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第27高収高賃金を目指えでの機能不全マネーへの対処

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライ先生、当社にはマネジャー会議の他に、現場社員と役員で構成する販売会議というものも運用しています」こうお話されるのは製造販売業A社長です。私はその会議形態に至った理由が分かりかねて、社長に更なるご発言を促します。

「αという管理職がいるのですが、一言で言えばこの者が全く機能していないのです。先日のマネジャー会議でも、持ってきてほしい情報やデータが会議の場に上がってこない、マネジャー会議で決まったことを適当に現場に下ろすので、現場に混乱が生まれています。結局私がその収拾を付けに行くことになります。」

聞けば、このαマネジャー職という方は、会社を長年支えてきた大ベテラン営業社員。個人営業成績でも未だに群を抜いてトップであり、1人で全社販売予算の25%以上を稼いでいる「販売の大黒柱」とのこと。年齢はまもなく60歳を迎えますが、彼に並ぶ営業成績を出せるものはおらず、これが社長の危機感になっています。A社長は続けます。

「αマネジャー職をマネジャー職として登用しているのは、その販売能力の組織展開や、新しい企画立案を期待しての事です。すでに10年以上前からマネジャー職をさせていますが、基本的に今のような問題は変わりません。以前なら問題があっても私が出ていってどうにかしていましたが、当社も間もなく代替わりします。これまでのままではいけないと思っています」

「そこで苦肉の策としてやっているのが、現場社員と経営層で構成する販売会議です。今は企画やプロジェクトが回っていかないだけでなく、現場からの不平不満も多いのです。そういった声も拾いつつ、現場から提案を上げてもらえる機会を作らないと、どうにも前に進まないからです」

高収益・高賃金事業を作っていく上で、マネジャー職とは経営方針と成果具現化の結節点をつなぐ重要機能です。マネジャー職がその機能を果たせなければ、部下の人時付加価値を上げる事や、社長が将来の戦略立てに集中するといった時間を取る事も出来なくなります。情報の流れが澱んでしまえば、事業運営のスピードは極めて遅くなります。PDCAサイクルはまともに回らなくなり、同じような問題が繰り返し多発します。そこには、人時付加価値の絶えざる向上を目指せる土俵が何一つありません。

現場社員は、自分たちが上手く回らないことを「マネジャー職のせいにする」という口実を手に入れています。勿論、上手く回らない原因としてマネジャー職の機能不全があるにしても、こういう態度が常態化すると「何かにつけて人のせいにする」という社風が形成されます。

経営層としてもマネジャー職を”自分が任命している”という負い目もあり、現場で企画やプロジェクトが遅々として進まなくても、堂々と分け入って自ら指導するという動きが取りにくくなっています。それが「マネジャー会議」と「販売会議」という会議の両建てという形での解消を図ろうという動機に繋がっています。大きなムダと混乱が発生する会議形態と分かっていながら、苦肉の策でそうせざるを得ないのです。

A社長もそのことは分かっています。しかしそれでもαマネジャー職にそのポジションを与えています。それは、これまで会社の業績に対して、プレイヤーとして誰よりも貢献してきた人物であるという敬意によるものです。また、色々問題はあるにしても販売業績を任せられそうな者が他にいない、という状況もあります。

いずれはマネジャー職として開眼し芽を出すだろうという思いや、下手に扱いを間違えて今辞められても困るという事情もあります。実際にαマネジャーが突然辞めてしまったら、A社に実損をもたらすのは間違いありません。

10年以上、のらりくらりと現行の形でやりながらも会社が繫栄してこられたのは、やはりA社長の力量によるものです。しかしこの状態が今後も続くのは、未来を俯瞰して見た場合に大きな損失に繋がる、という視点が必要になります。

それは、今だけでなく将来的にもA社に「適切な管理職が生まれなくなる」ということです。理由は極めて明快です。A社には、管理職という職務が何をすることなのかを知っている人が1人もいないからです。

αマネジャーの部下は当然αマネジャーを見ています。そのαマネジャーがプレイヤーの仕事ばかりしていて、マネジャー職の仕事に殆ど時間を割いていない、重要なマネジャー業務である情報資源の有効活用や育成ということをやらないのです。この状態が何年も続く中で、ある時突然α管理職に代わる優秀な管理職が生まれると考える方が不自然です。

残念ながら、飾りのように機能を果たさない管理職の下で仕事をする社員が、将来優秀な管理職になる可能性は低いと言わざるを得ません。なぜなら、将来マネジャー職に挑戦したいと思う気概ある社員は、会社(上司)に見切りをつけて退職し、自分を高められる環境を選びに行くからです。残った社員もプレイヤーとしては優秀だとしても、この会社を支えていく能力あるマネジャー職にはとても成れないでしょう。

名ばかりマネジャーを放置しておくことは、会社の将来における組織体制にまで大きな影響を与えてしまう問題であることを社長は知るべきです。ではどうすればいいか?

まず、「マネジャーとは職務の1つである」と考えることです。マネジャーは、営業職、技術職、開発職と同じく専門職種の1つです。当然、マネジャー経験のない人がマネジャー職になれば、基本的に「何をどう進めて行けばいいのか」が分からない1年生なのです。もちろん、現場経験が管理業務に活きることはあるでしょうが、「マネジャーとは何をする人であるか」を明確に定義出来ていなければ、正しいマネジャー職としての力を付けていくことはできません。

マネジャー職の役割定義、マネジャー業務体系、マネジャー職育成計画といったものを作っていかなければ、他の営業や技術職と同じく1人前になるための環境を用意することができません。A社に限らずマネジャー職の機能不全を嘆く社長は多いですが、こういうマネジャー職という機能を作っていくための仕組みを用意している会社は殆どありません。

マネジャー職を任命した途端、マネジャー1年生に対してその重要業務を丸投げしてしまうケースが多いのも、マネジャーを1つの専門職種として捉えていない証左と言えます。マネジャーも一日にして成らずなのです。現場社員を管理監督するのと同じように、マネジャーに対する社長からの指導・チェック・フィードバックサイクルを回し、少しずつ経営層からマネジャー業務を移管していくようにする必要があります。

また、ベテラン社員や功労者社員だからといって「管理職」という役割を与える、という発想を抜け出す必要があります。要するに、管理職という「役割」を「地位や処遇」として扱うな、ということです。管理職とは役割であり、個人の地位や処遇と切り分けて考えなければなりません。

管理職になるべき人物は、「管理職としてやっていく意欲と能力を持つ者」です。凄く当たり前でシンプルなことですが、どんな仕事にしても意欲と能力がなければ質の高い仕事ができるはずがありません。それを、「プレイヤーとしてベテランだから管理職としてやれるだろう」という根も葉もない根拠に基づいて管理職を任命してしまっている点に問題があるのです。

 名ばかりマネジャーを作り、これを放置してしまう弊害を纏めると次のようになります。

・気概ある上昇志向の社員が退職する
・今だけでなく将来的にも優秀なマネジャーが生まれなくなる
・事業運営スピード、組織成長スピードが極めて遅くなる
・人時付加価値が上がらないどころか下がる(調整コストの増大と社風の乱れ)

 私はA社長にいくつかの提言をしながら課題をお渡しし、次の一言を添えます。「これから1年かけて、”機能する管理職”を作っていきましょう。そのために、付加価値思考を組織に連鎖連動させる仕組みを構築しましょう」

 A社長の新しい挑戦が始まりました。

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