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AIと「失われた30年」の心配な関係

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

「失われた30年」という言葉を良く聞きます。1990年代はじめのバブル崩壊後に日本経済が陥っている長期間の不景気状態、という解釈だと思いますが、これと同じ文脈で「失われた20年」という言葉も10年ほど前に使われていました。要するに、悪い状態であることは認識されていながら、この10年間何も解決されてこなかったということになります。悪い状態が10年も放置されたとは、にわかには信じられませんね。そしてその主要因は、少子高齢化とも、デフレに伴う投資意欲の減退とも言われ様々ではありますが、「デジタル化の遅れ」も大きな原因であることも統一見解だと思います。

さて、そのデジタル化の遅れが全く解消できなかった理由を最近のAIの潮流とともに発生している「気になる事象」と絡めて考えてみると、非常に似通っていると思われます。その事象とは・・・

AIに対して無関心な人、わざと敬遠している人がいる

ということです。AIの活用は停滞している日本企業のデジタル化を大きく飛躍させる可能性がある、という意見を言っている経済学者の話を読んだことがありますが、逆に言えばAIの活用が止まったら「失われた40年」になってしまうのではないでしょうか?非常に心配になります。このような方々の言い分は以下のようなものでしょう。

・AIは自分には関係無い

・AIは未だ未完成な技術で、実用のレベルではない

・AIは自分の仕事を奪うと言われている敵である

・AI?良くわからない雲を掴むようなものだ

・・・・

これらに共通して言えるのは、「事の本質を理解していない」と思われることです。AIが既存の産業を大きく変えてしまうことは、誰も変えようのないほぼ確実な将来の姿のはずです。それに対して理解不足ゆえに避けて通ってしまうことは、ボヤを目撃しているにも関わらず目をそらして知らんふりをしている、と言っても過言では無いと思います。

「AI」という単語を「デジタル化技術」とか「IT」に書き換えると、それでも十分意味が通ります。当時これらの技術がこれからの産業構造や競争軸を変えると呼ばれていましたが、多くの日本企業はそれに真正面から取り組むことはありませんでした。それ以外の強みが数多く残っていたからかもしれませんが、概ね先に上げた様に「事の本質を理解していなかった」がために無関心が過ぎたのだと思われます。

日本が失われた20年、30年を過ごしている間、諸外国の競合企業は様々な分野でデジタル技術の利活用に取り組み、IT大手はフリーミアムやサブスク事業で財を成し、産業界は業務のデジタル化と製品のデジタル改革を地道に積み上げ、結果的に30年前にはGDPで日本よりも大きく下回っていた国が今や追い越す勢いに至りました。彼らは、不完全だったかもしれないデジタルの技術を応用する方法を考え、それを採用しつつ欠点を補う技術を磨き改善を続けました。一方で日本では、デジタル化を「ここがだめ、あそこが足りない」とデメリットを探し、せっかくの機運を潰してきたのです。その結果、デジタル活用のPDCAを回すことに至らず、地道に回し続けた企業の先行を許した、という格好です。

たとえ今すぐAIを応用できなくとも、AIを使って何ができるのかを常に考え続け、実際に触って学びつつ、機能や正確性の進化を把握し続けることが重要です。そして、小さくとも、不完全であっても果敢にAIを採用できる企画アイディアを探し出し実行することが肝要です。会社内には、きっとアイディアマンと呼ばれる人たちがいるはずです。そのような人たちにAIを触らせる時間を与え、自社の業務や商品に適用したらどうなるか、フリーのディスカッションを絶やさず、必要なリソースと権限を渡すことこそが、失われた40年にならない重要な鍵なのではないかと強く思います。

遊ぶことから始めるのも一つの有効な手段です。AI関連のサービスは雨後の筍の様に次から次へと競って出始めていますので、それを参考にしつつ、国内のIT産業には日本国内サービスを果敢に世に出して欲しいですし産業界はそれを、リスクを制御しつつ採用する、という舵取りが必要だと思います。

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