情報システム担当役員「CIO」の要・不要とは?
大手食品メーカーの基幹システム入れ替えプロジェクトでトラブルが発生し、人気商品の出荷が長らく停止していました。その停止期間は数ヶ月にも及び、会社の業績にも大きな悪影響を及ぼす規模となってしまいました。詳細については得られる情報が乏しく、なかなか全体像が見えてきませんが、新システムを立ち上げた際のトラブルの模様です。実在庫数がシステムで管理している数字と異なってしまった、という一言が公開されている全てとも言えるものです。
そもそも、基幹システムの入れ替えや刷新の際には、ソフトウェアの入れ替えとは別に、今回の在庫数といった数字も含めて「現に刻一刻と動いている業務情報をどのように旧システムから新システムに移行させるか?」が、切り替え作業の中でも極めて重要な位置づけになります。正確に移行させる必要がありますので、移行のためだけに使うソフトウェアを開発することもありますし、ソフトで自動的に移行できないものについては、人海戦術で対応する場合もあります。場合によっては、移行用のデータを準備するために、アルバイトや人材派遣を新たに入れる、ということもあります。こういった各種対策を実施したとしても、業務を止めずに移行するということが難しい場合もあります。
それぐらい、データの移行作業は大変ですし、神経をすり減らすものです。しかしいくら準備しても不測の事態が発生するリスクは絶対に残ります。これは、「業務は生き物である」以上、受け入れてコントロールしなければならないリスクです。このリスクがどの程度のものなのか、なかなか客観的な数字で語ることができないため、非常に難しい問題です。この部分について直感的に危険性を理解できる人が社内にいない場合、経営層はそのリスクを把握できず、リスクが顕在化した時にはじめてまずいことが起きたことを理解することになってしまいます。
この「社内で危険性を理解し、経営的な観点で考察し、経営がとるべきアクションを想定する人」が情報システム担当役員(以下CIO)なのです。CIOは、このようなシステム刷新の時のリスク把握の役割もありますし、日常では「会社のデジタル化を業績向上のために使うための方針作り」といった、戦略的な業務も司ります。しかし、システム切り替えなどの重要で慎重な対応を求められ、リスクもコントロールしなければならない場面では、その司令塔としての役割が非常に重要となります。
冒頭述べた大手食品メーカーの役員の話では、どうもCIO職を設置していなかったらしく、システム切り替えにおいて発生する可能性がある障害のリスクを拾い上げたり、発生の可能性をコントロールしたりするなどの、経営視点での対策が十分にできていなかったのだろうと推測できます。
日本情報システム・ユーザー協会によると・・・
CIO職を置く日本企業は23年度時点で全体の16%にとどまっている
というデータも公表されています。さて、皆さんの会社ではいかがでしょうか?
CIO職は、経営に対する危機も明確化し、それに対する経営アクションも計画する責任者です。デジタル化を考える会社であれば必須の存在ですが、育成するためにはそこそこの時間がかかります。是非平時から取り組んでおくべきことなのです。
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