信頼をカタチにして会社経営に活かす
信頼を漠然と捉えるのではなく、売れる・対価に変わる「カタチ」にすることで、競合との差別化に活用していくことができます。
当社では一貫して「信頼を対価に変える手法」を追求しています。それはつまり、「信頼」という目に見えないものを、買い手に具体的に認識・理解して頂くことで、実際に提供する製品やサービスの分に加えて追加の対価を得られるようにすることです。
もちろん、「信頼」は人間が抱く感情のひとつですから、目には見えません。しかし、そこに対価を払ってもらうためには、実体があるかのようにする、時には実際にモノにすることで、確かに価値があると買い手からより強く感じてもらうようにする必要があります。これを当社では「信頼をカタチにする」と表現しています。
それではなぜ、信頼をカタチにして可視化しすると、対価につながるのでしょうか。
その理由は2つあり、1つは「確固たる信頼というものそれ自体が買い手にとって価値になる」から、もう1つは「売り手側に信頼があることで元々の製品・サービスの価値が正しく提供されると思える」からです。
信頼はうまくカタチにして買い手に認識されれば、価値そのものと、それを提供する確からしさの両方を高めるので、価値の期待値を上昇させるのです。(詳細は過去のコラムで説明しています)
■信頼をカタチにするステップ
それでは、信頼をカタチにするにはどうするか。会社や商材により違いは出てきますが、ある程度共通のステップが存在しますので、順番にみていきましょう。
① 何に対する”信頼”かを明確にする
何かを購入しようとする際に買い手が対価を支払うのは、それによって重要な価値が本当に得られそうだと思うからです。つまり、製品・サービスが自身もしくは自社にとってよいものだと感じられ、それを提供する売り手も一定程度信頼できそうだと感じるからこそ、買い手は対価を支払うのです。
信頼をカタチにしようとするとき、その価値自体が買い手のニーズに合ったものであること、そしてそれが確実に提供されること、この2点を明確に示したものであることが重要です。
例えば、自動車部品のメーカーが信頼を訴求しようとするとき、まず大切なのは性能要件を満たすこと(そのための技術力・現場力があること)や、納期遵守・不良品の少なさといった供給面での確実性を外すことはできないでしょう。
そのため、多くの場合、まず着手すべきは信頼を通じて担保すべき価値を明確にすることです。この価値が、主要な買い手が本当に求めるものであるかどうか、精査する必要があります。
② 信頼してもらうべき相手を明確にする
自社の顧客となりうる買い手すべてに、少ない労力・コストで信頼を訴求できるならば、それに越したことはありません。しかし、買い手が常に均質であるとは限らず、「良い顧客とそうでない顧客」が存在するケースもあるでしょう。
このとき、ビジネスの優先順位としては当然「良い顧客」を信頼を通じて獲得し、つなぎとめていくべきです。一般的には、「価格」ではなく「価値」を重視してくれるのが良い顧客ですから、信頼という付加価値を訴求する対象としても相性がよいといえます。
また、「信頼」には価値の提供を確実性を高く感じさせる効果もありますから、買い手がより高額の対価を支払うものこそ、信頼を訴求していく必要があります。製品・サービスが価格帯別になっている場合、高額のラインを中心に「信頼」を構築・訴求していくのが有効です。これは多くの方の感覚にも合致していることでしょう。
③ 信頼を可視化して提供する
どのような信頼を誰に提供するかが明確になれば、その信頼を実際にカタチにする段階に着手します。何を信頼の拠り所とするかはケースバイケースですが、製品の場合であれば原材料の出所や生産プロセス・流通など、製品が価値を付与されてきた過程の中で、重要な部分の確からしさを証明するというのが1つの考え方です。
ここでいう重要な部分とは、買い手にとっての魅力を形成する上で必要不可欠であり、他社との違いにつながるものです。作業の実施記録や実績に加え、職人の技術力など、人に依存する場合もあるでしょう。
これらの優れた部分を訴求要素のひとつとして活用しつつ、それが嘘偽りなく正しいことを示していくことになります。
具体的な手段としては、まずは個々の製品やサービスが、確かに謳い文句通りの価値を備えていることを、作業や訓練、他の顧客への提供実績など、過去の記録を用いて訴求します。 このときの記録の方法としては、自社内の帳票などに残すことが最低限となりますし、効率化・ミス防止の観点から自動化を目指すのもよいでしょう。
また、記録された実績が正しいことを証明・訴求するうえでは、自社がそのように宣言するだけに留める場合もありますし、第三者の目を入れたり、ブロックチェーンなどのツールを使うことが有効な場合もあるはずです。買い手の意思決定における「信頼」の寄与度に応じて、記録と証明のそれぞれにつき、確度の高さとコストの視点で最適なプロセスをデザインするのです。
例えば、丁寧な施工品質を謳っている工務店があるとしましょう。工程ごとに作業記録をつけ、かつ現場での第三者の監査も受け入れることで、自社が訴求する品質を確かに実施したという証明書を提示できるようにしていれば、記録と証明を作業工程のなかにうまく織り込めている、ということになります。
■他社に先駆けた”信頼”の構築・訴求を
以上の3つのプロセスを経ることにより、「信頼」を適切な買い手に、目に見えるカタチとして提供する準備が整います。ここまでできれば、Webサイトや販促物などで信憑性の高い訴求材料として使えますし、証明書を作成して添付するなど実際にモノとして提供することも可能になります。
「信頼」の作りこみや訴求に本当に力を入れている企業は、まだそれほど多くはありません。信頼をカタチにすることは、他社と差別化するための手段のひとつとして有効であるはずです。
まずは具体的に「信頼」を定義し、日々のオペレーションを通じて作り上げていく体制を構築することから始めてみてはいかがでしょうか。
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