「マジメに一生懸命」を喜んでいる場合じゃない?!
「うちの社員は本当にマジメな人間が多くて、一生懸命働いてくれるんですよ」
先日、ある会合でお会いした社長様が、ご自身の会社のことをとても嬉しそうに話して聞かせてくださいました。朝早くから出社してきて玄関の掃除をしたり、月末などの忙しい時期には遅くまで残って片付けたり、また、お客様からご要望があればいつでもスグに飛んで行く…本当に一生懸命働いてくれる社員さんが多いのだそうです。
そこで私は、「社内にどなたか変わり者はいらっしゃいますか?特に営業部に…」と、聞いてみました。すると、ヘンな質問をするなあという表情で、「変わり者ねえ、まあせいぜい私ぐらいでしょうか」と笑ってお答えくださいました。
私がなぜこのような質問をしたのかと言うと、“マジメ”であることを良しとする会社は、とかく結果よりプロセスに重きをおき、結果を出せなかったことを厳しく追求しない体質であったり、人と違うことを嫌がり変化を嫌う空気であったりすることが多いからです。
もちろん、営業成績を上げるために何をしても良いハズはありませんが、「マジメな性格」「一生懸命な姿」だけが評価されているようでは組織の画期的な成長は望めません。
以前、このような会社がありました。営業部のトップがとても優しく温和な人柄で、自分自身はその人柄と実力で数字を上げ、部下からの信頼も厚く、雰囲気の良い部署だったのですが、部下の方は?と言えば、もちろんそれほどの力も無く、ただ言われた件数の訪問と言われただけの提案やテレセールスを行い、決まった報告書を上げてくる毎日でした。それでも、現場の辛さを知る上司だからこそ、思うように数字が伸びない部下を責めることはできませんでした。
そして社長に上げる報告は?といえば、
「ウチの部下はとにかく一生懸命やってくれています、彼等は本当にマジメに頑張っています」
ということだけ。社長にとっては、会社のために一生懸命働いてくれる社員が多くいることはとても嬉しいことかもしれませんが、営業力とは「会社を売り込む力」であり、ただ情報を伝達したり商品を展示したりするだけでは買ってもらえません。特に小さな会社であればあるほど自社より大きな会社にもぐいぐい入り込む勢いと知恵が働かなければ、生き残ることが難しいからです。
そして月末の会議になると、売上が上がらないのは顧客のせい、価格のせい、商品のせい…などと責任転嫁をし、「一生懸命頑張った」ことだけが評価される、そのような会社も多いのではないでしょうか。
新たな挑戦とまでは行かなくとも、これまで以上の売上や利益を上げるためには、これまでと同じ動きをしていては決して達成することはできません。今までと違う発想、異なる視点から考え、過去の常識にとらわれない柔軟な組織をつくっていく必要があります。
そのためには、会社やトップのこれまでの方針に、「No」と言える人材を置き、新たに出てくるアイディアや真っ向から否定する意見などの“変わったモノ”を受け入れることができる組織を作り上げることこそが、中小企業の生き残りにつながる第一歩なのです。歴史のある会社ほど変化を嫌うものですが、ちょっとした変化は社内の空気にピンと張り詰める刺激をくれるものです。
経営者の皆さま、社内はイエスマンで溢れていませんか?「No」と言える変わり者を置いてみませんか?
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。