最適なコンサルティングを今すぐ活用する!

業務デジタル化のハードル? コード体系の要不要問題

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

業務をデジタル化する際、避けて通れないのが各種情報のコード化です。各種…といっても種類が多すぎますのでなかなかピンと来ませんが、例えば販売している商品を考えてみましょう。モノだけではなく役務などのサービスでも考え方は同じですが、販売する商品には必ず名前があり、それをデジタルで管理するためには、商品をそれだと特定するためのコードが必要になります。

ここで、「中小企業あるある」なのですが、商品名が一つに定まっていない時がよくあります。例えば、文房具店で「A社のX」というボールペン一本を例にしても、社員によっては「X」という名前で呼んでいることもあれば、「AのX」と呼んでいる社員もいます。どちらの呼び方をしても社内では通用するので、商品の名前を社内で統一しよう、という機運はなかなか盛り上がりません。おまけにお客様からもいろいろな呼び方をされますが、なんとなく伝わってしまいますね。

ところが、商品をデジタルで管理しよう、という話になった瞬間に、

仕入れ先:A社

商品名:Xボールペン(赤)

といった、正式な仕入れ先名と正式な商品名をデータベースに登録する必要に迫られます。そして、ここにさらに登場するのが「コード」です。

ソフトウェアは、当然ですが商品をデータで管理します。しかし、その商品管理機能で、このボールペンを「Xボールペン(赤)」という商品名で管理するのは非常に非効率です。なぜなら、商品をソフトで検索する際に、入力が大変ですし、似通った名前のものも全部候補として出てきてしまうからです。さらに、ユーザーは意識しないかもしれませんが、ソフトの作りも複雑化し、良いことはありません。しかも、この商品名は、将来他の会社の製品などと重複する危険性がゼロではありません。いえ、同じ会社のものであっても、何かリニューアルし、「新Xボールペン(赤)」という言い方で再発売される可能性もありますね。そのような事態に陥ることを見越して、データベースに商品を登録する際、その商品を必ず一つとして特定できるコードが必要になります。このコードに今回お話をする悩ましい問題があるのです。

今の様にデジタル化がそれほど進んでいなかった時、取り扱う商品が膨大な数に上る会社では、商品にコードを振って、台帳で管理していました。そして、多くの場合そのコードの桁に意味を持たせ、コードだけで商品がどのようなものなのか判別できるように体系化しました。先のボールペンを例にすると以下のような体系です。

最初の2桁:文房具の種類。例えばボールペンであれば02

次の3桁:取引先を示す番号。例えばA社は043

次の4桁:商品を特定するための番号。例えばXボールペン(赤)は0233

次の2桁:将来何かの変更があったときのための、商品バージョン番号。初期は00

このように桁に意味を持たせ「人間が」商品の特定をしやすくする様に工夫しました。先のボールペンでは、

02043023300

となり、全部で11桁の数字です。このようなコード体系にすると、慣れは必要ですがベテランになればなるほど、台帳を見なくてもコードを見ただけで商品が特定でき、特に倉庫や物流の担当者にとってみればとても便利な存在となりました。

そのようなコード体系を持つ会社が業務をデジタル化する場合、この体系を維持したまま商品コードを台帳管理からデジタルデータ管理にすることを考えるのは当然です。体系が完成されていますから、何の議論も必要なくこの体系のままソフトウェア化できます。桁あふれなど起こさなければ特に問題なくそのままデジタル管理に移行できるわけです。

ところが、統一された商品名で商品を呼ぶことができていない企業の場合は問題になります。ソフトエンジニアから「商品コードを決めてください」と言われたら、どうすれば良いのか困ってしまいますね。そのような人の脳裏には、先ほど例示した様な「体系を考える」ことが浮かぶかもしれません。それはそれで正解ではあるのですが、不正解でもあります。それは・・・

紙の台帳で管理した歴史が無い会社にとって、コードの体系化は目的にはならない

からです。確かに台帳しかなく、コードと商品しか無い環境で商品在庫を管理する時、コードが体系化されていた方が一瞬で人間にも解りますので効率的なことは間違いありません。しかし、そもそも体系も台帳も無い会社の場合、デジタル化とコード管理業務は同時にスタートします。従って、台帳の代わりにソフトウェアがありますし、ソフトウェアは画面で商品名ぐらい出すことは可能ですから、どんなコードであってもバーコードなどで読めば一発で判別できます。つまり、体系など不要で、ソフトウェアが自動的に発番する番号で十分なのです。強いて言えば、桁数を決める程度でしょう。

一昔前は、コードを体系化することはデジタル化の一歩、という考え方がはびこっていましたが、どの業務もフルデジタル化される前提であれば、体系など不要で、それよりもデジタルデバイスに簡単にアクセスできる環境の方が重要になります。

コード体系を考えようとするととても複雑で長い議論が必要になることが多いものです。そのような時間はもったいないですね。「コード体系を」というキーワードが出てきたら、是非一回そのような決め事が必要なものか、「そもそも論」で考えてみてください。意外に簡単に結論が出せるかもしれませんよ。

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。