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さんまの開きになっていませんか?

SPECIAL

プロジェクトメンター(第三者俯瞰支援)の導入を伴うプロジェクト管理の仕組みづくりコンサルタント

株式会社プロジェクトメンターコンサルティング

代表取締役 

プロジェクトメンター(第三者俯瞰支援)の導入を伴うプロジェクト管理の仕組みづくりの専門家。大企業において情報制御システム及び量産製品の設計・開発に携わり、SE及びPMとして約25年にわたりプロジェクト運営・管理を経験。
システムは列車の運行管理、河川管理、ダム制御、衛星画像データ処理、医療分野、セキュリティ分野等幅広く、官公庁案件から民間案件まで性格の違う数々のプロジェクトを成功に導く。関わったプロジェクトは300以上。

今回の提言は、タイトルだけ読んでもどの様な内容なのか想像し難いと思います。これは、私が大手企業に勤めていたときの、伝説的マネージャが残した語録の一つで、「さんまの開きの状態だね」と書き残されていたものから引用したものです。私自身も当初はこれが何を意味するのか分かりませんでした。なぜ”さんま”なのか?”あじ”ではダメなのか?”ほっけ”でもよいのか?

この語録に触れてから約10年後にその伝説的マネージャに直接お聞きする機会がありました。その方は、そんな語録が後進のあいだに受け継がれていることに感慨深げでしたが、このレトリックの意図するところは、「腹の中をすべてオープンにして見せてしまう」ということだそうです。云われてみればその通りなのですが、それがどの様な教訓から来ているのかは補足が必要です。

この伝説的マネージャが残した”伝説”の一つに、私も後から末端のサブリーダとして参画した大プロジェクトでの振る舞いがあります。プロジェクトについて詳細は語れませんが、交通系の情報制御システムとだけ申し上げておきます。

そのプロジェクトは、約3年に渡り常時100人以上の体制で進んだ、交通系インフラを抜本的に進化させる難易度の高いものでしたが、予想通りプロジェクトの前半は非常に難航し、遅延を重ね、企業経営を揺るがしかねない程の状況となりました。その当時既に経営幹部の一翼を担っていたそのマネージャは、自ら現場に乗り出し、数々の対策を行って最終的には無事プロジェクトを収束させたのですが、その中で語り継がれるエピソードがあります。

プロジェクトが難航し遅れが目立つ様になってくると、発注元の顧客企業も発注先(O社としておきます)の報告を聞くだけで任せっぱなしにしておくわけにはいかないという雰囲気になり、O社の開発現場に同床化して常時プロジェクトの進捗状況をチェックさせて欲しいという要求を出してきました。

しかし、プロジェクトを統括することになったその伝説的マネージャは、プロジェクトの現状分析と対策を通じて見直した計画を提示したうえで、「私が責任を持って○○までに終わらせます」と云って断固として顧客からの要求を拒否し、結果的にやり遂げたのです。何たる自信と胆力・・・。プロジェクトのリカバリの過程では、顧客側の仕様決めに遅れや曖昧さがあると、顧客を叱り飛ばすぐらいのことをやりました。

プロジェクトマネージャ(PM)は、プロジェクトが難航し顧客からの介入が強くなると、ややもすると状況をすべて顧客にオープンにしてしまい、プロジェクトのコントロールを手放してしまうケースがあります。PMとしては、それ以降の責任をすべて自分で背負わなくてよく気が楽になりますが、決して責任を果たすことにはなりません。さんまの”開き”とは、その様な状態を戒めるものなのです。

やはりPMであるならば、現実を冷静、客観的に把握し、プロジェクトをゴールまで見通したうえで、メンバや部下を無用な介入から守り、結果を出すという職責を全うしようとして欲しいと思います。私の過去の提言でも、PMは顧客の前に一人で立てる必要があること、PMや管理者が顧客にメンバを差し出してしまわないこと、をお伝えしたことがありますが、同じスタンスを示しています。

さて、”開き”については分かりましたが、なぜ”さんま”なのでしょう。その伝説的マネージャからは、「さんまの一本焼きは美味しいんだけど、決して高級魚ではないんだよな」という返答でした??正直よく分かりませんでしたが、高級魚でなくともプライドを持つべきと私なりに理解しました。

以降、プロジェクトが苦境に立ったとき、顧客対応として私が常に頭に置いておくスタンスとなりました。

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