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第16号:高賃金・高収益事業にはその価値の大きさに相応しい姿形がある

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライ先生、我が社にはいくつかの事業の芽があるのですが・・・」産業設備設計製造業A社長のご発言です。「この業界は景気変動の波を受けやすく、創業から15年経った今も経営が安定しません」私は次の発言を待ちます。

「我々が手掛けている産業機械には、センサー技術や自動測定技術など、沢山の要素技術が詰まっています。それら技術の切り売りで多少の収入が作れています。それから、機械のメンテナンスサービスも毎年多少売上が出ています。ただ、いずれも売上規模としては本業に比べて全然小さいものですから、一体これをどうしていけば経営の安定に繋げられるのか・・・。」

私はそれぞれの売上規模を示したデータを拝見したうえで質問を投げかけます。「それら事業ごとの事業案内・パンフレット・提案書・保証書などはございますか?」

「簡単なものならありますが」と仰りながら、機械メンテナンスサービスの要項が入ったリーフレットをお持ちになります。そこにはメンテナンスサービスに関する概要と技術的な優位性のアピールが簡単にまとめられ、最後に問い合わせを促す文言が添えられています。

A社長はもともとこの設備設計技術者であり、15年前に創業した当初からのネットワークのおかげで取引先には恵まれていました。それがここ数年の環境変化によって需要変動が激しくなり、対応が厳しくなってきたというものです。

しかしさすがにベテランのA社長です。先に挙げた色々なアイデアをお持ちでいらっしゃり、自社の能力を何とか活かして収益の柱を作れないか、と考えています。

アイデアは何となく浮かんでいるが、これをどう具体化して大きな収益を作っていけばいいのか?既存事業もある中でどう推進していけばいいのか?

A社長が取り組みたい事は、既存事業を補完する、祖業を超えていく可能性がある安定事業を作ることです。既存の賃金水準・利益水準を大きく引き上げていく可能性がある高付加価値事業を作ることです。

そのためには、そもそも「高賃金・高収益事業作り」とは何をすることなのか?を定義する必要があります。実はこの定義が曖昧なせいで、せっかくの高賃金高収益化を目論めるアイデアが世の中に認められなかったり、低空飛行で終わってしまう、ということも少なくありません。

ある人は事業作りを「商品サービス開発」と言います。またある人は「販売活動」と言います。またある人は「新たなビジネスモデルの構築」と言います。

もちろん、事業作りをどう定義するかは会社によって自由です。それらが間違っているわけでもなければ、全て正解ということでもないでしょう。しかし、こと高単価・高粗利・高賃金事業構造を作る、という観点での定義は次のようになります。

●独自の価値を具現化し、それを自ら発信することで、独自の市場を作り出すこと

これが事業作りの定義です。高付加価値事業作りとは「独自の市場を作り出すこと」になります。

経済原理で考えれば、ある特定市場に自社しかプレイヤーがいなければ、そのプレイヤーは価格決定権を持つことができ、独占的に儲けを得ることができます。この状態を作ることが高付加価値事業作りの目標です。

独自価値とは、ある状況下における顧客が潜在的に持つ真の願望を叶えていく、自社ならではの思想とノウハウの結晶です。商品やサービスそのものの特徴ではありません。

商品サービスを利用することで顧客が感じる満足感や喜び、顧客が得られる便益、そしてそれを可能とする一貫した商品サービスの設計思想を独自価値と言います。

このように「独自の価値を作り、それを自ら発信し、独自の市場を作る」というプロセスを回していくことが事業作りということになります。

しかし事業作りの定義が分かっただけでは、これをどのように実現していけばいいのかまでは見えてきません。

A社は「メンテナンスサービス」から多少の売上を上げていますが、これを「メンテナンス事業」にしなければ、収益の柱に育てていくことはできません。

ではサービスから事業に展開していくためにA社にとって必要なことは何か?それは「独自価値を明らかにし、これを具現化する」という発想です。

独自価値の具現化とは、自社の独自価値をそれに相応しい形で見える化することを言います。これは高付加価値ビジネスをやるにおいてシンプルながら非常に重要な考え方となります。

価値の大きさは、概念として主張しているだけでは伝えることができません。これを他者が認知できる形に具現化しないと、実体のない空中戦で市場開拓しなければならず、非常に厳しい戦いを強いられます。

価値はそれに見合う姿形になって初めて価値として存在することができ、事業としての整ったカタチを持つことが出来るのです。

例えばサービスの独自性を人に伝える際、独自性を伝えるのにふさわしい形になっているツール・提案書・工程表などを使いながら説明する場合と、何のツールもなく独自価値に見合わない紙ペラの資料で説明する場合を考えれば、どちらの方が価値が伝わりやすいかは一目瞭然でしょう。

「そんなことで事業化できるかどうかが決まるの?」と訝しむ人もいるでしょう。であれば、ある程度意思決定に時間を要するモノやサービスを検討する場を想像してみてください。

相手の営業マンが場に相応しくない格好と振る舞いで、紙ペラ1枚の資料で説明を始めたら、その商品サービスの価値を感じられますか?恐らく「色々説明してくれてるけど、この商品サービスは本当に信頼できるのだろうか?」と考えるはずです。

価値を適切に表現する姿形がない―これが何を意味しているかというと、

  • 品質保証・工程管理・納期管理・対応規定・価格根拠といった「事業としての仕組み」が整っていないのでは?
  • 本当にこの商品サービスは企業が提供するものとして、体を成しているのだろうか?
  • 長く使い続けてもサポートし続けてくれる体制があるのだろうか?
  • 価格に見合う価値が本当にあるのだろうか?

という疑問を強く与えてしまうのです。

もうかなり前になりますが、私がかつて高級ヨーロッパブランド製品の日本法人に勤めていたころ、この価値の具現化についてヨーロッパ流の洗礼を受けたことを鮮烈に覚えています。

プロダクト全体を貫く設計思想が明確で一切のブレがなく、プロダクトの形状は勿論のこと、付属品、梱包材、保証書、カタログ、説明書、展示レイアウト、店舗構え、営業スタイルに至るまで、細部に渡って設計思想を見える化した形になっており、どの角度から見ても独自性を強く主張しているのです。

社員は、事業の設計思想を体現できる振る舞いができるまで徹底的に営業スタイルを叩き込まれます。

これは、そのプロダクトを販売した後に発生する「メンテナンス」という目に見えない技術サービスについても同様です。

目に見えない技術サービスを“見えないまま”にしない。保証の具現化、メンテナンス工程の具現化、経年変化により価値が増していくという意味づけの具現化、永く所有することで資産価値が高まることの具現化・・・

様々な媒体とツールを駆使して、目に見えないサービス価値を「見える形」にして、価値を認識できるようにしているのです。我が社には独自の価値があるということを、観念論で終わらせるのではなく形として具現化することで、価値の大きさを表現していくのです。

ぜひ、あなたの周りにある「高付加価値・高単価商品もしくはサービス」に注目してみてください。プロダクト本体のみならず、それに付随する様々な情報媒体・場・道具といったものの1つ1つが価値の独自性を主張している、ということが分かるはずです。

カタログ、保証書、提案書、工程表、申込書、梱包、説明書、接客スタイル・・・そういった形でもって独自性を伝えていくことが必要です。

特に、モノとしての売りものが可視化されていない「サービス」についてはより一層、この価値の具現化ということを重視しないと、独自市場を作ったり適正価格で売っていくことが難しくなります。

A社長はお話されます。「シライ先生、我が社でも機械メンテナンスは多少の売上が上がっています。このメンテナンスサービスを事業化していく際に、独自のサービス価値を具現化していくことは出来そうですか?わが社に独自性と言えるものがあるか、心配ではありますが。」

こうしてA社はメンテナンス事業化に向けて、メンテナンスの価値と内容を目に見える形に具現化していくことに着手します。

A社長は、アイデアの具現化に向けて事業コンセプトを創出しています。事業コンセプト作りとは、そのサービスが誰のどんな願望をどのように叶えるサービスなのかを言葉で定義することであり、独自価値を際立たせるための重要な工程です。

取り組むべき課題は多いですが、A社長は時間を見つけてはコンセプト固めに勤しんでいます。ここでしっかりと時間をかけて取り組むことが、次のフェーズである「具現化」や、更にその先にある「販売導線実装」に大きく活きてくるからです。

あなたは、自社にしかない独自価値の存在に気付いていますか?それをあらゆる形で具現化していくことに拘りを持っていますか?

著:白井康嗣

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