社長の誤算──“ダメ課長”が劇的成長を遂げるまで
「Kみたいにさせるな」「あのK課長に似ているんじゃないか?」
ある企業の課長、Kさんは、悪い管理職の代名詞のように語られる存在でした。社長や部長からも、そのように言われることが多かったのです。
ただ、このように書くと陰湿な職場環境を想像する方もいるかもしれません。しかし、実際はそうではありませんでした。Kさんは社内で温和な性格と厚い情を持つ人物として知られ、一部の社員から深く慕われていたのです。
一方で、Kさんのマネジメントスタイルは問題を抱えていました。Kさんの指導を受け入れない部下に対しては、放置とも取れる対応をしてしまうことがあり、その結果、成長の機会を逃したり、新天地を求めて退職してしまう社員もいました。
社長は、そんなKさんを長年特別な思いで見守ってきました。創業当初から苦楽を共にし、手足のように働いてくれたKさんには、人としての情があったのでしょう。しかし、会社の成長スピードについていけないKさんを、経営者としてどこか歯がゆく感じているのも明らかでした。
Kさんの葛藤と転機
私がKさんとお話しする機会を得たとき、その人柄にはすぐに感服しました。Kさんはどこまでも部下の将来を真剣に考え、真摯に向き合う姿勢を持っていたのです。
しかし、Kさんは心の奥底で悩みを抱えていました。試行錯誤しても部下たちを掌握できず、心を開かない社員をどう指導してよいのかわからないという悩みです。さらに、自分の指導が部下の能力を伸ばし切れていないことも素直に認め、その責任に苦しんでいました。
「部下の弱点はわかっているのですが、伝えても響かないんです。」
そう語るKさんは、解決の糸口をつかめずにいたのです。
伝える技術から、伝わる技術へ
私はKさんに、マネジメント技術をお伝えしました。それは「何を伝えるか」ではなく、「どう伝わるか」を実践するということです。
最初、Kさんは懐疑的でした。「同じことを何度も伝えてきたのに、今さら変わるとは思えません。」
その反応は自然です。誰しも、自分のやり方がうまくいかないと実感しているときに、同じことを繰り返すよう指示されれば戸惑うものです。
「これは実験です。試してみてほしいのです。」
そう伝えると、Kさんも少しずつ実践に取り組み始めました。
劇的な成果──1人の課長が変えたチーム
1か月後、Kさんから進捗状況を聞いたとき、彼の口から出た言葉は意外なものでした。
「やってくれました。嬉しいことですが、なぜ今までと同じことを言ったのに効果が出たんでしょう?」
さらに2か月後、Kさんの表情は明らかに変わっていました。「2名とも契約数が増えています!」と、喜びと興奮を隠せない様子で報告してくれたのです。
Kさんは自信を取り戻し、残りの社員にも同じ技術を実践することを即座に決断しました。半年が過ぎる頃には、チーム全体の契約数が前年度比130%を超える成果を挙げるまでになっていました。
「嬉しい誤算」が社内を変える
Kさんの成長を最も喜んだのは、社長でした。「長年の努力が報われて、本当に嬉しいです。」と語る姿には、喜びがあふれていました。
Kさんの変貌は社内に新たな波を生み出しました。「自分も挑戦してみよう」と、他の社員たちも積極的に成長を目指すようになったのです。この連鎖反応は組織全体に活気をもたらしました。
なぜ成果が再現されるのか?
このような劇的な変化は、業種や年齢、性別に関係なく再現可能です。その理由は、このマネジメント技術が人間の行動原理に基づいているからです。伝える相手も、実践者も人間である以上、この技術は例外なく効果を発揮します。
未来を切り開くために
組織の一部の社員だけが成果を上げる状態では、持続可能な成長は望めません。組織全体が成果を上げる体制こそが、理想の姿です。
「誤算」には2種類あります。期待を裏切る「つらい誤算」と、期待を超える「嬉しい誤算」。経営者として、多くの嬉しい誤算を生むための一歩を踏み出してみませんか?
Kさんの事例が、あなたの組織変革のヒントになりますように。
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