脱炭素を価値化する

もしも御社が脱炭素に貢献しているという自負があり、なおかつ大企業に取引先があるという場合、その貢献をおカネに変える取り組みは案外簡単に進むかもしれません。
ちょっと前の話になりますが、昨年11月に日本政府は2026年から始める排出量取引の大枠を公表しました。それによると、国内の電力や鉄鋼、化学など大企業300~400社に対して排出枠を割り当てたうえで市場への参加を義務化し、そこで削減量に足りない分を購入させる仕組みをスタートさせるとのことです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA225RJ0S4A121C2000000/
この動きに備えるため、目下さまざまな大企業が自社のCO2排出量を計算し公表するための準備に余念がありません。いわゆるGHGプロトコルと呼ばれる開示方法に沿って、自社が直接排出したCO2をScope1、使用した電力に伴って間接排出されたCO2をScope2、その他の要因で排出されたものをScope3という括りで開示するのですが、なかでもScope3は15のカテゴリに分けられ、下請けとの取引に関わる排出量を細かく報告する必要があります。このうち資材調達はカテゴリ1に分類されるのですが、大企業から見た原材料の調達などに伴うCO2排出量はここに計上されることになります。
たとえば鋼材を買うときに、通常であれば1トンあたり2.2トンくらいのCO2排出量を計上しなくてはならないのですが、御社の鋼材だと1トンあたり600㎏くらいに収まるとなれば、そこで大きな削減量が生まれることになります。
制度整備は途上にあるため、仮に御社がそのような情報を用意できない場合については公共のデータベースにある数値を使って推定値で計算されることになるのですが、やはり実績値で削減量を明示できる場合、その価値はどのくらいになると思われるでしょう。
現在はまだ市場が本格稼働していないので、あくまで予測値ということになりますが、先行する海外の市場などと比較しても、CO2排出1トンあたり5000~10000円程度の値段が付くのではないかと言われています。仮に御社が年間7万トンの削減を訴求できるような情報を開示できれば、年間で3.5億円~7億円ほど「税引き前利益」が増加することになるのです。
私は最近、様々な機会にこの考え方を披露しているのですが、「税引き前利益」が億円単位で影響を受けることについて、やはり経営者への伝わり方が違うと感じさせられます。御社もぜひ、環境貢献度をおカネに変えるプロセスに参加してみてはいかがでしょう。
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