部下から信頼の厚かったKさんの破滅ーなぜ今、マネジメントの改善が必須なのか?
創業経営者のM社長とのご縁は、以前ご支援した企業の創業者からの紹介がきっかけでした。M社長は経営理念を重視し、社員や外部のパートナーを引きつける魅力を持つ方でした。ある地域で成功を収めた後、東京に進出し、ゼロからわずか3年で年商20億円規模の企業へと成長させた実績があります。
そんなM社長が次に目指したのは海外展開でした。国内事業を任せられるリーダーを育成するため、試行錯誤を繰り返していたものの、思うような結果が得られず、私のもとへ相談が持ち込まれたのです。以来、4年以上にわたってお付き合いさせていただいています。
Kさんというリーダー
M社長の下には、後継者候補として注目される幹部が何人かいました。その中でも特に期待されていたのがKさんです。Kさんは現場の叩き上げで、入社半年で支店長、2年後にはブロック統括、3年後にはエリア統括へと異例のスピードで昇進しました。
M社長はKさんの現場感覚を高く評価し、エリア経験を積ませた後、経営幹部としての活躍を期待していました。しかし、右腕のY専務の評価は厳しく、「Kさんには課題が多い」と指摘されていました。
私自身、Kさんと初めて個別面談をした際、違和感を覚えました。その後、Kさんがマネジメントに取り組む姿を見て、その違和感は確信へと変わりました。一言で言うならば、Kさんは「部下の成長を妨げるリーダー」だったのです。
Kさんの現場での手腕
Kさんの現場への思い入れは非常に強く、支店長たちが困った際には的確な指示を瞬時に出して問題を解決する頼れる存在でした。支店長たちもKさんに絶大な信頼を寄せ、「Kさんのようになりたい」と憧れる声が社内でも広がっていました。実際、Kさんが統括するエリアの売上は常に他のエリアをリードしていました。
しかし、問題が顕在化したのは、Kさんの異動後です。
異動後に明らかになった問題
Kさんが新しいエリアを任された後、元いたエリアでは労務管理や売上管理、備品管理といった基本的な業務が疎かになっていることが発覚しました。Kさんが全てを肩代わりしていたため、支店長たちは自らの業務を正確に把握しておらず、新しいエリア統括者との間で混乱と反発が生じました。
さらに、Kさんが新エリアで活躍を見せる一方、元エリアでは支店長たちの退職が相次ぎ、組織は大混乱に陥りました。これはKさんのマネジメントスタイルが生み出した結果でした。
Kさんの「有害な仲間意識」
Kさんのマネジメントスタイルは一部の支店長と強固な信頼関係を築く一方で、他の支店長とは対立を生み出していました。指示待ちの部下とは相性が良かったものの、自らの考えを持つ部下とは対立しがちでした。
Kさんの問題点は「仲間意識」の扱い方でした。仲間意識そのものは組織において重要な要素ですが、これに目的や目標の共有が伴わなければ、組織にとって有害になる可能性があります。Kさんが築いた仲間意識は「苦しみを分かち合う」感覚が強く、組織の目的や目標とは無関係でした。
結果として、Kさんと支店長たちの間には「同志」としての絆が生まれる一方で、組織全体の方向性が失われ、成長の足かせとなっていたのです。
成長組織の本質:未来志向と逆算思考
成長する組織には共通点があります。それは、未来志向と逆算思考です。未来の目標を明確にし、そこから現在の行動を逆算して計画する。この思考が組織に浸透していることが、持続的な成長の鍵です。
一方、Kさんのマネジメントは「足元志向」に留まっていました。目の前の問題を解決する能力には長けていたものの、未来を見据えた行動計画が欠けていたのです。その結果、部下たちは成長の機会を奪われ、「繰り返し」だけが残る状況に陥っていました。
Kさんの変化と組織の成長
幸いにも、Kさんは新しいマネジメント技術を学び、変化することができました。専務からの定期的な支援やフィードバックを受ける仕組みが整備されたことも、大きな助けとなりました。
リーダーの「志向」や「思考」は目に見えません。しかし、それを組織全体で共有し、正しい方向へ導くマネジメント体制があれば、持続可能な成長を実現することができます。
未来志向のリーダーシップ
成長するリーダーには明確な原則があります。それは「未来からの逆算」を思考の基本に据えることです。当たり前のようで難しいこの原則を身につけるためには、正しい考え方と技術が必要です。
私たちは「自分なり」に頑張るだけでは成長できません。リーダーには意図的な思考と行動が求められます。そして、それを実践するための「型」があります。この型を学び、身につけることで、誰もが成長リーダーとなることができるのです。
成長組織を創るために
Kさんの事例は、リーダーシップの重要性とその影響を如実に示しています。「自分なり」で頑張るリーダーは一見頼もしく見えますが、場合によっては組織を破壊する要因にもなり得ます。
だからこそ、正しい考え方とマネジメント技術を手にし、成長組織を創り上げることが不可欠です。さあ、一歩踏み出し、未来志向のリーダーとして成長組織を共に築いていきましょう。
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