スムーズな事業承継を実現する重要なポイント
突発的な相続や事業承継が発生してから、「どうしたらいいでしょうか?」とご相談いただくことがあります。正直に申し上げると、「もっと早く相談していただけたら…」と残念に思うことが、多々あります。
なぜなら、相続が発生した後では、対策と言ってもできる選択肢が限られるからです。
事業承継についても同じです。本来事業承継とは、時間をかけて先代社長と後継社長が協力し、時間をかけて取り組むことで、スムーズな事業承継につながります。
特に同族会社の事業承継では、相続や税金対策などの「目に見える問題」だけではありません。古参社員との関係、親族従業員の処遇、株式の引継ぎ、事業用の資産の承継など、一筋縄ではいかない問題が山積みです。
だからこそ気をつけたいのが、税金のことだけを考えて事業承継を進めてしまうと、後々、大きな問題が起こる可能性があるということです。
確かに税金の問題は重要ですが、それだけではありません。人間関係や会社の将来を含めた、総合的な視点が必要なのです。
「目に見える問題」に限らず、また問題の大小は関係なく、しっかりと向き合って解決することで、後々の大きなトラブルになることを防ぐことができます。
相続が発生すると、税理士との関係も大切になってきます。税理士のアドバイスを上手に活用できるか、それとも言われるままに任せてしまうか。ここで明暗が分かれることも少なくありません。
大切なことなのであえて申し上げます。社長が自らの考えを何も持たないまま、すべてを税理士に任せきりにしてしまうと、後々取り返しのつかない事態に陥ることがあります。
実際、当社にも、「税理士の言う通りにしたら経営が苦しくなった」「顧問税理士のアドバイス通りに相続したら、親族間で争いになった」という相談も多く寄せられます。
ここで大切なのは、社長が税理士の専門分野を正しく理解することです。あくまでも税理士は、「税金」の専門家です。そのため、多くの税理士は税金の視点からアドバイスをします。
しかし、事業承継においては、税金の問題はほんの一部でしかありません。税金の問題よりも大切なことは、兄弟、姉妹、その他親戚を含めた、同族一族の中での争いを防ぎ、財務的にも良い形で引き継ぐにはどうすべきか。こういった課題に目を向けるべきなのです。
繰り返しになりますが、あくまでも税理士は、「税金」の専門家であって財務の専門家ではありません。財務の視点を持たないまま税金だけで判断すると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があるのです。
しつこいようですが税理士の仕事は、「過去」のお金の流れを見て、税金を計算することにあります。一方で、事業承継は、会社の「過去」ではなく、「未来」を見据えた判断をしなければなりません。
その上で、財務は、社長と会社の「未来」に向かって、お金が残る仕組みを作ることです。税金は払うものであるのに対して、財産やお金は残して、増やすものです。視点が「過去」と「未来」ですから、考え方やアプローチも全く異なってきます。
会社と社員、家族を守れるのは「社長」だけです。そのためには「どうやって利益の出る会社にするか」「どうやってお金の残る会社にするか」を未来に向かって、日々、考え続けるのが社長の仕事なのです。
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