ハノーバーメッセ2025で感じた 製造業システムへのAI組み込みの方向性

毎年定点観測のために、例年4月にドイツのハノーバーで開催される産業系の大規模展示会「ハノーバーメッセ」に視察に行くようにしています。メッセのレポートは、ご希望の方(当社ホームページの問い合わせフォームから「メッセレポート希望」とご連絡ください)に別途開示させていただきますが、今回のメッセでは特に製造業各種機能に対するAIの組み込みがだいぶこなれてきた印象を持ちましたので、本コラムではその方向性について感じ取ったことを書きます。
製造業系システムへのAI取り込みの急な進化
AIについては、従前よりディープラーニングの技術の応用例がありました。それは特に製造実行や品質管理の機能にてデータの傾向をつかんで予測したり、不良検出などに役立てられてきました。例えば、電流計や加速度センサーを各種の製造装置に後付けし、平常値と異常値の両方を事前学習させることで異常発生や異常の予兆検出をするなどの使い方です。ところが、昨今の生成AI技術は、これら今までのトレンドがまさにピボット的に激変させる様相を呈しています。
生成AIの出始めのころは、各社とも遅れてはならじと「生成AIの機能を使えます」という触れ込みができるよう、言い方は悪いですがとってつけた様に外部に生成AIを置き、そこに簡単な連携を行う、といった程度のレベルにとどまっていました。我先に生成AIを導入しようとせんがため、そのような中途半端な対応を急いだのでしょう。しかしそれでことが済むはずもなく、今年(2025年)のメッセの展示を見る限り、生成AIの組み込みの仕方はもっと洗練されてきたように思います。
例えば、製造実行の仕組みにはオペレータの操作を監視しつつ、人間の状況に合わせて作業に必要な情報を生成して能動的に提供するなど、各工程に応じてスムーズに作業ができるようにするための機能の一つとして組み込まれたものが出始めました。さらに、膨大な設計資料を全文解釈し、現場で現実に発生している事象について関係する設計資料を探し出して要約を表示する、といったものもあります。
要するに、
生成AIの機能が各種作業プロセスのフローの中の一部として切れ目のない形で組み込まれ始めた
とまとめることが出来ます。言い方を変えれば、「よーし!生成AIに聞いてみよう!」というマインドで使うものではなく、AIが人間に寄り添ってサポートしてくれるようになった、という変化を見せているわけです。
製造業のユーザーはどう向き合えば良いか?
こう考えると、これからの業務デジタル化は、「ソフトがあらかじめ用意した生成AIを使えるようにしないと損だ」と言えます。しかし現実には、ゼロからカスタムで開発したり、パッケージソフトでもあちこち改造をかけてしまっている場合は、これらのAIの機能がもともとついていないか、ついていても動かなくなってしまうケースが多いはずです。つまり、AIを使い倒したければ、従来にも増して「パッケージソフトを改造しないで使う」ことを前提にせざるを得なくなっているのです。
パッケージソフトを導入する際、そのキーポイントは「業務可視化」になります。現状の業務を可視化し、パッケージが想定している業務プロセスとの違いを明確化し、業務をどのようにソフトウェアに適合させるか事前に検討するのです。これによって、組織改革・業務改革面でどの程度のインパクトがあるか事前に把握でき、導入計画と対応計画の整合性を確保することができます。また、他社には無い自社の強みがどこにあるのかを明確化し、パッケージの標準機能に無造作に合わせてしまうことでそれを失うことが無いように事前計画を立てることもできます。
可視化の結果、どうしてもパッケージの業務内容と合わない場合もあります。それを従来はカスタマイズに行きがちでしたが、上記のAIのことを考えると、なるべく改造することは避けるべきです。となると、回避策は一つで、「外部ソフトウェアで機能を補完する」ということになります。気の利いたパッケージソフトであれば、外部ソフトを呼び出す機能を標準で持っていたりもするので、うまく実装できればソフトが複数になってしまってもそれほど使い勝手を落としません。そのような、「外部ソフトとうまく連携できる機能を元々持っているパッケージソフト」を選定する、という目利きも必要となるでしょう。
パッケージへのAIの搭載はさらにどんどん進むのは必然ですし、おそらくAIを搭載したソフトウェア同士が、「陣取り合戦」を展開することもあるでしょう。業務で使う複数のソフトにそれぞれ別のAIが組み込まれ、それぞれが違う主張をし始めると、ユーザーとしては困ったことになりそうです。AIにも適材適所がありますので、上手にAIを使い分ける知恵を持たなければならない時代がもうすぐ来る、ということを強く思った今回のメッセでした。
当社ベルケンシステムズ(株)では、業務可視化支援をはじめとする様々なコンサルティングサービスプランをご用意しております。ご興味があれば是非当社ホームページをご覧ください。
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