スタートアップと中小企業・経営者の違い
「私はカネ儲けではなく、この技術が世のために使われることにこそ興味があるんです。」とあるスタートアップビジネスのオーナーさんがいみじくも私に語ってくれたコトバです。そもそも研究者であるこの方は、財務諸表はおろか、銀行口座の開き方もよくわかっていないタイプの純粋型研究者です。発明した技術が多くの企業から期待されるものであったことに加えて、ニッチなその技術を実用化するには、引き受けてくれる企業を探すよりも、大学発ベンチャー支援の制度を利用して起業するのが手っ取り早かろうということで起業を決意するに至ったのでした。
むろん、おカネはいくらあっても邪魔になるものではない、というくらいの理解は持っているわけですが、「企業」そのものを大切にし、そこで人を育て、安定的なビジネスを通じてしっかりと社会貢献を果たす、といったマインドはやや希薄な段階です。
時が来ればやがて変わって行く部分なのだろうとは思いつつ、あるいはそのあたりがスタートアップビジネスのオーナーと中小企業の経営者の違いなのではないかと考えるに至ったのですが、実態のある企業に比べると、こちらはまだ技術開発先行で日常がついて来ていないスタートアップですから、そのくらいの違いはあって当然なのかもしれません。
でも事業計画で想定されている成長速度を見ると、多くの中小企業経営者が羨むほどの高い成長率が予定されています。新しい技術を社会ニーズに向けてしっかりフィットする形に仕上げた事が大きかったと思うのですが、高い成長率を実現するために、この考え方は中小企業の経営者にこそ学んでほしい部分だと思うのです。
「世のために使われることにこそ興味がある。」冒頭、まだ経営経験のごく浅いスタートアップオーナーが言っていたことの本質を、中小企業の経営者にもぜひ反芻していただきたいと思います。本当に社会のことを考えるとき、そのマインドセットが提供してくれるエネルギーの強さを、多くの中小企業にも共有してもらいたいと思うのです。
儲けへの興味は大切ですが、そちらが世の中への関心に勝っているようだと、やがては市場から見放され、事業自体も停滞へと落ち込んで行くことになります。
私に熱く語ってくれたスタートアップのオーナーがそうであったように、心の内から湧いて出る自らの気持ちと向き合って頂きたいと思います。その気持ちがもたらすエネルギーこそが、最終的には企業にとっても飛躍へのカギとなるのですから。
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