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役割と評価基準を明確にしても、管理者は機能しません。その明確な理由と対策

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

S社の建築資材の通販事業は順調です。そして、新規事業も受注出来るようになりました。
会社のスピードを更に上げるために、管理者に「比較的に出来る2名」を就けました。
 
 しかし、その管理者が機能しません。
そこで考えたのが人事評価制度です。
 
 どうすれば上にあがれるのか、何をすれば評価されるのかを明確にすれば、管理者も解ってくれるはずです。そして、今いる社員の中から人材が出てくることも期待できます。
 
 S社長はそこまで説明し言いました。
「いかがでしょうか?」
 
 私は答えました。
「ごもっともな考え方です。しかし、それで管理者が機能することは無いでしょう。」


組織論の答えは、『四層の階層型組織』です。
経営層、管理者層、判断層、作業層。
 
 どのような組織もこの四層が適切に機能することにより、組織としての力を発揮することができます。
 
 一見すると、五層、六層あるような会社もその内容を確認すると、やはり四層です。管理者層や作業層の中が上下の二層に分かれているだけで、大まかな役割(機能)は同じです。
 
 定期的に新しい組織論の書籍が出され世を騒がせます。学術的には面白いのですが、その多くは実際に使えるものではありません。全員が優秀であること、人は性善であることが前提のものや、社長や一部の超優秀な幹部に「属人化」している理論が殆どです。
実際にそれで上手くいく会社はありません。そして、それは数年で忘れ去られることになります。
 
 新しい組織理論に世が騒ぎ出しても、全く気にする必要はありません。
階層は「人」にとって必要なものであり、自然なものなのです。また、実際に四層という縦の分業の組織は、この世界で多くの偉業を成してきました。
研究され尽くし再現性も高く、そして、実績も数限りなくあるのです。
 
 組織は、経営層、管理者層、判断層、作業層の四つの階層です。
我々は、成長の過程でその四層を獲得する必要があります。


多くの会社は、二層でスタートします。
社長とその他大勢のスタッフという形です。
 
 飲食やエステの店舗型ビジネスを例に考えるとイメージしやすいかもしれません。
その店舗には、一人の経営層 兼 管理者層 兼 判断層の社長と作業層である数名のスタッフがいます。その規模であれば、この二層で十分回すことができます。
 
 事業を大きくする過程で判断層の必要性が高まってきます。
作業層を複数の班に分けることをします。または、店舗を増やしていきます。それぞれの班や店舗に判断層が必要となるのです。
この時には組織は三階層になっており、社長には経営層、管理者層の仕事が残ることになります。
 
 更に人や班、店を増やし事業を拡大していきます。
それに合わせ、部署という形で分業を進めます。営業部、製作部、管理部、店舗運営部。
そして、そこを管理者層に担ってもらいます。彼らが、各マネジメントと仕組みの改善を進めてくれます。いよいよ四層の完成です。
この時には、社長は経営に専念できる状態になります。
 
 こうして規模の拡大に合わせ、組織の階層をつくり機能させることが必要になります。


建築資材を扱うS社も例外でなく、組織に階層を必要としていました。
通販事業は昨対120%で推移しています。新規事業も予想以上に順調の立ち上がりです。
 
 S社長は多忙を極める状態になっていました。
この時のS社は、完全なる文鎮型組織でした。社長以下横並びのスタッフ達です。
これでは、これ以上の拡大もスピードある展開も無理になります。実際に、すべてが後手後手の状態に陥っていました。
 
 そこで、S社長は、今のスタッフの中から2名を「上げる」ことにしました。彼らは、他のスタッフに比べ、ミーティングの場などで意見を出してくれます。
 
 彼らをそのポジションに就任させ2カ月が経ちます。
社長の忙しさに変わりありません。日々の数字の管理をS社長がやっています、相変わらずスタッフはいちいち指示を仰ぎにきます。問題が起きると状況を把握し対処を指示し、その後に自ら仕組みの見直しを行います。
その一方でその二人の管理者は、今まで通りの作業をしています。彼らのその発言も態度も変わらないのです。
 
 そこでS社長は、人事評価制度の導入を考えました。
それぞれの階層に何が求められるのか、何ができれば上がれるのか、そして、何をすれば評価され給与が上がるのか、それを明確にしようと考えたのです。
そうすれば、管理者二人も解ってくれるはずです。そして、今いるスタッフもやる気を出し、上がってくる者が出るかもしれません。
 
 S社長は矢田に相談することにしました。
「いかがでしょうか?」
 
 私は答えました。
「ごもっともな考え方です。人事評価制度は組織の機能強化には良い策です。しかし、今の御社ではそれで管理者がどうこうなることは無いでしょう。」
 
 この時のS社には、まだ何もありませんでした。
事業モデルの改革は進み、成果は出てきています。
しかし、仕組みづくりにはまだ手を付けられていません。そこに管理者を就けたとしても、機能することは無いのです。
 
 管理者を機能させるには、やはりその土台となる仕組みが必要になります。
「各業務の基準が明確になっていること」、「管理者のルーチンワークが決まっていること」など。それらがあるから管理者は、管理者の仕事をすることができるのです。
その結果、管理者に育つことになります。
 
 「各業務の基準が明確でない(成文化していない)」、「管理者のルーチンワークが決まっていない」、その状態で管理者のポジションに就けても、その管理者は仕事をすることができません。管理する対象も無ければ、管理する基準も曖昧、そして、具体的にやることが解らないのです。何もやっていないわけですから、その管理者が育つことも無いのです。
 
 S社が、まずやるべきことは、管理者を載せる仕組みの獲得なのです。
そうすれば、少なくとも、彼らはやるべきことを理解することも、稚拙ながらやることができるのです。これでスタートが切れます。その後なら彼らを評価することができるのです。
 
 そして、次の管理者が上がっている可能性もあります。下の者にも管理者が何をする人でどんなことをすればよいのかが解るのです。
 
 まとめです。
 
 役割を明確にしても、人事制度を導入しても、その基盤となる仕組みがなければ管理者は機能しません。
まずは管理者を載せる仕組みを作るのです。
その結果、組織の四層が獲得でき、スピードある成長が可能になります。

 

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