純粋な心と疑う心
「南澤さん、順調に売上が伸びているのですが、何かひっかかるのです...」ーーーこれは、とある飲食店の経営者の一言でした。
売上が順調に伸びているということであれば、喜ばしい限りです。しかし、この経営者は、なぜか胸の中に違和感を抱いていました。
その理由は、直近1年間は売り上げが横ばいであり、特に目立った施策を打っていないのにもかかわらず、突然数週間前から売り上げが伸び始めたことでした。
このような場合、顧客のニーズ、需要の増加、口コミ拡散、競合店舗の動向など、さまざまな要因が考えられます。売上が増加している現実に喜ぶ一方で、冷静に状況を分析することが求められます。
「純粋な心」で現実をゼロベース捉え、違和感を見逃さないことは経営において非常に重要です。そして、その違和感を無視せず、「疑う心」を持って原因を徹底的に探る必要があります。それが、真実を追求することにつながります。
この経営者は、顧客へのヒアリングやアンケートを通じて原因を探りました。その結果、近隣の競合店舗がリニューアルのため店舗を一時閉鎖しており、その顧客が流れてきていることが判明しました。これが、経営者の抱いた違和感の原因であり、情報収集の不足があったことも明らかになりました。
流入してきた顧客を自社の顧客にできれば大きなチャンスですが、単に代替店舗として利用されているだけであれば、いずれ売上は元に戻ってしまいます。
この経営者は、急いで次回使用できるクーポン券を作成し、リピートを促す施策を講じました。そして、新メニュー開発やサービス改善、接客の見直しなども行い、競合店舗のリニューアル後に顧客を奪われることを防ぎました。
このような事象は、多かれ少なかれどの企業にも起こり得ます。自社の意図とは関係なく、売上が自然に増加することもあります。
しかし、その背後にある原因を見過ごさず、状況をゼロベースで捉え、疑いの目で分析することが重要です。
売上が急に伸びること自体がリスクであり、その原因を突き止めておかなければ、予期せぬリスクにさらされる可能性があります。
先ほどのケースで、もし経営者が違和感を無視していたら、一時的な売上増加の原因を理解できず、元に戻った際には何も手を打てなかったことでしょう。
さらに、競合店舗が再開した際に、自社の顧客を奪われるリスクも高まっていたはずです。今回は、状況を的確に把握し、適切な対策を講じることで、売上を維持しつつ、新たな顧客を獲得することに成功しました。
同様に、小売店での急な売上増加が競合店の閉店によるものだった事例や、サービス業での突然の顧客増加が何かのイベントやキャンペーンと連動していた事例など、同じようなことが起こり得ます。
そして、起きている事象に対して、過去の経験、データを重視ばかりしていると、判断を誤ることもあります。
純粋な心で、ゼロベースでいったん考えることが、そのようなことを防ぎます。営業や販売の現場でも、同様の考え方が求められます。
自分の実績が突然伸びたが、その理由がわからないというスタッフは多くいます。それは逆に、実績が落ちた際にも同じことが言えます。変化を感じたときに、純粋な心と疑う心を持って対応することで、さらなる成長と成果が期待できます。
私自身も、営業時代に、理由もわからず突然売れ始めたというような経験を多くしてきました。逆もしかりです。
そのような時に、正解か不正解かはともかく、原因を探ろうとしたことが自分自身の成長につながったと自負しています。それが持続的な成果に結びついていました。
特にリーダーシップを発揮するポジションにいる人々は、これらの視点を持つことで、部下やチーム全体に対しても適切な指導ができるようになります。また、この考え方は、経営判断の精度を高めるだけでなく、企業全体の成長にも寄与します。
何か変化が起きた時に、純粋な心でその事象を捉えること、一方で、疑いの心を持ち原因や理由を考えることが重要なのです。それが、真実を追求することにつながります。
このような考え方を持てる営業・販売スタッフは、環境変化に対応しながら自らを成長させて実績を積み重ねていけると言えます。
人は予期せぬ変化に対して不安や疑念を抱きやすいものです。その感情を無視するのではなく、ビジネスにおいてどのように活用するかが重要です
貴社では、売上の急増や急減が発生した場合、どのように対応していますか?このような状況に直面したとき、どのような手順で原因を探りますか?
そのような時に適切な対応ができる営業・販売スタッフを育成する仕組みがありますか?
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