社長自ら、社員を大切にしていると伝えるべき理由
ある創業社長からのご質問です。
「社員がイキイキと仕事に熱中できるのは、熱中できる、夢中になれる仕事についているからですよね。好きな仕事ができていれば、あまり職場環境とは関係ないのでは?」
自身が熱い想いがあって会社を立ち上げられ、好きな仕事、夢中になれる仕事を生業とし、休日返上で働いても楽しくて仕方なかったのだとか。
では、好きな仕事に従事していれば、社員はイキイキと働いているかというとそういうわけではありません。本来、その仕事がしたくてチャレンジした仕事であっても、職場環境によってはモチベーションも下がり、能力を十分に発揮することもできません。
職場環境改善というと、何か新しい制度を導入するとか、福利厚生を充実させるとか、あるいは、職場にカフェを作るとか、制度やモノ、場所を連想する社長も多くいらっしゃいます。そのため、うちではもう十分にやっているから大丈夫と言われるのです。
もちろんそれらを否定はしません。ですが、そのような制度を作ったきっかけ、福利厚生を充実させた理由はなんでしょうか。社員を大切にしたいという想いがあるのではないでしょうか。
この職場でできるだけ長く働き、会社に貢献してもらいたい。
仕事を通じて自らも成長してもらいたい。
将来は幹部候補生として能力を発揮してもらいたい。
そんな社員への想い。年に1回、入社式の時だけ伝えているだけなんていうことはありませんか。
実はこの、「社員ひとりひとりを大切にしている」ことを声高に伝えているということがとても大切なのです。これは、言わなくて伝わるものではありません。年に1回伝えればよいというものでもありません。社長自ら、自らの言葉で何度も何度も伝えていくべきことなのです。そして伝えたことを形にして実践していく中で、やっと社員に伝わるものなのです。
ある外資系企業で、主幹製品の品質に不備があり取引先との間で大問題になったことがあります。営業担当者は当時、そのフォローに相当苦労していました。
その後、営業部門を集めた緊急会議が開催されたのですが、社長の言った一言に、必死で頑張っていた営業の社員からは怒りと諦めが混ざった感情が噴出したのです。
それは、自分たちの苦労を社長は全く理解してくれていなかった・・・という怒りと不満でした。
正確にいうと、社長は外国人でしたから、「社長の言った一言」ではなく、それを日本語に通訳した「通訳の一言」に激怒したのです。通訳が使った、選んだ「ある言葉」がまずかったというわけです。確かにその文脈で使うと誤解させるような言葉を使ったのですね。
ですが、そのたった一言が、これほどまでに自分たち社員は大切にされていなかったのだという不満と失望に変わってしまったのです。もちろん、その誤解だけが理由ではありませんが、その後、大変残念なことに、何人もの優秀な営業マンが会社を辞めていくことになったのです。しかも競合他社へごっそり転職したのです。
何か問題が起きた時こそ、逆境にいる時こそ、社員が団結しなければなりません。その時、目の前にある仕事が好きだからというだけではなく、会社から大切にされている、信頼されていると思えるかどうか。それには普段から社長のメッセージが、会社のメッセージが伝わっていなければならないのです。
社員がイキイキ熱中して働くのは、決して、仕事が好きだから、夢中になれるからという理由だけではありません。普段から、そしていざという時、会社から大切にされているかを実感できているか、が重要なのです。
さて、あなたの会社では社員を大切にしていますか。
そのメッセージがきちんと伝わっていますか。
今週の提言
イキイキ働く職場では社員が大切にされているという実感を持っている
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