生成AIはシステム導入者側の作業をどう変えるか?
生成AIのビジネスへの応用事例が劇的に増えています。その動きは、企業のシステム導入にも応用される動きを見せており注目に値します。例えば受発注の業務をシステム化する場合、今までは当然の様にITベンダーと導入者側で「要件定義」作業を進めなければなりませんでした。これによって、必要な機能を洗い出し、システム化する範囲を定めることができ、予算や納期も確定できます。逆に言えば、この作業がおろそかになってしまったり不足や漏れが発生した場合、後々の段階で大きな手戻りや予算オーバーなどが発生するリスクがあるわけです。
当然、そのリスクを避けるため、要件定義作業は慎重に進めねばならず、それが故に業務を回している担当者の負担も大きいですし、漏れや不足のリスクをどうやってもゼロにはできないので、担当者の精神的な負担も大きいものです。皮肉なことですが、会社のデジタル化のための作業なのに、やっていることは人の負担が極めて高いアナログ仕事というわけです。ITベンダーにとっても、要件定義段階でめどを外してしまうと、後々トラブルに発展することもありますので、かなり慎重に進めざるを得ず、そのため要件定義の費用は比較的高額になってしまいがちでした。さらに、「やってみないことには規模がわからない」という性格の仕事なので、請負仕事ではなくかかった工数(実績)を都度精算してゆく準委任契約方式になることが一般的です。つまり、作業を始めてみて規模が当初見込みよりも大きかった場合、そのリスクは導入者側が全部負担することになる、という半ば不公平なビジネス慣習だったわけです。
そんな非効率極まりない仕事がまかり通ってきたところへ、生成AIの登場です。一見、どうやって生成AIを要件定義作業に参加させるか、わかりにくさ満載ですが、少し試してみるとそのポテンシャルを感じることができます。仮想の業務フローではありますが、私がChatGPT4oを使って要件定義させてみた結果(抜粋)を図に示します。
どう思われますか?まだ少しまとめ方が粗いと思いますが、それらしい体裁でまとめてくれていますね。AIには特に細かく指示していないのに、必要機能もざっと提案してくれています。現段階の汎用型生成AIであっても、要件定義にはある程度使えそうです。さらに、生成AIはそもそも「人間が書いた文章をうまく整理するのがお上手」と言えますので、AIが書いた要件定義書に人間が手を入れ、それをうまく整理するために再度AIを使って添削する」という使い方もアリです。
ITベンダーが用意する要件定義AIはおそらくかなり高い金額でのサービスになると予想していますので、直ちに中小企業が手軽に使えるものにはならないでしょう。しかし、汎用のAIを使ってもある程度のレベルには到達しそうなので、中小企業にとっては期待できそうな使い方です。是非皆さんも試してみて、自社の業務におけるシステム要件の整理などに使ってみていただきたいと思います。いますぐシステム化する方向ではない、将来に備えて準備しておくことが得策ですね。
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