知的財産を活用するために必要な時間軸とは?
知財・ライセンスの収益化 後藤昌彦 SPECIAL
SPECIAL
知財・ライセンスの収益化コンサルタント
株式会社 IPMaaCurie(アイピーマーキュリー)
代表取締役 後藤昌彦
知的財産、マーケティング、マネジメント…を融合し、ライセンスによる収益を恒常的に得る仕組を創るコンサルタント。「見えない有益資産」である知的財産を見える化し、将来、億単位の収益向上に繋がる新たな収益力を引き出す独自の仕組みづくりに定評がある。
「ウチが開発している製品は、10年後を見据えたものでしてね。特許権の存続期間も考えると、少なくとも5年~10年後には世の中の主流になる製品を開発していかないとと思ってます」
これは先週、広島県のある企業様を訪問しヒアリングを行った際に、その企業様の社長がおっしゃった言葉です。
正直、この先行き不透明な時代に10年後を見据えるのは非常に難しいと思いましたが、あえて先を見据えて研究と製品開発をされていることがわかり、こちらも参考になりました。
さて、今回の知的財産活用に関する本コラムですが、今回は時間軸を切り口に考えてみたいと思います。(少し難しいかもしれません。ついてきて下さい)
知的財産を取得し、活用する際にも
「この製品・サービスは将来世の中のスタンダードになる!」
「誰もがこの製品やサービスを利用する時代が必ず来る!」
という信念のもと、日夜努力されている企業様も多数存在します。
では、そのような製品・サービスに知的財産を活用するタイミングはどう考えればよいか?
その場合、私は2つの時間軸で考えるべきであると思っています。
一つは、
①活用する知的財産が正式に権利になるタイミング
もう一つは、
②活用する知的財産が消滅するタイミング
です。
①は、製品やサービスを開発する段階において、特許や商標などの知的財産を取得する際には、その製品やサービスが世に出される時期と、知的財産が権利化される時期とは必ずしも一致しないということです。
例えば特許の場合、通常、早くても権利化には2年はかかります。
商標でも、早くても半年はかかってしまう場合が多いです。
一方、製品やサービスは早く世に出して顧客に提供するのが通常ですから、特許を出願してからすぐ(1月後、場合によってはその翌日)とかいうのはざらにあるわけです。
つまり、「製品やサービスを世に出した時期と、知的財産を活用できる時期にはタイムラグが生じる」ということになります。
一方、②については、特許の場合出願してから20年、実用新案の場合出願してから10年という存続期間の制限があります。
つまり、その製品やサービスが世の中に定着する時期を想定していないと、定着したころには知的財産が消滅するか、或いは存続期間が残り少なく、充分に活用できないということが起こり得ます。
仮に、他社にライセンスするにしても、存続期間が短ければ活用価値は少なくなってしまいます。
要するに、「製品・サービスのライフサイクルと、知的財産が活用できるライフサイクルにはミスマッチが生じる」ことを想定しないと、本当の意味での知的財産の活用はできなくなってしまうのです。
例えば、①については早期審査請求制度を活用して権利化を早めたり、実用新案や意匠のように、比較的権利化が早い制度と組み合わせていく。
②については、存続期間延長制度を活用して延命措置を取る。
等々、できる限りミスマッチを軽減し、製品・サービスの投入とライフサイクルに合わせた知的財産活用戦術を費用対効果も考慮しながら構築していかねばなりません。
開発・営業戦略と同じく、非常に重要な視点であると思います。
御社の製品・サービスの投入時期・ライフサイクルは明確ですか?
それと知的財産活用をリンクさせていますか?
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