最適なコンサルティングを今すぐ活用する!

戦略の失敗は戦術でカバーできない

SPECIAL

プロジェクトメンター(第三者俯瞰支援)の導入を伴うプロジェクト管理の仕組みづくりコンサルタント

株式会社プロジェクトメンターコンサルティング

代表取締役 

プロジェクトメンター(第三者俯瞰支援)の導入を伴うプロジェクト管理の仕組みづくりの専門家。大企業において情報制御システム及び量産製品の設計・開発に携わり、SE及びPMとして約25年にわたりプロジェクト運営・管理を経験。
システムは列車の運行管理、河川管理、ダム制御、衛星画像データ処理、医療分野、セキュリティ分野等幅広く、官公庁案件から民間案件まで性格の違う数々のプロジェクトを成功に導く。関わったプロジェクトは300以上。

 プロジェクトのスタート時点での戦略に致命的な誤りがあると、どんなに優秀なチームでプロジェクトを遂行しようとしても成功させることは困難です。いわゆる戦略の失敗は戦術でカバーできない、ということです。私は、企業に勤めていた時代、まさしくこの格言が当てはまる事態を少なくとも2回経験しました。

 1つは、製品のセット販売戦略です。私がいた企業は、私が在籍していた期間に幾度となくグループ会社の合併を重ねました。その度に事業、顧客のシナジー効果を産んできました。しかし、事業の組み合わせが常に効果的とは限りません。

 私が会社Aに在籍していたときに責任者として担当していた事業Aの自社製品Aがあります。製品Aは、ニッチな市場ですが毎年トップシェアを確保していました。あるとき会社Aと会社Bが合併することになり、事業Aは会社B内で類似の事業Bと統合されました。統合されて生まれた事業Cを管掌する役員は新たに会社Bから移ってきた方です。

 その役員は、これまで順調に売れてきた製品Aに便乗しようと、会社Bで扱ってきた製品Bを製品Aとセットで販売するキャンペーンを思いつきました。製品Aと製品Bはその用途的に同じ顧客に採用されやすいものであったのです。

 一見うまく行きそうな組み合わせではあるのですが、私はセットでは売れないだろうと感じていました。それは、製品Aがチャネル販売をメインとしていたからです。自社が直接最終顧客に販売するケースは限られ、製品Aの大半は数十社の販売代理店を通して市場に出ていました。しかも、それらの販売代理店の多くは、製品B相当の他社製品も扱っていたのです。製品Bのカテゴリが、コモディティ化して市場に参入しているメーカが多かったことによるものです。

 そういう状況を説明し、私はこのセット販売は難しいと意見しました。しかし、会社合併直後でもあり、当該役員は功を急いだのでしょう。あるいは無理は承知で、とにかく何らかの販売戦略を捻り出して”やってる感”を見せようと思ったのかも知れません。その方針を見直すことはありませんでした。私にとって幸いだったのは、私の部署は製品を設計開発し販売するという製品に特化した部門で、システム等のソリューションを提供する部門は他にあって、その部門がセット販売を担当することになったことです。

 役員の強力なプッシュもあり、当該ソリューション部門ではそのセット販売を大きく予算化し、動き出してしまいました。パンフレットの作成、全国の営業への展開等々。営業担当は販売代理店への働きかけを含め、戦術を駆使して活発に動きました。

 しかし、結果は予想通り惨憺たるものだったのです。販売代理店は一応話を聞いたものの、やはりそれまで自社で取り扱ってきた製品を乗り換えるまでは至りませんでした。数百セット販売する計画に対し、片手ほども売れなかったと聞きました。

 最初の戦略が的を外していると、いくら現場が一所懸命頑張っても無駄骨に終わってしまうという典型的な事例として印象に残っています。無駄に終わるどころか、そこで費やした時間を他のことに使えなかっただけマイナスだったでしょう。

 組織を率いる者は、客観的にどこに向かうのかゴールを正しく定めないと、組織を迷走させてしまうということを、肝に銘じる必要があります。

 最新の提言を、メールマガジン(無料)で配信しています。是非ご登録ください。

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。