人材採用がマーケティングと相似形で語られるワケ
また新聞ネタで恐縮ですが、先日の日経新聞に掲載されていた「100年やって、この知名度」という企業広告のキャッチに目が留まりました。広告主はおそらくBtoBの企業様で、その業界で歴史と伝統がおありになるのでしょうが、一般的にはほとんど知られていない。事実8割以上が「社名を知らない」と答えたアンケート結果が円グラフで示されていて、自信をもって知名度の低さをアピールしておられます。
これは広告の自虐アプローチともいえるもので、あえて自分の欠点をさらけ出し、そのインパクトの強さを活かしつつ逆の印象を与えようという意図があります。
知名度の低い県が、存在感をアピールしようと掲出した例が過去にもありました。香川県が「うどん県に県名変更」とか「日本で47番目に有名な島根県」とか。自虐のつぶやきが周囲の笑いを誘って記憶に残る。よくできた広告だと感じたものです。
さて、「100年やって、この知名度」の件。けっこう共感をもって受け入れられたのではと推測しています。つまりは、その道ではすごく有名なのに、一般的には全く知られていない中小企業がすごくたくさんあるからです。
私の知っている企業さんでも「知る人ぞ知る」技術力を持っているのに、一般には知られていない、したがって人材採用の曲面になると非常に分が悪い、というケースが多くあります。
でもこれ、そもそも、なぜ、一般に広く知られていないことが、ネガティブにとらえられるのか、というところから考え直す必要があるように感じます。社歴100年あったら、みんなに知られている会社じゃないといけないのか、というと、全くそんなことはないからです。
マーケティング理論をかじったことのある方ならご存じの、STP+4Pというフレームワーク。STPはセグメント、ターゲット、ポジショニング。4Pはおなじみ、商品、価格、チャネル、プロモーションです。で、いま大切なのは、前半の方。
物を売ろうというときは、必ず、それを欲しがる人を見つけないといけません。思考も嗜好も多様化が進む現在、同じものをみーんなが欲しがるなんてありえない。だから、どういう人たちが「いいお客さん」になるかを考えないといけません。みーんなにアピールしようなどという無謀なことを考えるのは資源の無駄遣いです。
実は人材採用にも同じことが言えます。どんな会社にもぴったり合う人、というのは多分いません。もちろん新卒学生のなかには、100戦100勝みたいに内定をとりまくる方もおられますが、それだって内定をとりまくるスキルを身につけているから可能なわけであって、本当に100社にぴったり合った人材である可能性はかなり低い。
これは人材側にも同じことが言えます。自分はどんな仕事をしたくて、どんな人生を送りたくて、ゆえにこういう会社を選びたいという考察がないまま就職活動をすると、今はやりの「アンマッチングのワナ」にはまり込み、入社して数カ月で退職という名誉(?)の選択をすることになります。
物を売るときに、売り手と買い手のニーズとシーズのマッチングが必要とされるのと同じように、人材採用にも、採用する側とされる側のニーズとシーズのマッチングが必要です。ということは、誰にでも適した会社というのはあるわけもなく、興味のない人にとっては、「100年の社歴のある会社」であっても存在しないのも同然ということになります。
採用マーケティングとか採用マーケターとかいう言葉を目にすることが増えました。かつて人材採用市場では、人材の供給が企業側の需要を上回っていて、企業は質を問わなければ苦労せず人材採用できる時代がありました。
言うまでもなく、現在の状況は逆です。人材の供給が企業側の需要に比べて圧倒的に少ない。だから、物を売るときのマーケティング理論と同じような考え方を踏襲する必要があります。人材採用におけるSTP+4Pを検討する必要があるということです。
子供の頃、「はないちもんめ」をやったことのある方、私と同世代であれば相当数おられるのではないかと思います。
「勝ってうれしいはないちもんめ、負けて悔しいはないちもんめ」というあれです。続くのは「あの子が欲しい」「あの子じゃわからん」、「この子が欲しい」「この子じゃわからん」…
というわけで、丸くなって相談して、誰が欲しいか決めるわけですが、これまさに人材採用におけるターゲティングではないか!と密かに思っています(笑
さて貴社はどんな風にされているでしょうか
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