第69号:成熟経済で生き残るための経営者の重要な業務とは
ある注文住宅会社の経営者さんから経営相談をいただいた時の話です。
業績不振ということで相談に来られましたが、現状の業績をお伺いすると数字に関する回答が曖昧でした。
こうした傾向は、特に創業者の方に多くいらっしゃいます。創業時に自分が第一線で働き、利益を多く出していた経験があると、細かな数字に目を向けるよりも売上を上げてさえいれば利益が出ると勘違いしてしまい、売上額と利益額くらいしか数字を意識しなくなってしまうのです。
経営者が数字に弱い会社は、会社全体が売上を上げることにしか意識がいきません。
売上を上げるために、他社と価格競争してでも売上にこだわります。
しかし、他社との価格競争によって収益率が下がると、その分は販売数の獲得で補うしかなくなってしまいます。
例えば、平均単価2,000万円、粗利益率が25%の会社が5%の値引きをしたします。計算すると、値引額は100万円です。この100万円という額は、売上から見れば5%の値引きですが、粗利益から見れば20%もの値引きになるのです。つまり、売上目標も20%上げなければならないわけです。しかし、今の時代、売上目標を20%上げることは簡単なことではありません。
成熟経済において最も重要なことは労働生産性の追求です。
そしてその際に経営者が担うべき重要な仕事が価格設定です。
価格設定を営業担当任せにしていませんか?
前述のケースで、逆に5%の値上げをすることができたなら、目標額を20%下げることができます。こんなに大切な判断を経営者の知らないところで行ってしまっている企業は少なくないでしょう。
この重要な価格設定には3つの方法があります。
1つは原価思考です。これは商品原価に自社の利益を上乗せして価格を決める考え方です。
2つめは競争思考です。他社の価格と比較して自社の価格を決定する方法です。
3つめは価値思考。自社の商品価値を考えながら価格を設定します。
自社の価値を明確にして価値思考で価格を設定することが、経営者が担うべき重要な仕事なのです。
あなたは、自社の価格設定に対して、その根拠となる価値を社員さんにしっかり説明できていますか?経営者がそれをできていないとすれば、社員さんが自社の販売価格とその価値をお客様に伝えることができずに値引きに走ったとしても無理はないかもしれません。
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