第18話 勤務表を馬鹿にしてはいけない本当の理由
「そのださん、こうして1ヶ月間の工程を書き出していくと、やって欲しかった仕事や売上目標なんかが見えてきて、割といい感じですね・・・」
ー月例のコンサルティング会議における社長の言葉です。
つい先ほどまで、何か月たっても工程表ひとつ作りきれない現場への苛立ちで、鬼の形相になっていた社長でした。しかし、工程表の雛形に基づいて、社長と管理職が摺り合わせを行い、社長の頭の中にあった想いが少しずつ言語化され、空欄が埋められて行く内に、社長の顔が少しだけほころびてきたのがわかりました。
ここまで到達すれば、次の社内会議において、出来上がった工程表を説明することで、社長の想いを社員の腹に落とし込んでもらうことができます。
そこで、私から「この工程表に沿って、社員の勤務表を完成させてください。工程表はもちろん、勤務表の作り方次第で、”自律的に課題解決するプラチナ社員”を育成できるか否かが左右されます。」と申し上げました。
ところが、”工程表や勤務表がプラチナ社員を育成する”という意外なアドバイスに出会って、社長は呆気にとられてしまいました。
”工程表や勤務表がプラチナ社員を育成する”とは、どういうことでしょうか。その答えは次の言葉にあります。
それは・・・”QOL(quality of life:生活の質)”という言葉です。
熟考された工程表と、それに連動し様々な要素が配慮された、メリハリの利いた勤務表を作成し運用すれば、QOLが向上し、プラチナ社員が育成され、QCDが改善するという考え方です。
工程表⇄メリハリの利いた勤務表→QOL向上→プラチナ社員育成→QCD改善
もう少し詳しくお話ししましょう。勤務表は社員の生活のベースになります。”勤務表の質”がQOLの高低を決めると言っても過言ではありません。
つまり、工程の繁閑に連動させて、メリハリの利いた勤務アサインが配慮されていれば、社員は、社外の人々とのネットワーク作り、心身の健康増進、自己啓発と言った”生活ための時間”を享受することができます。
また、メリハリの利いた勤務表は、それ自体が、「”職場にいる時間”だけで仕事は評価しませんよ。仕事の質でも評価しますよ。」という社長からの明確で厳しいメッセージでもあります。
余談ですが、「効率を上げて!」と声を張り上げても社員の心には響かないものが、「勤務表に従って業務を遂行してください」と淡々と社員に迫ると、良い緊張感を生み出すものです。
話を元に戻しましょう。勤務表によってマネジメントされる側の社員の生活スタイルも多様化しています。職場だけが人生という時代ではなくなっています。ですから、社員は、上述のメリハリの利いた勤務表の効果から、”自分の人生(生活)と、この会社で働く意義”を腹に落とし込むことができるのです。
勤務表→生活時間の享受+社長のメッセージ→人生の意義+働く意義→QOL向上
こうしてQOLが向上した社員は、心身の余裕が生まれ、”課題に対する解決策を考えてみよう”という余裕を持つことができるのです。プラチナ社員へ一歩近づくのです。ダラダラ仕事のために業務が停滞し、ミスの尻拭いばかりで残業が多発している職場では、社長に対する敵意や疎外感は生まれても、問題を考えてみようという余裕は、決して生まれないのです。ブラック社員へ一歩近づいてしまうのです。
QOL向上→心身の余裕→自律的に課題解決しようという余裕→プラチナ社員
いかがでしょうか。メリハリの利いた勤務アサインを担保するために、工程に連動させて、長時間勤務と短時間勤務を柔軟に組み合わせるという、変形労働時間制の仕組みが必要になるかもしれませんし、経営者が労働基準法を勉強することになるかもしれません。そもそも、熟慮された工程をどのようにして作成するのかという懸念もあるでしょう。
私たちと共に、工程表と勤務表を活用して、プラチナ社員を育成しましょう。
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