「売上至上主義」が経営を悪化させる理由
多くの経営者は「売上が全てを解決する」と考えています。これを「売上至上主義」と言います。大切なことなのであえて申し上げると、「売上至上主義」の考え方には、大変な危険が潜んでいます。
もちろん、会社経営において売上は大切です。しかし、売上が増えれば、それに伴って経費も膨んでいきます。仕入コストや人件費が増え、場合によっては、広告宣伝費や設備投資も必要になってくるかもしれません。
「売上至上主義」の考え方で売上だけを追いかけると、利益率が低下し、資金繰りの悪化を招きます。「売上至上主義」が原因で、経営が悪化してしまう会社をたくさん見てきました。
本当に大切なことは、売上ではなく「利益を生み出す仕組み」を作れるかどうか、です。もっと言うと、「お金を増やす仕組み」があるかないか、です。これには、自社の財務を正確に把握し、財務の視点から的確な判断を下す能力が必要となってきます。
社長自らが、売上至上主義から脱却するためには、財務思考を持つこと。財務思考がない限り、社長自らが、無意識のうちに会社を潰してしまうことになるのです。
繰り返しになりますが、経営判断をする際には、常に財務の視点を持つことが重要です。
例えば、新規事業への参入や大型設備への投資を検討する際、以下のような問いを自らに投げかける必要があります。
「この経営判断が、資金繰りにどう影響するのか?」
「借入金の返済計画は、適切だろうか?」
「利益は、今後どのように変化するだろうか?」
「投資回収の見込みは、どのくらいだろうか?」
これらの問いに答えられるようになるには、財務の知識はもちろん、社長自らが自社の財務状況を深く理解することが必要です。
財務の視点を持つことで、短期的な売上増加に惑わされず、長期的な会社の健全性を考慮した意思決定ができるようになります。
また、金融機関との交渉においても、自社の財務状況を正確に説明できることで、より有利な条件での資金調達が可能になります。
さらに、財務を軸にした経営判断は、社員の理解と協力を得るためにも大変重要です。
「なぜこの経営判断をしたのか」を財務の視点から説明することで、社員の納得感が高まり、一丸となって目標に向かって進むことができるのです。
つまり、財務に関する正しい知識があるかないかで、同じ状況への経営判断が大きく異なる場合がある、ということです。
例えば、財務の知識を持っている人が「危険」と判断する決断があったとします。ですが、財務の知識がなければ、何の違和感を持つことなく「OK」と判断してしまいます。
この判断の差が、時として会社の命運を分けることになるのです。
正しいと思っていた判断が、知らず知らずのうちに経営悪化に繋がっていたら…。これは大変恐ろしい話です。ですが、日本全国で、このような財務の知識がないことによる不幸が起きています。
よく財務の知識がない社長さんは「暗闇の中をさまよっている感覚」と表現します。一方で、財務の正しい知識を持って、正しい経営判断を下せる社長は「やることが明確なので、迷わない」とおっしゃいます。
この差は、経験やスキルではありません。正しい財務の知識を「知っている」か「知らない」か、ただこれだけなのです。
重要なのは、財務を正しく理解し、その上で本質的な課題解決につながる具体的な施策を実行することです。「売上さえ増やせば全てが解決する」という考えは、もはや通用しないのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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