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オンライン診療の事業機会と普及の課題

SPECIAL

ヘルスケアビジネス参入コンサルタント

株式会社ヘルスケアビジネス総合研究所

代表取締役 

ヘルスケアビジネス専門のドクター資格を持つ異色のコンサルタント。東北大学医学部医学科を卒業後、医療技術・ソリューションの発展に尽力することを決意。ジャパンバイオデザイン・フェローシッププログラム(スタンフォード大学発のシリコンバレー流医療機器イノベーションプログラム)参加などを経て、主にヘルスケア市場参入の支援機関、株式会社ヘルスケアビジネス総合研究所を創設。
これまで東証プライム上場企業を含む40社以上に対して新規事業・開発の指導および支援経験を持ち、ヘルスケア事業部の立ち上げも支援。2016年から2023年までのバイオデザインプログラム(年に1チーム最大4名)で関わった起業案件は5社、知財出願は4件、助成金獲得6件に達し、0→1の指導における高い再現性に定評がある。

皆さん、こんにちは。ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。

最近、ある新聞記事で介護現場における遠隔診療キットの活用について目にしました。

元記事はこちら:

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC31CV30R30C24A1000000/

・オンライン診療キットは有用

SOMPOホールディングス(HD)の事業子会社が提供するオンライン診療キット「タイトケア」の導入事例が紹介されていました。この記事を読んで、医師として日頃から感じていることを共有したいと思います。

記事によると、このキットは単なるビデオ通話ではなく、聴診音や患部画像のデータも医師と共有できるそうです。導入施設では職員が入居者の外来受診に付き添う時間が3割減ったとのことです。これは、介護の現場から病院に相談するハードルが高い日本においては、非常に役立つ良い製品だと考えます。

私は日々の診療の中で、介護施設との連携の難しさを実感しています。例えば、夜間に介護施設から具合の悪い方がいると電話で相談を受けることがあります。しかし、電話だけでは患者さんの状態がほとんど分からないため、「大丈夫です」とは言い切れません。結果的に、「念のため病院へ搬送してください」ということになりがちです。もちろん、大きな病気のこともありますが、大丈夫だったということも多いのが現状です。

こういった製品・サービスを活用すれば、その手間が大幅に改善し、医療・介護の質が向上する可能性があります。遠隔で患者さんの状態をより正確に把握できれば、不要な搬送を減らすことができ、患者さんの負担も軽減できるでしょう。

・マネタイズの課題もある

しかし、課題もあります。記事にもあったように、質の向上に対して、誰がお金を払うのかという問題です。現状では、病院はオンラインでやり取りを行ったとしても、診療報酬が発生しないので丸々赤字になってしまいます。医師の働き方改革の点でも逆風になるため、実証試験はできても、なかなか広まっていないのが現状です。

この問題の解決策として、私は2つの方向性があると考えています。1つは医療保険の仕組みを変えることです。遠隔診療にも適切な診療報酬を設定することで、病院側のインセンティブを高めることができるでしょう。

もう1つは、相談に伴う費用のやり取りを含めてビジネスにしてしまうことです。例えば相談料等の名目として、病院に支払えるようなビジネスの仕組みが作れれば、今の医療保険制度を大きく変えなくてもオンライン診療は普及するかもしれません。

テクノロジーの進歩は目覚ましいものがあります。しかし、それを有効活用するためには、制度やビジネスモデルの革新も同時に必要です。遠隔診療キットは、医療と介護の質を向上させる大きな可能性を秘めています。この可能性を現実のものとするために、我々医療従事者も、より柔軟な発想と行動力を持つべきではないでしょうか。

このコラムでは医療・ヘルスケアビジネスに関係する情報やノウハウをお送りしています。

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