社会ニーズを取り込む
新しい商品開発に取り組むとき、顕在化している顧客ニーズに焦点を当てて検討するのは常道ですが、その延長線上で「見えないニーズをどのように捉えるか」という論点も注目されています。まだスマホのなかった時代、スマホを提案できたアップルはすごい、というような事例を思い浮かべていただけると分かりやすいかもしれません。
一つのヒントとして、特に顧客が大企業であるときは、顧客となる企業だけでニーズを決められないという属性があることです。顧客の顧客は言うまでもなく、株主そして行政や金融機関など、いわゆるステークホルダーからの要求を商材にどう反映するか。たとえば脱炭素への対応要求が最終顧客層から強く上がっている、という要素は、特に日本ではあまり強くないのですが、にも拘らず株主や金融機関などから寄せられる脱炭素への期待についてきわめて積極的に対応しようとする動きが、すでに多方面で観察されています。
このようなニーズを「社会ニーズ」と呼ぶことにしましょう。商品開発上で難しいのは、社会ニーズと最終顧客のニーズはトレードオフではない、つまり脱炭素で頑張ったから価格的には高くても良い、あるいは品質面で多少妥協が成立する、というものではないと言う点です。
他方で、社会ニーズと顧客ニーズの両方を上手く満足することができたとすれば、それはマーケティング面に強みとして生かせる属性であることに間違いはありません。同じ品質、同じ価格で提供できた商材が、脱炭素について圧倒的な優位性を持つものであった、というような展開が想定できると思います。
では、社会ニーズを商品開発に生かすためにはどのような工夫が望ましいのでしょうか。最近よく言われるのが、新しい商材や技術を動員することでどのような課題がどう解決されるのか、という説明を前面に出すことに意義がある、という議論です。この考え方を「社会的インパクトの可視化」などと言ったりします。
それを具体的数値で表すことで、直接顧客にナルホド感を強く感じてもらえるようになるということです。具体的には「当社の新商材をお使いいただければ、CO2排出をこれまでより75%削減することができます。」と言った説明がこれに当たります。
ところで社会ニーズは何もCO2のみに限ったものではありません。バリアフリー化への対応やゴミ問題、生物多様性保全への取組や視聴覚にハンディのある方々への支援なども、社会ニーズとして捉えることができます。むしろそういった話題に触れないことが醸し出す「時代遅れ感」が懸念されるような時代へと、社会は素早いスピードで動いています。伝統的B to B企業だから、という認識で漫然と構えていると、いずれどこかで慌てる場面が訪れるリスクを、まずはしっかりとご認識いただきたいと思います。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。