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第2号:高収益・高賃金化を実現していく社長が知るべき、業務価値の大小と仕分け

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライさん、当社もなかなか採用が厳しくて、ここ1年くらい、離職した社員の穴埋めに配送業務に入っているんですよ。」
複数のサービス関連事業を営む社長からの相談です。

聞けばこれは社長に限ったことでなく、専務も常務も配送業務や窓口対応に当たっているのだとか。人手不足で業務が回らない会社が増えているのは周知の事実ですが、その最たる影響がこの社長のもとにも出始めていた、というわけです。

私は社長に更なるご発言を促します。
 「以前は採用募集を掛ければすんなりと社員を雇えたんですがね、最近は募集を掛けても反応は薄いし、言い方は悪いですがロクなのが来ない。お陰で最近は、飲み屋に行って知り合ったヒトに直接リクルートしてますよ(笑)。とりあえず、今は我々が対応して何とか回っていますけれどもね。」

いやはや、社長のこの行動力、毎度このような想像の斜め上を行く話を聞かされ、「私も少しは見習わなければ」とひしひし思うわけですが、事は社長が思う以上に重大です。

何が重大か。採用できないことや、人が集まらないことではありません。それ以上に、「自分たちが対応することで仕事が回ってしまっている」ということが大変大きな問題なのです。理由は明快です。その現場対応時間は「社長業」の付加価値を出していないからです。現場対応中は、現場社員の出している付加価値しか出していません。にも拘らず、報酬は社員給料よりも大きな役員報酬を得ているのです。

1人粗利3千万円、社員年収1千万円の高収益高賃金企業を作るためには、必ず備えなければならない4つの要素と順番があります。
①「事業が付加価値の大きい立地で展開されているか」。立地とは、どんな顧客を対象にどんな商品サービスを提供するか、その展開フィールドを指します。
②「付加価値を持つ商品サービスを生み出し、その価値を防衛しながら市場に伝える仕組み」です。
③「人時付加価値の最大化を実現していく組織構造の構築と業務プロセス改良サイクルの仕組み」です。人時付加価値とは、1人時間当たりに生み出している付加価値額です。
④「価値遵守人材、生産性向上人材、付加価値創出人材を育成する仕組み」です。

この会社は③番「人時付加価値の最大化を実現していく組織構造の構築と業務プロセス改良サイクルの仕組み」が殆ど整っていない状態になります。これを確かめるべく、社長に質問をします。
「組織図と、主要な業務についてのマニュアルとチェックリストを見せて頂けますか?」すると、
「組織図はあるが、他はどれもない。」

そこで組織図を拝見したところ、図表はあるものの各部門・階層に求められる役割や成果について記述された書類はありません。これは、各部門や階層での「仕事の種類・難易度・標準作業・標準時間」が分からない状態ということです。仕事がその価値の大きさや難易度ごとに区分けされておらず十把一絡げで部署に与えられており、ベテランも新人も多くの業務を我のやり方でやっているのです。

業務は大きく2つに分類されます。
 1つは「繰り返し業務」。手順がほぼ決まっており、手順通りにこなすことで成果も一定になる業務です。
 もう1つは「判断業務」。判断業務は手順の中に多くの条件分岐があります。また、考え方や物事の捉え方によって判断が変わります。
 それぞれの業務の中でも難易度がありますので、単純な2分類で分ければいいということではありません。しかし押さえておくべきことは、判断業務は物事の方向性を決めたり顧客の要望の実現に関わってくる業務であることから付加価値が高い業務になる、ということです。

少し考えれば当たり前なことを申し上げているわけですが、実際に判断業務と繰り返し業務を仕分けして、その業務価値に応じたスタッフ配置をしている会社は極めて少ないというのが現実です。しかし高収益高賃金企業を目指すならば、組織全体がこのような考えを持つようにもっていく必要があります。

仕事を分解すると、難易度に応じた階層を形成することができます。業務を軸にして組織を分業するのです。単純な繰り返し作業は最下層にまとめ、高度な業務は中階層に、判断を伴う業務は上階層に仕訳します。このように業務の内容に応じて組織を分業すると、それぞれの階層に見合った人をアサインすることができます。

業務分業されていない場合では、ベテランも新人も業務の付加価値に関係なく担当しています。そのためベテランが付加価値の低い業務を担当したり、新人が付加価値の高い業務をやろうとしてミスや時間ロスを発生させます。

特に、ベテランが付加価値の低い業務を担当しているというのは、生産性の面から言えば絶対にやってはいけないことなのです。なぜなら優秀な人間ほど賃金が高い、つまり投入資源が大きく、付加価値の高い業務時間の絶対量が減れば、会社全体の付加価値まで減ってしまうからです。

業務分業が進むと、付加価値を出せる人材(賃金も高い人材)は付加価値の大きな業務に時間を費やすことができ、人時付加価値(1人時間当たり付加価値額)が増加します。これが利益と給料の原資になります。また新人のような人材でも、下階層の業務であればすぐに取り掛かることができて、繰り返し業務に当たることで早期習得に繋がり、付加価値人材へのステップを着実に上がっていけるようになります。

また、これによって人材調達の手段が多様化します。分業が進んでいくと業務の付加価値に合った人材が専業していくことになるため無駄がなくなっていきます。そのため今の人員数でスタッフ配置を変えるだけで回せてしまうことも多いのです。また、単純な繰り返し作業の塊を作るということは、誰にでも出来る仕事をつくるということです。当然、スタッフを採用するにしても仕事の難易度が低い分、間口を広げることができます。

社長は、自分自身が付加価値の小さい仕事に時間を費やしていることに気が付いたようです。
「私には私にしか出せない付加価値を出す社長業があり、それに集中することが大事ですね。それから現場仕事にも大小様々な付加価値を持った業務があるから、それをしっかり仕分けしておけば、適材適所に人を配置して効率的に回せそうですね。」

その後社長は、私から提示した課題をこなし、最下層業務を部門横断的にまとめて担当を割り当てられました。完全に社長業に専念できるまで、仕組み作りは続きます。

著:白井康嗣

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