同族会社が事業承継で失敗する2つの理由
事業承継に関する相談で最も多いのが、「現在の幹部達と後継社長との人間関係」の問題です。具体的には、今、現社長を支えている、古参社員達は、この先どのように扱っていけばいのか?というご相談です。
現在の役員や古参の社員には、現社長と共に会社を育ててきた自負があります。また、後継社長のことを子供の頃から知っているケースも多く、後継社長を「一人の経営者」として見るのが、正直言って難しい面があるものです。
最初のうちは、お互い遠慮もあり、表面的には良好に見える関係だったとしても、後継社長が経営者として頭角を表してくると、現役員や古参社員は、頭の中では認めつつも、心情的に受け入れられないといった状況が起きてくるのです。
さらに古参社員の中には、同族役員がいたりするので、さらに厄介です。
現社長としては、役員や古参社員こそ、後継社長を支えてほしいと期待するものです。しかし、古参社員、特に経営の中枢にいる役員には、現社長の引退に合わせて一線を退いてもらうぐらいの気持ちでいる必要があるのです。
なぜなら、そうしないと後継社長が後々、大きな苦労をすることになります。
また、同族会社の場合、もう一つ大きな問題があります。それが「相続」です。親族が役員にいる場合、後継社長と親族で相続問題が発生し、経営の足かせとなるケースは多くあります。
経営に支障が出ることはもちろん、親族間での法的な争いに発展したり、実際に裁判で多くの時間とお金が失われたり、相続税の支払いで後継社長が多額の借金を抱えたりするケースもあります。
このような問題は、同族会社では決して珍しくありません。すべての同族会社が必ず通る揉め事第1位は、紛れもなく「相続」の問題なのです。
しかし、ほとんどの社長が思いの外、楽観的に考えています。
実際に、相続の問題が起こってからでは、手遅れです。その結果、会社がお家騒動により乗っ取られてしまうケースや、相続が原因で経営破綻するケースも多いのです。
だからこそ現社長は、事業承継後、後継社長がスムーズに経営の舵取りができるよう、人材の整理と親族間の相続対策を行うことが、事業承継において最も重要な仕事になります。
金額の大小ではありません。親族間でお金のトラブルが一度起きてしまうと、人間関係修復は、ほぼ不可能になりますす。
事業承継をした結果、身内の仲が悪くなったという事実は、後継社長にとって、かなりの精神的なストレスになります。
このような事態を防ぐためにも、現社長が責任を持って、社内外の問題に対する準備を整えることが重要です。
基本的な方針として、自社株式と事業用不動産といった事業に関連する財産は後継社長に承継させることが大前提になります。その上で、事業に直接関係しない財産は、後継社長以外の相続人に承継させるべきです。
なぜなら、会社経営に必要な財産が後継社長以外の第三者の手に渡れば、事業の継続自体が危うくなります。
ただし、この場合、後継社長の相続税評価額が、他の相続人より高くなる可能性があります。とはいえ、後継社長が引き受ける自社株式と事業用不動産は、事業継続のために後継社長が持たざるを得ないものです。
しかしながら、どうしても表面的に後継社長の財産承継が多く見えてしまうことから、他の親族が「不公平だ」と感じてしまうことがあります。
これを防ぐためには、現社長が事前に家族全員に十分な説明を行い、理解を得ることが重要です。その上で、遺言書などの法的な準備も、しっかり整えておく必要があるのです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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