チャンスは掴め、掴んだら離すな!
これまでも書いてきましたように、現代の経営は様々に多重的多層的な努力を重ねないとうまくいかない、というのは言うまでもないことです。
高度経済成長時代のように、ひたすらただ頑張ればどんどん儲かってしまう、なんてことはまず起こりません。
それでもたまたま千載一遇のようなチャンスが巡ってくることがあります。
例えば、今盛んにマスメディア等で宣伝している「過払い金返還請求」があります。
これは、なかなか収入が上がらなくなった弁護士業にとって降ってわいたようなビジネスチャンスでした。
この状況はまだ続いていますが、弁護士はそろそろ次の一手を考えなくてはならない時期に来ていることでしょう。
また、少し前に焼酎ブームというのがありました。
どちらかといえばローカルなエリアでの飲み物だった芋焼酎が、ブームになったことで一挙に全国区のポジションを手に入れたのです。
焼酎の消費量は一気に伸びました。
しかし、これもブームがいったん収まって、焼酎の愛飲者がそれほど大きく減った訳ではないのに、好業績を維持できているのはほぼ『霧島』一社という状況です。
そして今、「ふるさと納税」という制度が施行されたおかげで、地方の多くの企業がチャンスを掴もうとしています。
これは、納税されたその地域が、原則地元の特産品を提供することになっているからです。
売り出したい特産品をうまくアピールすれば、制度に乗ってビジネスチャンスを掴むきっかけになることは大いに期待できます。
このように、いつもいつもという訳ではありませんが、何かのきっかけでビジネスチャンスが巡ってくるということは時折起こるものです。
タイトルを「チャンスは掴め、掴んだら離すな!」としたのには理由があります。
より能動的に、チャンスというものに向き合うとすれば、「チャンスは・・」ではなく、「チャンスを・・」になるはずです。
「チャンスを掴め」の方が一般的な表現ではないでしょうか。
この「を」ではなく、「は」にしたのは、たまたまそういう巡り合わせもあるだろう、ということです。
自ら能動的にチャンスを掴もう掴もうと動いていなくても、先の事例のように偶然チャンスが巡ってくることもあるわけです。
そのことを「チャンスは・・」と表現したのです。
そのときは何が何でもこの機会を逃してはなりません。
このチャンスすら掴めないとすれば、事業の才能がない、との烙印を押されての仕方がないでしょう。
ちょっと気の利いた経営者なら、こうやってたまたま巡ってきたビジネスチャンスを見逃すはずがありません。
そしてそのチャンスなりブームに乗っかって一定の業績なり利益を確保できると思います。
さて、問題はその後です。
こうやってつかんだチャンスをきっかけに継続的なビジネスに繋げられればいいのですが、それがなかなか難しいのです。
もし、ブーム以前のレベルに業績が戻ったとして、経営者が
「あれは、たまたま運が良かっただけだったんだから下がっちゃってもしょうがないよ。」
といった程度の意識であれば、これは問題です。
経営者がそんな意識では、おそらくその企業の業績は、ブーム以前のレベルにとどまることなく、もっと下がってしまうでしょう。
何故ならば、ブームになる前のマーケットに戻った場合、そのマーケットは以前のままではないからです。
特に地方の場合、ブームの間にも過疎化高齢化はより進んでいるので、戻った時にはもう元のマーケットの水準ではありません。
既に人口は減少し購買力も落ちているのです。
これがブームで掴んだ好業績の怖いところなのです。
ですから、例えブーム等でたまたま掴んだチャンスによって伸ばした業績であっても、それを下げないよう、最大の努力を図る必要があるのです。
私の経験でいえば、以前マーケティングリサーチの会社を立ち上げ経営していたときに、バブル景気を背景に受注量も受注単価も格段に増えたときがありました。
まさにブームに乗った感があったのです。
そのとき、会社の全スタッフで「納品するレポートの品質は絶対落とさないぞ。」という覚悟を決めまさに昼夜を問わず、能力体力のすべてをつぎ込んで成果物を仕上げました。
そのかいあってか、その後バブルがはじけ、主要クライアントであった野村総研が、外注先のリサーチ会社の7割をカットした時も、トップ評価で残ることができたのです。
さすがにピーク時の業績という訳にはいきませんでしたが、その後も事業を安定して維持することができました。
一度掴んだチャンスは逃さない、というのは、その覚悟を持って臨めば不可能なことではないのです。
例えば今なら、ふるさと納税でたまたま掴んだ全国市場への販売が始まったとしたら、デザイン、パッケージ、販売促進、決済システムすべてを全国区対応レベルにリニューアルする必要があります。
一度掴んだ顧客はリピーターとして確保し、決して手放すことのないよう、最大の努力を惜しまない対応がなされるべきなのです。
更に、新たな商品開発も怠りなく継続する必要もあります。
もちろん、こういったたまたま大きなビジネスチャンスなど来ない業種がほとんどなわけですから、それはそれで日常的な努力を怠りなく続けるべきなのは言うまでもありません。
とはいえ、ビジネスというのはただ平坦な延長線上に続いていく訳ではありません。
山あり谷ありが普通です。
そんな中で、例え小さなチャンスでも必ず何かしらの変化はあるものです。
その時そのチャンスを逃さないためにも普段から鋭敏な視線と掴んだら離さないという胆力を磨いておく必要があるのです。
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