社員にこだわるな!中小企業がフリーランス(業務委託)活用で強くなる方法

販促支援業を営むN社長は、席に着くなり話し始めました。
「先生、出来ました。その甲斐もあって、私も社員も時間が出来ました。」
クライアント企業と打合せての戦略提案から広告の運用支援まで、当初はこれらの業務は社員でやることが「前提」でした。
また、これこそが自社の「コア」となる部分であり、絶対に外に出してはいけないという思いもありました。
しかし、この2か月の取組みで、それが出来たのです。
N社長は、コンサルティング業務の『フリーランス化』を完成させたのです。
社長と数名の社員、と数十名のフリーランスへの業務委託。
最近、当社でもクライアントとして増えてきた組織の形です。
(ここでいうフリーランスとは、「個人事業主」で「主に在宅」で仕事をする人を指します。)
彼らが創業するタイミングには、フリーランスに業務の一部を任せるという発想が世に広まっていました。また、急激にそのような働き方をする人も、そんな人と出会うサイトも増えました。そして、昨今では、その活用は中小企業でも拡がっています。
やはりそこには大きなメリットがあるのです。
中小企業だからこそのフリーランスを使う理由
1.優秀な人が調達できる
最も大きなメリットはやはりこれになります。彼らは、会社を辞めてフリーランスとして働くと決めたのです。それだけ優秀であり、気概があるということです。また、個人事業主として「雇い主に対して成果を提供する」という責任感があります。中小企業にもそんな人に働いてもらうチャンスが大いにあるのです。
中小企業では、同じレベルの人を社員として採用することはできません。そんな優秀な人で社員として働きたいと思っている人は、もっと良い会社がいくらでもあります。
フリーランスで働けるから、うちを選んでくれるのです。
2.スペシャリストを確保できる
フリーランスの多くは、何かしらの専門分野に強みを持っています。高度な技術から単純な作業までをこなしてくれる人がいます。
彼らは、即戦力として機能してもらうことができます。育成にかかる時間を省くことができ、そのコストの削減にもつながります。
3.タイムリーに人材を確保できる
プロジェクトごとに、必要なスキルを持った人材をタイムリーに確保できます。社員数が少なく分業も進んでいない中小企業にとって、「その時」だけ「その仕事」だけで業務を依頼できることは非常に有難いのです。営業代行から新規事業の立上げ、システムの入替のプロジェクトなど。
4.組織の柔軟性が高まる
景気の変動や事業の拡大・縮小に合わせて、リソースを柔軟に調整することができます。
業務委託という形であれば、プロジェクト終了時にスムーズに契約を終了することも可能です。
フリーランスを活用するリスク
当然ですが、その一方でリスクも存在します。
1.突然辞めるリスク
フリーランスは、あくまでも個人の事業主という立場です。そのため、契約満了時期を持って「次の仕事が決まったので辞めます」と言われるリスクがあります。
会社側にとっては「急な離脱による業務の滞りが発生する」また、「ノウハウや顧客情報が失われる」という可能性があります。
2.言われたことしかしない
社員と比べると、フリーランスは「指示されたことだけをやる」傾向が強くなりがちです。また、1社だけの取引ということはまれで、複数の会社の業務を受けています。そのため、言われた以上のことを自発的に提案したり、仕組みの改善をしようしたりする動きは、期待しづらい場合があります。
3.マネジメントが難しい
やはり在宅勤務が中心になるため、進捗管理や品質管理が難しくなります。社員と違い、直接顔を合わせる機会も少ないため、密な連携が取りにくいのです。
しかし、上記のリスクも、運用の工夫や仕組化により大きく下げることができます。それにより、マネジメントの問題はクリアできるし、ノウハウの喪失は避けられるものです。そして、仕組みの改善へ参画させることもできます。
N社の挑戦:フリーランス活用のリアル
冒頭のN社は、その問題に真正面から挑戦しました。N社は、「コンサルティング業務の人材の確保」に悩んでいました。
N社長は言いました。
「集客をすれば、見込客を集めることができます。しかし、それをこなす社員がいないのです」。
その結果、社長も社員もこれ以上案件を受けられないほどの多忙な毎日を送っていたのです
人が居ればスピードある展開ができます。しかし人が居ないのです。やはり今のN社では、優秀な社員は採用できないのです。
私は一つアイディアを提供させていただきました。
「フリーランスの方にその業務をやってもらうことはできませんか?」
N社長は、額に指を当てたまま止まりました。そして、顔を上げて言います。
「その発想は全くありませんでした。でも、やればできるかもしれません。」
それからです、N社長は次の挑戦にすぐに移りました。
・見込客への営業
・チームのマネジメント
・クライアントとの戦略立案
・その後の広告の運用支援
これらをフリーランスで提供するのです。
賢明なN社長です、そこで大きな課題に気づきました。
それは次のものであり、フリーランス活用のリスクの4つ目になります。
4.ノウハウを持って独立される
昨今のビジネスでは、そのノウハウが人に付くことになります。それはN社も例外ではありません。それどころか特にその傾向が強いのです。それはまるで、「独立をさせ競合をつくるため」に人を育てるような状況になり得るのです。
フリーランスが働き続ける会社とは
考えをまとめるように、N社長は次の言葉を言われました。
「彼らが、当社で働き続ける理由が必要になりますね。」
彼らは、非常に優秀です。それゆえに自分が働く場所を選びます。彼らにとってお金も重要ですが、それ以上に自分の成長や充実が大事なのです。この人手不足の世の中で、仕事は選ぶほどあるのです。
金をもらっていると言っても、「その仕事に面白みに欠ける」や「その会社の不誠実さ」を感じれば、彼らのほうから去っていくことになります。
こちらが、彼らに「ここで働き続けたい理由」を提供することが重要になります。これは社員も一緒ですが、フリーランスの方が、それが必要になるのです。
また、フリーランスと言っても人間です。少なからず、「何かのチームに所属していたい」という欲求も持っています。フリーランスも一人の独立事業主であり社長である限り、そこには孤独が伴うものです。目的を共有するもの、感情を共有したり、相談し合う関係も必要になるのです。
フリーランスが自社で働き続けたいと思えるようにする、N社長はそのために自社はどうあるべきかをまとめました。
1.成長する機会を与える
業務委託だからといって、単なる作業だけを依頼するのではなく、新しいスキルや領域に挑戦できる機会を提供します。彼らにとって、自らの成長につながる仕事であることが、継続して働く大きな理由になります。
2.コミュニティをつくる
彼らにも「このチームの一員だ」という意識を持ってもらうことが重要です。定期的なミーティングへの参加や、成果を共有する場を設けることで、組織とのつながりを感じてもらうことができます。また、リアルでの懇親会も研修とセットで、年に数回は開くことにしました。
そして、次が最大最強の理由になります。
3.強いビジネス、良い顧客を持つ
強いビジネスモデルを持ち、良い顧客を持っていることは、彼らにとって非常に魅力的です。N社は、今、良い顧客、それも結構な大きな会社と取引が出来ています。
やはり能力の高い人達と共に、大きな仕事を進めるのは楽しいものです。こんな状況は、自分一人では到底つくれるものではありません。N社の持つ集客の仕組み、そして、N社の信頼があってこそです。そして、そのクライアント先で存分に成果を出すことができ、そのクライアントに感謝をされるのです。これが彼らの喜びになるのです。
4.チームで仕事ができる
個人事業主である彼らにとって、チームでしかできない大きな仕事に関わることは、大きな喜びになります。自分一人では成し遂げられない仕事に挑戦できる環境を提供することで、彼らのモチベーションは高まります。
こんな会社を目指しN社は動き出したのです。
フリーランスから社員登用する
彼らの中には、いつか「このままでいいのか」と思い始める人も出てきます。「もっと自分の仕事のレベルを上げたい」「もっと本気で働きたい」と考え始めるのです。また、「少し安定した状態に身を置きたい」とも思うものです。
そのとき、その会社が彼らにとって魅力的であれば、社員登用への流れが自然に生まれるものです。こちらが「社員募集」をすれば、手を挙げてくれる人は必ず出てきます。
そのためにも、前述した「働き続ける理由」をきちんと整えておくのです。そして、早く会社を大きくするのです。
自社のコアコンピタンスを明確にする
ここでもう一つ、自社のコアコンピタンス(中核)は何なのか、という疑問が生まれます。
N社長の会社では、最終的に次の二つを「自社のコアコンピタンス」と定義しました。
1.企画と集客、そのノウハウを積み上げる
環境と顧客の変化を読み、サービスの改善と新サービスの開発を行います。そして、そのための集客とその仕組みの改善を続けます。
2.フリーランスに気持ちよく働いてもらうためのノウハウ
彼らが、その力を存分に発揮し、成果を出せる環境を提供します。また、彼らが長くこの会社で働きたいと思えるようにします。この「フリーランスで事業を回す」ノウハウを他の事業にも転用する形で次のビジネスを考えます。
これが、中小企業の社員にこだわらない新しい成長戦略です。
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