由がはっきりせず、他部
署に生かせないというのです。なんともったいないことでしょうか。
しかも社長自身は、そのリーダーと、部下との関わり方に大きなヒントが隠されていると考えているようなのですが、関わり方という漠然としたものであり、目に見えるようで見えないものであり、数字で表現できるものでもなく、何が上手くいっているのかと把握できないでいるのです。
特に今の時代、部下指導において「ハラスメント」などの、やってはいけないことを情報として共有することはあるものの、「やるべきこと」「やったら上手くいったこと」の共有はなかなか行われていません。というのも、上手くいっているのだから問題ないでしょうと考えてしまうからです。
そこで、いくつかの質問をしてみると、上手くいっている部署で何が起こっているのかがしだいに明らかになってきました。
その部署では、普段からリーダーがよく部下とのコミュニケーションを取っているのです。といっても、業務上のコミュニケーションばかりではありません。昼休みなど、リーダーが自ら部下の中に入り込み、自ら自己開示をして部下と会話を楽しんでいるというのです。
上司と部下という立場に縛られない、緩い交流とでも言うのでしょうか。笑顔が絶えない明るい会話が飛び交っているというのです。そんなリーダーのもとで働く同僚は、緩い交流を通じて、仲間をより知るようになります。それが仲間の間の「信頼感」を育んでいくのです。信頼できる仲間なので、よく集まってはガス抜きをしているというのです。困っていることなどをよく話し合っているというのです。時には軽いグチなども出るとのこと。
雑談とガス抜きで、なぜ結果を出すことが出来ているのか。それは、リーダー自ら、部下の「心ほぐし」を率先して行っていたからこそ可能だったのです。
つまり、交流を通じて互いを理解するようになり信頼感が生まれます。何か上手くいかないことがあった場合、それを聞いてくれる仲間と吐き出せる安心な場所が出来ていたというわけです。彼らは普段から自分ひとりで抱え込まず、互いを励まし合える居場所づくりを行っていたのです。
信頼できる仲間と安心できる居場所の存在が、チームとして結果を出す後押しをしていたのです。
では、これを他の部署にも応用するにはどうしたらよいのか。実はこここが最も難しいところでもあります。というのも、すべてのリーダーが同じように部下の「心ほぐし」が出来ないからです。自ら積極的に自己開示をして部下との交流を増やすようにと言われても出来ないからです。
ではどうしたらよいのか。それは、信頼感を育み、普段から安心して仲間と語り合えるセイフティーネットを作るということです。ただ単に交流するのではなく、同じゴールを目指す仲間として情報や立場を共有するのです。
そして最も重要なのは、「何を話すか」ではなく「どのように話すか」なのです。マイナス思考や不平、不満、批判などに対しても受け止めるという一貫した態度を貫くこと、キーワードは「尊重」「正直」「安心」なのです。
もちろん、セイフティーネット作りも、「なんのために行うのか」というブレない目的を持ち、共有することが基本条件になります。
御社は、チーム作り成功例が社内で共有されていますか。
「上手くいっているから問題ない」と無関心でいませんか。
社内の貴重な財産を最大限に活用できていますか。
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