未来を見る力
経営者にとって、未来を語ることは必要不可欠な能力です。顧客に対して、そして社員に対して、自らが信じる未来をどれだけ説得的に語れるかは、経営者の最も根源的な資質を表す要素だとさえ言えます。
経営者がその未来を語るとき、その能力には二つの要素があります。一つは、未来をビジョンとして語れる能力、つまり可視化の力です。様々な角度からあるべき未来を語れる構想力みたいな要素で、雄弁な経営者に限らず普段より一段声が大きくなるような部分、というとお分かりいただけるかなと思います。
今一つは未来を信じ抜く力、つまり覚悟の力です。腹の底から信じた未来に賭ける、とでもいう力で、むしろ黙して語らず、というくらいの振る舞いにその覚悟がにじみ出ると言った現れ方が典型かもしれません。
雄弁さと寡黙さの同居、みたいな組み合わせですが、欲張りなことを申し上げれば、特に企業経営者にはこの二つが確実に求められるのです。
最近の事例で言えば、再生可能エネルギーや電気自動車の例が挙げられると思います。
前者はFIT制度の導入に伴って雨後の筍のように事業者が増えましたが、FIT終了に伴い、老朽化した施設の撤去や太陽光パネルのリサイクルをどうするかという新たな社会課題が具現化しています。
電気自動車もこれに似たところがあり、テスラが好調だった頃には世界中で電気自動車の製造を目指すスタートアップが設立されたと思います。それが今は、中国のEVメーカーによる過剰生産に加えてウクライナ戦争の影響などもあって、世界中のメーカーが原価割れに苦しみ、少なくない数のメーカーが100%EV化の目標を見直したり先送りしたりしています。
あくまで結果論かもしれませんが、HV、PHV、EV、FCVなどのミックスで長期戦略を考えたトヨタには先見の明があったということなのでしょう。
ここで重要なのは、単なる当たった外れたではなく、どれだけ社内外の意見を統一して未来対策を立てられるか、そしてどれだけ変化に対してレジリアントな事業体制を構築できるか、ということなのです。
社内統一ができれば確実に強く・早く立ち回ることができるのと同じく、寡黙さがもたらす変化へのレジリエンスは下役の社員にとっても安心して仕事に臨めるために最も重要な変数だと言えます。
雄弁に未来を語り、寡黙にそれを信じ抜く。経営者としての振る舞いは簡単なものではありません。それでも社員に納得してもらい、機先を制した一手を打ちたいと思うなら、ぜひとも経営者としての未来予測に目配りをしてみてください。
未来を真剣に見極めようとする経営者を、当社は全力で応援しています。
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