差別化の方法
「南澤さん、差別化が重要であることはわかったのですが、一体どのような方法があるのでしょうか?」ーーーこれは、かつて創業者向けに行なったセミナーで、受講者である経営者から出た質問でした。
差別化と一口に言ってもさまざまな方法があります。最も基本的な差別化の方法は、製品・サービス自体を差別化する方法です。
例えば、工業製品であれば特許技術を活かした製品、飲食店であれば他店では味わえない独自のキラーメニューの提供です。製品・サービスは最もわかりやすい差別化であり、実現できれば大きなアドバンテージとなります。
しかしながら、製品・サービスの差別化は、他社がミート(お肉ではなく当てる方)、まねをしやすいという危険性を常にはらんでいます。知財戦略を活用できる業種・業界であれば、それらを戦略的に行う必要があります。
一方で、飲食店で提供する料理などは、対応が難しくなります。流行の波により、店舗が増減する特徴もあるため、常に改良を加えていったり、製品・サービス以外の差別化も常に考えたりする必要が出てきます。
よくある失敗は、ありふれた製品・サービスで独自性を出すことができずに価格競争に巻き込まれてしまうことです。そのため、独自性を出す差別化が重要となります。
基本的には、製品・サービスだけで他社との差別化ができる企業は非常に限られており、さまざまな方法の組み合わせにより差別化を実現することになります。新製品や新サービスを提供する場合には、大手がマネをしてくることを前提に進めなければなりません。
スターバックスコーヒーもコーヒー自体で差別化を行っているというよりも、サードプレイス(※自宅や学校、職場でもない居心地の良い第三の場所)というコンセプトを柱とし、コーヒーのカスタマイズやサイズ、バリスタ設置、全面禁煙、店内の内装、丁寧な接客などにより、さまざまな組み合わせの「差別化」を実現しています。
マーケティングの4Pはそのような差別化を実現するための一つの切り口として活用ができます。前述のProduct(製品・サービス)に加えて、Price(価格)、Promotion(プロモーション)、Place(流通・チャネル)です。他にもMarket(市場・顧客・顧客層)、Mission(理念)なども差別化の方法となり得ます。
価格による差別化は、単独では基本的に成り立たないものなので、難しいところですが、企業規模が小さければ高価格で勝負したいところです。高価格で提供するためには、顧客にとっての価値を感じてもらえる別の差別化が必要となります。
Promotionは、要するに「売り方」で差別化するということです。自動車の営業を26年間経験した私としてはこのあたりは最も得意とするところです。
Promotionといっても、ウェブ広告、チラシ配布、DM、ハガキ、TEL、メール、FAX、展示会、ウェブサイト、メルマガ、ブログ(コラム)、SNS(広告)…など、方法は実にさまざまです。
Place(流通・チャネル)は、どのような販売方式、販売網で売っていくかになります。また、重要な戦略として地域を絞った差別化が考えられます。
ターゲット顧客を絞り、重点地域を決定することで、差別化が可能となります。この方法による差別化は、資源が限られている中小企業にとっては非常に有効な手段となります。
このようにさまざまな差別化の方法があるのですが、重要なことは商品・サービスだけにとどまらず、あらゆる方法を組み合わせて差別化を行うことです。
その組み合わせを行うことで、他社が容易にマネをしにくい強い差別化を実現することができます。
プロモーションの差別化であれば、私自身は、他のセールスよりもハガキを有効に活用していました。セールス時代はもちろん、店長になってから15年もの間、全数欠かさずに全セールスが販売したお客様に対して、手書きでお礼状を書いていました。
これは言わば、凡事徹底による差別化です。これによって、顧客との関係性を強化することに成功していました。このように一口に差別化といっても、色々な方法が考えられます。
近年は、サブスクリプション方式(当コラム第28話参照)などによる差別化も行われており、それ以外にもさまざまな方法があります。
しかしながら、自動車業界で行われているリースや残価設定型ローンなど、販売形態・支払い方法による差別化ですが、今ではどこでも実施されていて差別化していると言えない状況です。
差別化は多面的に考える必要があります。ただ一つの方法に依存するのではなく、複合的な戦略を練ることが、持続可能な競争優位を築く鍵です。
このように、戦略的な差別化はビジネスの成功に不可欠です。多様な手法を組み合わせ、独自性を追求することで、市場での優位性を保つことができます。
ちなみに、店舗経営コンサルタントの私が提唱する先行受注による受注残の積み増しという「ストック型営業」の手法は、圧倒的に優位性を築くことができる「差別化の方法」です。
新規の顧客を確実にリピーター化するだけでなく、蓄積効果による二倍サイクル化で売上倍増を実現します。このような差別化で圧倒的に優位な立場を実現します。
特に、成熟市場のため製品・サービスの差別化が難しく、顧客の奪い合いとなる競争の激しい市場では、このような差別化が生き残りのカギを握っていると言えます。
当社が推進する「先行受注戦略」は、他社からは何をやっているかわかりにくいために、容易にマネされません。「ストック型営業」という差別化により、独自のノウハウを獲得することができます。
貴社では、他社が容易にマネできない差別化を意識して実現できていますか?そのような差別化を実現するための社内体制を構築していますか?
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