コンサルタントが書いた本が役に立たない本当の理由
本を書くという行為は、多分、皆さんが考えている以上に大変なことです。書いたことのある人なら、その難しさは分かっているでしょう。しかし、世の中のほとんどの人は書いたことがないのですから、そのような方たちに分かってもらうのは至難の業です。
よくスポーツ選手とか芸能人とか、評論家、芸術家のような方が本を出版していますが、多くは自分で書いているのではなくゴーストライターが書いています。ゴーストライターが何時間か「著者」にインタビューをして、その内容を本に仕立てているのです。
ゴーストライターが悪いと言っているわけではありません。しかし、著者の言いたいことが本当に本に表現できているか疑問です。またゴーストライターが勝手に創作している可能性もあります。この辺の情報は、一般的に世の中に出てこないでしょうから、ある程度推測です(ただし、ゴーストライターの実情を書いた本が出版されています)。
当社は本を4冊出版しています。そのうち2冊は総ページ数74なので小冊子ともいえるのですが、50ページ以上を「本」と呼びますので、正確に言えば4冊の出版です。
これらはすべて自分自身で書いています。ゴーストライターは使っていません。すべて自分自身で企画し、テーマ、タイトル、内容の章立てから小見出しまで、自身の手によるものです。
コンサルタントの中には、自分で書かずにゴーストライターに書いてもらっている人もいます。ただし当社の知り合いには、そのような人はいません。知りうる限りでは、すべて本人が書いています。そんなコンサルタント仲間の一人から、こんな話をされました。
「細井さん、自分が書いた本のAmazonレビューを見ていたんですが、全く当て外れなコメントが書いてあって本当にがっかりですよ」
そのレビューの内容というのは「ノウハウ本として役に立たず」というもの。もちろん、ビジネス書ですから技術的なノウハウを書くことはあります。しかし、コンサルタントが技術的なノウハウを書いたとして、読者の方がそれを読んで実践できる可能性は、限りなくゼロと言わざるを得ません。
したがって、書く内容は技術的なノウハウよりも「知恵」「考え方」「哲学」「思考」「実例」といったものです。そちらの方が、本物の経営者にとっては役に立つことを知っているからです。
本で技術的なノウハウを知りたいというのであれば、その方は経営者ではなく、雇われの社員の可能性が高いです。社員は自分の仕事に役立つ「技術」「方法」「テクニック」を知りたがります。それらはマネをすることで、すぐに役に立つからです。
経営者であれば、自身の経営に役立つ考え方とか知恵とか実例を知りたがります。そこから自分の経営のヒントにしようとします。経営のやり方に正解はないし、自分自身の経営を作り上げたいと思っているからです。
要するに、社員は他人のマネをして自分の仕事をうまくやろうとし、経営者は自分の経営のヒントになるものを探してビジネスを大きくしようとします。ここが社員と経営者の大きな違いです。
当社を含めて我々のようなダイナミックコンサルタントは、社員向けのセミナーやコンサルティングを行っていません。社員向けの情報提供もしていませんし、本も社員向けではなく経営者向けです。
したがって、技術的なノウハウ(方法、知識、テクニック等)を本に書くことはありません。そのような本を書いても無駄だからです。
なぜ無駄か?
我々のようなコンサルタントは、経営者相手のコンサルティングを生業としています。経営者の方からコンサルティングを依頼されてビジネスとしているのです。そうであれば、経営者向けの本を書くのは当たり前であって、社員向けに方法やテクニックや知識のようなノウハウを書いても意味がないのはお分かりでしょう。
本には「経営者以外は読まないでください」とか「社員お断り」とかは書けませんので、冒頭のようなミスマッチが起きます。これはセミナーでも同じです。
セミナーの場合は「経営者様限定」と表記しています。それでも勘違いして社員の方が参加されることがあります。その場合「このセミナーは内容が不満だ。役に立たなかった」と、お申し出があればセミナー代金を全額お返ししています。
ところが本は、そういうわけにはいきません。「本を買って読んでみたら、内容が不満だったからお金を返してください」と言われても、それはできません。そこでAmazonレビューに不満を書くということになります。
冒頭のコンサルタントの方には、自身の経験談をお話ししたことで「なるほどね!」ということで納得されました。
当社の本は、どのような方に読んでいただいても構いませんし歓迎しますが、経営者向けのビジネス書ということをご理解いただいたうえで読んでいただくと理解が深まると思います。ただし、社員と経営者では思考回路が異なりますので、社員の方が本当に理解するのは困難かもしれません。
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