無駄な会議を減らすための具体的な方法 ~年商8億の資材メーカーの営業会議~
「営業力を強化したい」と資材メーカーK社長が相談に来られました。
この時のK社は年商8億円で、営業部には6名の社員がいました。
イライラを隠せないK社長です。
「個々の社員に具体的な行動指示を出す必要があると考え、毎週の営業会議を始めました。その運営を部長に引き継ごうとすると断ってきたのです。」
私は、黙って次の言葉を待ちます。
K社長は更に語尾を強め、言いました。
「その理由を訊くと、私にはこれをやる力はありません、と返してきたのです。」
営業部長の怠慢なのか、それとも、何か別の問題があるのでしょうか。
会議の三つの目的
組織における会議の目的を確認しておきましょう。それは大きくは三つあります。
その1.進捗を管理する。
組織には目標があり計画があります。定期的に、その実行状況や成果を確認し、次の行動予定を決定します。それにより確実に計画を進めることができます。
その2.課題を解決する。
進捗の管理をしていると、問題が発生します。その問題を分析し、取り組むかどうかとその解決の方針を決定する会議です。そして、その後はその解決のために「進捗を管理する」ことになります。世の言う「プロジェクト」がこれに当たります。
その3.情報を共有する。
組織内で分業を正常に行うためには、情報の共有が必要になります。メールや掲示板などの一方向ではできない、双方向だからこその場が「会議」になります。方針の周知や他部署の取組みなど、知っておいたほうが良い部署やそのメンバーが招集されることになります。
会議には一つの目的を持つものもあれば、複数の目的を持つものもあります。役員会では進捗管理と課題解決と情報共有、全社での月例会議では主に情報共有という具合にです。
どの目的の会議も会社にとって重要ですが、組織の機能から考えた時に最も重要となるのが、一つ目の進捗の管理の会議となります。会社の背骨となるPDCAサイクルを支えるものがこの会議になります。また各部の会議も、そして各プロジェクトも、進捗管理の会議なしには成り立たないのです。
進捗管理のための会議こそが会社の中心だと言えます。
無駄な会議(生産性の低い会議)の原因
では、なぜ無駄な会議や生産性の低い会議ができるのでしょうか。その会議の参加者は「時間の無駄だなぁ」、「長い会議だなぁ、早く業務に戻りたい」、そして、「また脱線している、イライラするなぁ」と思っています。
次が代表的な「無駄な会議」の原因とそこで起きる現象です。
・計画(書)がない:いつまでに何をどうするという計画(書)が無ければ、当然進捗を照らし合わせ管理することはできません。単年度行動計画、プロジェクトのスケジュールなどの何かしらの計画が必要です。計画が無ければ進捗会議は不要であり、不可能なのです。
・課題解決会議になっている:進捗を確認していると、問題が出てきます。「売上が少ない」、「不良品が多い」、「人が足りない」など。それがすぐに意思決定できるものであればいいのですが、調査や議論が必要な場合には別の場で行うようにします。進捗管理の会議で議題が課題解決に移れば、その会議は自ずと長くなります。
・素案がない:その課題解決のための原案となるものがありません。その問題が起きた背景や、施策の案などが書面になっていないのです。その会議では問題が「口頭」で出されるのです。そして、その状況のヒアリングが行われ、「空中」で議論がされ、口頭で意思決定がされます。何が決まって誰がやるのか不明確で、その後の実現力は当然弱くなります。ひどいと重要な通達事項までもが口頭で済まされることもあります。その結果、認識のずれや理解不足による問題が起きます。
まともな会議(生産性の高い会議)をするためにやること
無駄な会議(生産性の低い会議)の逆をすれば、まともな会議(生産性の高い会議)をすることが可能になります。
その1.計画(書)を作成する。
目標があるということはゴールがあるということです。そして、計画があるということは役割と行動が明確であるということです。それにより初めて「進捗管理」がされ、それにより初めて遅れや未達の「進捗のズレ」が発見できるのです。計画があることが会議のスタートになります。
その2.進捗会議と解決会議を分ける
まずは、この違いを認識することが大切です。そして、議論が長引きそうな場合には「終わった後に話し合おう」や「別の会議の場を設けよう」と提案をすることです。また、この考え方を進行役とも共有をします。
その3.素案を出すように依頼する。
全員で考えることは大切ですが、全員でゼロから考えていては時間がいくらあっても足りなくなります。また、それでは分業をしている意味がなくなります。会議にしろ、ミーティングにしろ、そこには素案(検討書・企画書など)が必要です。そこに他の人から意見をもらうことでブラッシュアップと早期の合意形成を可能にします。
これらを満たしているからこそ『会議をやること』ができるのです。これが無ければ、たとえ開催出来たとしても、会議が非常に生産性の低いものになることは避けられないのです。
まずは、社長および管理者がこれをすることで、各部署や各社員がこれを「当たり前」にするようになります。
年商8億円が年商9億円、年商10億円になった資材メーカーK社の取組み
当時の資材メーカーK社は、年商8億円、社員数は43名でした。直近5年は、この規模で停滞していました。
会議の状況を確認すると、やはり「計画書がない」、「素案もない」という状況でした。その結果、会社全体としてPDCAサイクルが回されていない状態でした。また各部署が考えるという分業も機能していません。その替わりにあるのは、K社長による「一人PDCAサイクル」であり、K社長のパワーと能力による「速い意思決定」でした。
会議で組織をつくる
会議ではK社長がその時間の殆どを、話すことになっていました。報告を求められた社員が口を開き、それに対しK社長が訊き、指示を出す形です。そのため、時間は長くないものの、意見が全く出ない会議になっていました。
その社長が取り仕切る会議の一つである営業会議を営業部長に引き継ごうと考えたのです。K社長は、その営業部長を「優秀」と見ていました。そのK社長からの依頼を「自分には出来ない」と辞退したのでした。K社長はその理由を冒頭の私との面談で気づくことになりました。
その後、K社長は「会議」の見直しを行いました。経営計画の行動計画書をより具体的に作成しました。また社員に検討書や企画書という「素案」の作成を指示するようにしました。そして会議の定例化やその運営のルール化もしたのです。
元々商品もよく、社員のレベルも低くないK社です。営業部門の動きが良くなったことで、年商8億円が一年後には年商9億円になりました。また、各部署が機能してきたこと、そして、優秀な人材が頭角を現してきたこともあり、翌年にはK社長の念願であった年商10億円を超えることになりました。
会議は重要です。それを正すことで「組織をつくること」ができます。また、各部署や各担当の力の発揮と能力向上を実現することができます。
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