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新政権とヘルスケアビジネスの今後の動向

SPECIAL

ヘルスケアビジネス参入コンサルタント

株式会社ヘルスケアビジネス総合研究所

代表取締役 

ヘルスケアビジネス専門のドクター資格を持つ異色のコンサルタント。東北大学医学部医学科を卒業後、医療技術・ソリューションの発展に尽力することを決意。ジャパンバイオデザイン・フェローシッププログラム(スタンフォード大学発のシリコンバレー流医療機器イノベーションプログラム)参加などを経て、主にヘルスケア市場参入の支援機関、株式会社ヘルスケアビジネス総合研究所を創設。
これまで東証プライム上場企業を含む40社以上に対して新規事業・開発の指導および支援経験を持ち、ヘルスケア事業部の立ち上げも支援。2016年から2023年までのバイオデザインプログラム(年に1チーム最大4名)で関わった起業案件は5社、知財出願は4件、助成金獲得6件に達し、0→1の指導における高い再現性に定評がある。

こんにちは。ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。今回は、石破新総理の社会保障制度に関する最近の発言と、それが日本のヘルスケアビジネスに与える可能性のある影響について述べてみたいと思います。

現在の社会保障制度の課題

石破新総理は、党首選の際、政策討論会で現状の社会保障制度について興味深い発言をしました。「年代で差があるが、国民の実感としては高負担・中福祉と思っている」と述べたそうです。この発言は、日本の社会保障制度が直面している課題を端的に表現したものと言えるでしょう。

背景には、日本の社会保障制度が抱える構造的な問題があります。少子高齢化が進む中、現役世代の負担が増大し続けている一方で、受けられるサービスの質や量が必ずしもそれに見合っていないという実感が広がっているのです。

石破新総理の発言は、特に現役世代を中心に負担減を図りたいという意識を示唆しています。これは、社会保障制度の持続可能性を高めるためにも重要な視点です。現役世代の負担が過度に重くなれば、経済活動の停滞や少子化のさらなる進行につながりかねません。

今後の制度改革の予測

では、この発言を受けて、今後どのような医療制度改革が行われる可能性があるでしょうか。

ここから先は私見になりますが、現役世代の保険料負担の軽減は現実的ではないでしょう。というのも、単純に負担を減らすだけでは、医療サービスの質の低下を招く恐れがあるからです。

そこで医療サービスの効率化が重視されるのが、これからの時代の特徴になると考えています。例えばAIやIoTなどの先端技術を活用して、診断や治療の精度を上げつつ、コストを抑えるなどのソリューションが今よりも普及するでしょう。例えば、AIを用いた画像診断支援システムの導入、IoTデバイスを活用した遠隔医療の拡充などです。

混合診療の可能性

そしてもう1つの可能性として混合診療の拡大があります。混合診療とは、公的医療保険でカバーされる一般の保険診療と、保険外の自由診療を同時に受けられるようにする制度です。現在、日本では原則として混合診療は禁止されていますが、一部の先進医療などで限定的に認められています。石破新総理の「高負担・中福祉」という認識に基づく改革が進めば、この混合診療の範囲が拡大される可能性があります。

混合診療拡大の最大のメリットは、患者の選択肢が広がることです。現在は保険適用外の新しい治療法や薬剤を受けたい場合、その治療にかかる費用全額を自己負担しなければなりません。混合診療が拡大されれば、保険でカバーされる部分は保険を使いながら、先進的な治療も受けられるようになります。これにより、経済的な理由で最新の治療を諦めていた患者さんにも、新たな可能性が開かれることになります。

医療機関にとっても、混合診療の拡大は新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。例えば、最新の医療技術や薬剤を積極的に導入し、他の医療機関との差別化を図ることができます。また、患者のニーズに合わせて、保険診療と自由診療を組み合わせた独自の診療プランを提供することも可能になるでしょう。

製薬企業や医療機器メーカーにとっても、混合診療の拡大は大きなチャンスとなります。現在は保険適用されていない新薬や医療機器でも、混合診療の枠組みで使用される可能性が高まります。これにより、新製品の市場投入がスムーズになり、研究開発投資の回収も早まる可能性があります。

また、混合診療の拡大は医療ツーリズムの促進にもつながる可能性があります。日本の医療従事者の親身な診療態度、そして高度な医療技術と、柔軟な診療体制を組み合わせることで、海外からの患者誘致にもつながると考えます。

一方で、混合診療の拡大には課題もあります。最も懸念されるのは、医療の格差拡大です。経済力のある患者が高度な医療にアクセスしやすくなる一方で、そうでない患者は取り残されるのではないかという懸念があります。また、混合診療の普及により、保険診療の範囲が徐々に縮小されていくのではないかという不安の声もあります。

医療機関にとっても、混合診療の管理や請求事務が複雑化する可能性があります。保険診療と自由診療を明確に区分し、適切に請求する必要があるため、新たなシステムの導入や人員の教育が必要になるかもしれません。

これらの課題に対処するためには、慎重かつ段階的な制度設計が必要です。例えば、混合診療を認める治療法や薬剤の範囲を段階的に拡大していくことや、低所得者向けの助成制度を設けるなどの対策が考えられます。また、混合診療の透明性を確保するため、価格や治療成績の情報公開を義務付けるなどの施策も重要でしょう。

おわりに

このように混合診療の拡大は、日本の医療の質を向上させ、患者の選択肢を広げる可能性を秘めています。しかしその実現には慎重な制度設計が必要であり、かなりの時間を必要とするのではと考えています。そうは言っても、社会保障費の増大は大きな課題になっていますので、これ以上の保険医療の膨大化は厳しい状況です。今回の政権交代が、制度改革と医療・ヘルスケアビジネスの市場拡大へ繋がることを期待しています。

医療関連企業の皆さんには、この変革を新たな価値創造の機会と捉え、患者と社会に貢献する革新的なサービスや製品の開発に取り組んでいただきたいと思います。新政権が誕生したばかりで、今後の業界の行く末を正確に予測することは難しいですが、政権交代をよいキッカケとして、改革が行われる可能性があると考えています。皆さんには経営者としてこの変化を前向きに捉え、積極的に新しい取り組みにチャレンジしていただき、医療現場やご家庭での健康増進に役立つ製品・サービスを届けてほしいと願っています。

このコラムでは医療・ヘルスケアビジネスに関係する情報やノウハウをお送りしています。

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