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理念の浸透のために組むこと

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年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

この日は5人のクライアント社長との食事会です。
 
 A社長が近況を話されました。
「先生、最近理念が浸透してきたと感じます。」
 
 他の社長が「ぎょっ」とします。私が日ごろから「経営理念では飯は喰えない」と言っているからでしょうか、私の周囲で「理念」が話題になることは殆どありません。
 
 代表してB社長が口を開きます。
「何か特別なことをやったのですか?それぜひ教えてください。」


理念とは何か。経営理念と企業理念(グループ理念)と事業理念の違い

改めて理念とは何か、確認をしておきましょう。理念という言葉を、辞書で確認すると下記のようにあります。

理念:ある物事において「このようにあるべき」という根本となる考え
理念すなわち「このようにあるべき」の前にはその対象が来ます。〇〇理念であれば「〇〇はこのようにあるべき」と、〇〇を定義付けることになります。
 
 経営理念:我が社の経営は「こうあるべき」を示したものが経営理念です。
社長を始め、役員そして、その経営に関わる専門家なども、これを意思決定の根本にすることになります。そのため経営理念には、地域や環境、取引先、労使の関係などという社会との繋がりも書かれることになります。
 
 企業理念:我が社は「こうあるべき」を示したものが事業理念になります。
そこには、事業の領域や社会への貢献の仕方が主に書かれます。「何のためにこの会社があるのか」という会社設立の趣旨や会社の存在意義が企業理念となります
 
 グループ理念を設ければ、グループ内企業に対し「こうあるべき」を定めることになります。新しい会社や新しい事業を立ち上げる際には、その範疇で行うことになります。
 
 事業理念:事業は「どうあるべきか」を示したものです。
どんな事業をやるのか、どんな価値を生み出すのか、などが書かれています。経営者や社員はもちろんのこと、パートや外注先など、事業に関わる者全てが対象になります。そして、この事業理念を実現するために社員を集め、組織をつくるのです。
 
 経営理念、企業理念、事業理念、どれにも意味があり、それぞれ対象が違うということです。経営陣の経営の方向性を揃えるためには経営理念、複数の事業を持ち共通の活動の指針を持ちたければ企業理念、管理者や社員を動かし組織をつくるためであれば事業理念。この区別をしっかり解った上で正しく使いたいところです。
 
 また、必要に応じて「理念」を設けてもよいでしょう。例えば「サービス理念」、「品質理念」、「人材育成理念」など。それぞれに対し「こうあるべき」を設けることは、それに関わる者に共通の考え方を提供することになります。

理念の浸透のためにやること

会社は「考え方」で出来ています。今の会社は、社長やそこに関わった人達の考え方が積み上がった結果の姿です。そして、今後もその誰かしらの考え方で会社は変わっていきます。
 
 考え方というだけあって、それは各々が持っている物です。そして、それは非常にオリジナリティが強いのです。それこそが「個性」であり、人間の素晴らしさです。
 
 しかし、会社はそれだけではやっていけません。「どんな事業をやるのか」「どう成長していくのか」「組織はどのようにあるべきか」やはりそこには共有の考え方が必要になります。そうでなければ、組織に成れないのです。
 
 その会社や事業をやるうえで必要となる考え方を共有することを、「理念の浸透」と言います。会社は、考え方の共有、すなわち、理念を浸透させるために下記の取組みを行います。
 
 ・経営計画書:経営計画書には、主に未来についての「考え方」が載っています。「こういう理由でこの事業を伸ばしていく」「こういう狙いでこの方針で行う」ということが書かれています。その考え方が共有できているからこそ、経営者や管理者層は意思決定のすり合わせができ、各部署の役割分担が成立するのです。
 
 ・業務基準書:「取扱商品についての方針」、「在庫についての方針」、「人材育成についての方針」など、各業務に関する考え方がまとめられています。その考え方は、過去の経験から得た知恵であり、その会社の財産です。それを残し継承すること、そして、今後も育てていくこと、それこそが強い会社の基盤となります。
 
 ・マニュアル:そのマニュアルには、その業務の目的や背景、そして、前後の業務などが載っています。そして、その後には作業の手順や勘所があります。考え方と具体的な動作の組み合わせです。これにより日々の業務が理念に繋がることになります。
 
 ・会議やミーティング:考え方を共有するためには、考え方について意見を交わす必要があります。メニューの変更や作業手順の見直しなど、その目的や意義から考えます。その際の拠り所になるのが理念です。理念の浸透が進んだ会社では、社員同士が業務について、目的や理念などの考え方を主軸に意見を交わします。
 
 ・採用:求職者に対し、「我が社はこのような考え方で経営をしている」という経営理念と、「我が社はこんな事業で世間に貢献している」という事業理念を説明します。その理念に共感した者が集まり、その理念の実現に貢献できそうな人材を採用していきます。そのようにして、より強い組織が出来ていきます。
 
 このようにして、考え方の共有、すなわち、理念の浸透を進めていきます。このような取組みをしていれば、その会社は当然良い会社になります。社員も活き活きと働きますし、それぞれの現場には対応力も改善力も備わってきます。

理念の浸透に丸暗記や唱和は必要ない

これらの取組みを愚直にやってきたからこそ、考え方の共有が進み、強く儲かる会社に成ったのです。結果として、理念の浸透した会社に成ったのです。
 
 間違ってはいけません。理念が浸透したから、その会社が強く儲かる会社になったわけではないのです。その取組みをやっているからこそ、社員は動けるようになったのです。理念の丸暗記や理念の唱和が有効かどうかは、その会社がこれらの取組みをしているかどうかに寄るのです。
 
 クライアント社長を集めての食事会でA社長は、「最近理念が浸透してきたと感じます。」と言われました。A社長はここ数年で会社を変えてきました。いままでは「社長の即決即断」でした。それを、経営計画書をつくり会議を行うなどと考え方の共有を軸とした取組みに変えてきたのです。それは、会社として当たり前のこととも言えるかもしれません。
 
 B社長から「何か特別なことをやったのですか?」と訊かれ、A社長は「特になにもやっていない」と答えられました。そして、「経営計画書、会議、社員がマニュアルをつくる、という当たり前のことをしてきただけです。」と補足したのです。
 
 他のメンバーも会社を変えるためにA社長とその道を歩んできました、そして、その場にいる全員の会社でもそれは出来ているのです。全員がこの言葉だけでそれを理解しました。
 
 そして、C社長が「そう言えば、うちも理念の浸透できているなぁ。」と感想を言われました。その言葉に一同が賛同の頷きをし、笑いが起きました。

(まとめ)

・理念とは、ある物事において「このようにあるべき」という根本となる考え。
・経営理念、企業理念(グループ理念)、事業理念の違いを理解し、使い分けること。
・会社は考え方で出来ている。考え方の共有が出来ている会社は強い。
・経営計画書、業務基準書、マニュアル、会議とミーティング、採用、それらの考え方を軸にした取組みをする。結果「理念の浸透」は成されることになる。
 
 
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