父と娘の関係性がまた厄介なものだ

これまで私のブログや本のなかで大塚家具の父と娘の話を何度か書かせてもらった。父と娘が経営権を争うに至る経緯、結末などを講演でも話させていただいた。創業経営者と後継経営者の経営に対する理念、方針のみならず価値観の相違などどこの親子経営企業ではよくある話だ。
大塚家具の父と娘の場合、公私ともに親子の確執が確かにあったのだろうと推測される事実が多く存在する。最終的な場面として株主総会での父と娘によるプロシキーファイトと呼ばれる株主争奪戦を演じたことでも窺えよう。
一般家庭での父と子の間にも確執があり親子の関係性が良くない場合が多くある。父親が経営者である場合、息子、娘が後継者となることが多い。事業承継のなかでも親から子への事業承継では、親子の関係性の良し悪しがその成否を分けることになると言っても過言ではない。
大塚家具には長女の一つ年下の長男がいる。長女と長男の二人の後継者候補がいたことになる。当時なぜ長男でなく長女が社長に選ばれたのか真意はいまだ定かではない。大塚家具の業績が右上がりの成長が止まり一進一退を繰り返す踊場であった。
父親である経営者が後継者として選んだのは経営コンサルタントとしての経験を持つ長女であった。長女に経営を任せる決断をした背景に業績不振という状況があったのではと考えられる。私の推測ではあくまでも長女はワンポイントリリーフであったと考えている。
長女が経験を活かし業績を回復させてくれたなら、長男に経営を譲らせようと父親が考えていたのではと思われる。当然、長女にはそんな父親の思惑など関係はない。一旦、社長の座に就いたからには自分の手で大塚家具を立派な会社にしてみせる。そう思っていたことは間違いがない。
社長になった長女は次々と経営改革を行っていく。大型店舗中心から中型、小型店舗へ、高級家具からリーズナブル家具へ、完全会員制を廃止し誰でもが気軽に入れる店舗へと変えていった。
実はこれらの長女の経営改革が父親にとっては自分のビジネスモデルの全否定に他ならない。父と娘の間の隙間風がこうして巻き起こり、やがて経営権の争いという大きな嵐となったのではないだろうか。
前のブログでも書いたが私の次女は東京港区で不動産エージェントとして夫とともに会社を経営している。私と次女は普段から結構話をしている。特に仕事の話となると知らぬ間に時間が過ぎ、互いにエキサイトすることもしばしばである。
昨年の11月だったろうか。互いに仕事のストレスがあったのか、話すうちに互いにヒートアップしてしまった。最後に私がそれまでにない強い、汚い言葉で次女を罵倒してしまい、取り返しがつかなくなった。
次女もそれに反応し、もう二度とこの家には来ないと興奮しながら帰ることになった。いつもなら2,3日もすればなんとなく元にもどるのだが、今回は少し違った。その後1か月近くふたりの冷戦が続いた。
そんな間も普段通り孫たちが毎日我が家に来ていることもあり、次女も仕方なく家には来るようになっていった。互いになんとなくもういいかと思うようになってきた頃、私の方から「ごめん」と謝ったことでようやく仲直りすることができた。
おかげさまで今はまたいつも通りの親子関係に戻っている。今回の次女との喧嘩と長い冷戦を経て気づいたことがある。次女が会社経営をしていることで私の仕事柄もあり、求められもしないのに私からアドバイスならぬ文句や注文を数多くしていたということだ。
いわゆる過干渉に過ぎたのだ。次女はXをよく使っている。日々の仕事などいろいろな出来事を投稿している。私もXを使っているので次女の投稿がどうしても目に入り、いつのまにか彼女の一挙手一投足を気にするようになっていた。
派手な喧嘩をした翌日、いつものようにXを見ると次女の投稿が見られなくなっていた。あれ、おかしいな。そう思って調べてみると、なんと次女からブロックされていた。冷戦の間、次女と口をきかず、次女のXを見ない時間が続いた。
そうしていると、不思議なことに段々と次女のことが気にかからないようになり、気持ちもなにか軽くなった気がしたものだ。その後、仲直りした後も次女の仕事の話は私からはしないように心掛けている。
父と娘の関係は本当にこれまた厄介なものだとつくづく思う。私の次女への執着が次女との関係をさらに厄介なものにしていたのだろう。完全に次女への執着を失くすことは難しいかもしれないが、自分が気を付けることでふたりの関係性がだいぶ良くなっているのは事実だ。
今もときたま、次女から「お父さんあのね。聞きたいことがあるんやけど」と声がかかる。途端に私の顔が緩むのを自分でも感じながら「なんや」と言っている。娘よ、未だ父さんXブロックされてるねけど。(笑)
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